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8/22

国家転覆

 翌朝、エスポワール王国に衝撃のニュースが届く。


「なに!?魔王と不可侵条約締結!?それに七つの大罪討伐だって!?」


「いや、めでたいな!これでようやく平和が訪れる」


「おいっ!バカそんなことよりも【英雄】小林海斗が二日後に処刑だってよ!」


「「「なに!?」」」


「暗愚の王もここまで落ちぶれたか...」


「この国も終わりだよ」


 民衆は口々に王への不平不満を言った。


「あのクソ王め、馬鹿みたいに税金吊り上げやがって」


「あいつ、俺の娘を強引に妃にしたかと思えば、ゴミを捨てるみたいに町に捨てやがった!」


「おい、こんな王国の唯一の光である【英雄】小林海斗が本当に処刑されるのか?」


「おい、俺に考えがあるみんな集まってくれ」


 全員が一人の農民の元に集まった。


〜宮廷内にて〜


 エスポワール王国の姫、カエサル・ソー・ルシアは小林海斗処刑を防ぐために、何度も国王に嘆願した。


「国王様!どうか考え直しを!」


「うるさい!貴様は娘のくせに生意気なんじゃ!」


 国王は激しい口調でルシアを非難する。


「お主はいっつもそうじゃ!ワシのやることなすことに口を挟もうとする」


「それは国策が間違っているからですわ!」


 宰相のオーがやせ襲った体を曲げながら告げた。


「国策はフェルミン侯爵と宰相であるオーが提案したものである。何か異論があるのかな?」


 姫が片手を振って、抗議する。


「何度も抗議した通り異論は大有りです!特に【英雄】小林海斗の処刑は人心を離れさせる一手になります」


 宰相がニヤリと黄色い歯をみせて笑う。


「小林海斗には国の安定を損なうほどの武力を持っていると言う。反乱の芽は早めに摘んでおいたほうが良かろう」


 ガッハッハッハ!


 国王と宰相は顔を見合わせて笑った。


 「ですが...!」


 後ろから男がルシアの肩を叩く。


「おっと、姫様はお疲れのようですね」


 そこには邪悪な顔をしてでっぷりと太った侯爵フェルミンがいた。


「国王様!いつになったら姫様を私の妻にさせてくれるのでしょうか?」


「お主の上納金がもっと上がったら考えてやろう!ワッハッハ!」


「それはそれは、また農民を搾り取らないといけませんね」


 フェルミン侯爵は悪政の領主として有名であった。民は死なぬよう生きぬようをモットーに民から税を搾り取る侯爵だった。


 ルシアは内心で毒づく。


(この国は腐っている...!)


 ルシアはフェルミン侯爵の手を払った。


〜小林海斗、処刑一日前〜


 小林海斗の処刑前日の朝、王城には夥しい数の人が押し寄せていた。一人の農民が中心となって行われた抗議活動は国の全土を巻き込み、今まさに王城を薙ぎ倒さんとするほどの国民が集まった。


