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2.YELLOW




「イチカが死んだ……?」


 マネージャーから告げられたことに、四人は言葉を失った。

 緑川イチカは、家の庭の木に縄をかけて首を吊っていたらしい。収録の現場になかなか来ないために家を訪れたマネージャーがそれを発見したのだという。


「自殺、なの?」


 浅黄ヒナノがちらりと桃瀬リオを見た。


「なに、ヒナノ。私が殺したとでも言いたいの?」

「ち、違うわ。そんなこと……」


 ぶんぶんと大げさなまでに首を振る彼女に、


「……他殺の可能性が大きいみたいね」


 マネージャーが告げた。


「警察の話によるとね、縄の跡が首を一周していたそうなの。それって、誰かに絞殺されてから、自殺に見せかけるために吊るされたんじゃないかってこと。でも、リオじゃない。リオだけじゃなくて、ここにいる誰にもそんなことはできないわ。だって、地上から三メートルも離れた位置に吊るされていたって言うんだもの。女性の力じゃ無理よ」


 緑川イチカを殺したのがグループのメンバーではないという安堵と、緑川イチカが殺されたという事実に彼女たちの心は大いに波立った。




「新曲の収録、イチカのパートをすべて録り終えていてよかったわね」

「そうね」


 収録後、青海ナナと浅黄ヒナノが控室で話していた。桃瀬リオは、収録が終わるとすぐにスタジオを出て行ってしまったし、赤羽ユイは入院中の祖母を見舞うのだと言って帰ったあとだった。


「でも、この曲、本当に発表できるのかな」

「イチカのこと、事務所は隠すつもりのようだけど」

「隠すって言ったって、いつまでも持たないでしょ。すぐにバレるわよ」

「誰が、イチカのことを……」

「もしかしたら、ファンの誰かかな。イチカのファンって、比較的過激な人が多かったようだから」

「……内部の人かも……」

「内部って、事務所の誰かってこと? でも、私たちは言ってみれば事務所の商売道具じゃない。そんなことしてなんの得があるの?」


 浅黄ヒナノのつぶやきに、青海ナナは笑って答えた。


「……ねえ、ナナもセンターを狙っているの?」

「え?」

「私は、こんな状況で浅ましいとは思うけど、狙っている。私もね、イチカと同じ……借金があるの」

「え、借金?」

「私、誰にも言ってないけどね、実は付き合っている人がいてね。それで、その……騙されたの。それで、いつの間にか借金を背負わされていて……。私も、お金が必要なの」

「……グループのメンバーには動機があるってこと? でも、やっぱり私たちには無理よ。マネージャーも言っていたじゃない」


 うなずきつつも何か言いたげな浅黄ヒナノ。彼女が再び口を開きかけた時だった。控室の扉が開かれてマネージャーが顔を出した。


「今後の活動について少し話したかったんだけど……リオちゃんとユイちゃんは帰っちゃった?」


 青海ナナと浅黄ヒナノは、ほぼ同時にうなずく。


「そっか。それじゃ、また今度、みんながそろってから話すね。それから、ナナちゃんとヒナノちゃんも早く帰った方がいいわね。イチカちゃんのこともあるし。今後は、陽が高い時間帯の活動にだけ絞るようにするからね」


 そう言うマネージャーに急き立てられるようにして、青海ナナと浅黄ヒナノはスタジオを出されてしまった。そして、仕方なく、二人はそれぞれに帰路に着いた。




 夕焼けが迫る時間帯。まだ辺りは明るくて、通りにはちらほらと人が歩き、車や自転車も行きかっている。

 そんな中、浅黄ヒナノは誰かに呼び止められて振り返った。

 電柱の陰から現れたのは、目深に帽子を被った細身で長身の人物。

 浅黄ヒナノは、額に汗を滲ませながら、ぎこちない笑顔でその人物に手を振って答えた。




 翌日、浅黄ヒナノが失踪した。それから十日後に近隣の山の中で発見された。

 浅黄ヒナノは、緑川イチカと同じような姿で亡くなっていた。




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