 転移魔法陣からは政界の大物達が続々と現れる。


「あ、あれは【平穏伯】ヴァイル卿では?」


 片目にモノクルをつけた男性がステッキを持って現れる。その顔には深いシワが刻まれていた。


「おいおい、あれは【傲岸伯】ルージュ卿じゃないか」


 胸を張って歩く妙齢の美女が美しい赤のドレスを見に纏い現れる。


「【鬼神伯】ゴルゴン卿だぁ!」


 厳しい顔をした比較的若い男性が群衆を割ってスタスタと歩く。


「まさか【三伯】が揃う日が来るとは」


 国民が騒めく。


「冗談だろ!?あれは【獅子公】アルドライオじゃないか!?」


「これは今日この国の歴史が変わるな」


 四人は揃って王城の中に入っていった。


〜王城にて〜


「国王様ぁ!大変です!兵でも抑えきれないほどの【英雄】小林海斗処刑に対するデモが起こっています!」


 門兵のエリックが王の間に転がり込んでそう言った。


「お主らぁ、何をやっておるんじゃ!何のための兵じゃ!」


 国王が窓から目を血走らせて外を見ると、そこにはどこを見ても人の海があった。


「海斗を解放しろ!」


「小林海斗の処刑を許すな!」


「海斗!海斗!海斗!」


 国王は両手で窓を叩いた。


「ええい、うるさい、うるさい!【勇者】東堂春樹を呼べい!あやつの人望を持ってしてこの騒ぎを治めるのじゃ!」


「しかし、陛下。お言葉ながら【勇者】パーティーは小林海斗が抜けてから存在感を失っております!」


「知らぬわ!そんなこといいから連れて来い!」


 国王がエリックに喚き散らかしていると近衛兵の兵長がやってきた。


「国王様!これがこの国民意であります!」


 国王は首を大きく振ってドカッと座った。


「知らん、知らん。ワシは知らん。宰相とフェルミン侯爵を呼べ!」


 その瞬間近衛兵達が宰相オーとフェルミン侯爵を縛り上げて王の間に連れてきた。


「貴様ら、何をしておるじゃ!」


「見ての通りです。陛下。我々はこの日に合わせてクーデターを起こすことにしました」


 そこに拍手しながら【獅子公】アルドライオと呼ばれる金髪をオールバックにした壮年の公爵が入ってきた。


「なかなかやるじゃないか。この王城の兵士達も」


 アルドライオの後ろから【平穏伯】ヴァイル、【傲岸伯】ルージュ、【鬼神伯】ゴルゴンが現れた。


 フェルミン侯爵が唾をとばしながら叫ぶ。


「おい、貴様ら私を助けないか!」


 宰相オーが睨む。


「貴様ら、覚えておけよ!」


【獅子公】アルドライオが睨み返す。その眼光は獅子の如く鋭いもので、オーとフェルミンはひっ! と悲鳴を漏らした。


「君たち、国王派はもう詰んでいるんだよ。長きにわたる悪政に加えてこの国の【英雄】を処刑しようとする暴挙。君たちは終わりだよ」


 そういうと、国王はよろよろと立ち上がった。


「わ、ワシの代わりなど誰がするんじゃ?」


 アルドライオは両手を広げて、あるお方を呼ぶ。


「おいでなさってください!姫様、いえ新しいこの国の女王様!」


 扉が勢いよく開けられたその先にいたのはこの国の姫だったルシアがいた。


 ルシアはカツカツと王の間を歩く。【獅子公】【平穏伯】【傲岸伯】【鬼神伯】は跪いてこうべを垂れる。


「父上。これからは私がこの国の王を務めます」


「な、何を言っておるんじゃ、ルシア。お主はワシの娘であって味方であろう?」


 弱々しい声で国王はルシアに縋り付く。ルシアは凛とした声で国王に言い放った。


「親子の縁は今日断ち切らせて頂きます。カーバ殿」


「そんな、嫌じゃ!ワシが国王じゃ!」


 そこに【勇者】東堂春樹が割り込んできた。


「おい!ルシア!何をやっているんだ!」


 国王が光明を得たと言わんばかりの顔つきで春樹に命令する。


「よくきた!【勇者】東堂春樹よ!この場のものを全員殺せ!」


「な、流石にそれは...」


 国王が強い口調で命令する。


「いいからやれ!」


「うっ、うわぁぁぁ!」


 春樹が剣を抜いた。

 辺りに緊張感が走る。


 しかし、春樹が剣を振りかざそうとしたその時次元が割れて中から【剣神】ガーフィール、【鬼槍】エドモンド、【次元】ショータ、【水帝】ウェンズデイが現れて【勇者】東堂春樹に牙を向けた。


 春樹は力無く剣を地面に落とした。国王が頼みの綱を失い膝から崩れ落ちる。


「わ、ワシが国王じゃ...」


 近衛兵が手際よく国王を縛り上げる。【獅子公】アルドライオが女王に上申する。


「この者たちの処罰はどうなさいますか」


「【勇者】以外は僻地に幽閉します。まずは何より【英雄】小林海斗の解放を」


 海斗は謝り倒す近衛兵達を宥めながら王の間に入った。王の間には泣き崩れている侯爵と宰相に魂の抜けた国王が縛られていた。


 海斗は【獅子公】の顔を見て、慌てて片膝をついた。


「アルドライオ卿。ご無沙汰しております」


「海斗、そんな他人行儀なまねやめてくれよ」


 そう言ってアルドライオは海斗を無理矢理立たせた。


「君が作った新しいポーションのお陰でうちの領の死亡率は格段に下がったんだから」


「僕はただポーションを流通させただけです」


「相変わらず謙虚だね。でもちょっとだけ変わったかな?瞳に使命の光を帯びているようにも見える」


「さすがは【獅子公】。隠し事ができませんね」


 海斗が苦笑いすると、後ろから【傲岸伯】ルージュが海斗を抱きしめる。


「あら、海斗。随分久しぶりね。いつになったら私の婿になる気になるのかしら」


 耳元で囁かれた海斗は身体を震わして答える。


「ルージュ様、人目がありますので...」


 新しい女王はじっとルージュを親の仇を見るような目で睨む。【水帝】ウェンズデイは穴が開きそうなほど海斗を見つめている。海斗は冷や汗をたらりとかいた。


「ほっほっほっ、海斗殿は案外女に刺されて死ぬかもしれませんな」


 【平穏伯】ヴァイルが物騒なことを笑いながら言う。【鬼神伯】ゴルゴンは海斗の肩を叩いた。


「海斗!また武闘大会に参加しろよ!」


「ええ、機会があれば是非」


「機会があればじゃなくて、絶対参加するんだぞ!」


 海斗は苦笑して誤魔化した。女王が咳払いをする。辺りは静まり返った。


「これから戴冠式を執り行います。小林海斗の処刑取り消しも発表するので海斗はついてきてください」

読んでくださりありがとうございます。


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