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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
22 蓮花を縛るもの
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蓮花を縛るもの 1

 菜乃花が静かに寝息を立てているのを見ると、琥珀も安心からか安堵した様子だった。しかし、白希が近くにいる限り、彼の心が完全に落ち着くなんてことはないだろう。そうして、彼女の暴走を落ちつけることが出来た。


「シラキ、何かヤバいのがいるわ」


 彼の頭の上で寝転がっていたファスが白希に耳打ちした。彼女が感じている感覚が彼にもわかる。人ではありそうだが、そこらにいる人ではないとわかるのは珍しい。正確に何かと断定できなくとも、普通ではないとわかること自体がおかしいのだ。ファスの探知は生物かそうでないかがわかる程度で、プロイアの感知能力だと形くらいはわかるだろう。その証拠にプロイアの方へと視線を向けると、彼女は彼の方へと寄っていく。


「シラキさん。人型ですが、人ではないかもしれません」


 菜乃花を鎮めることに成功したが、その分消耗しているのは間違いない。彼は琥珀とも戦闘している。彼の魂の爆発にも巻き込まれているのだから、かなり体力を消耗していると言っていいだろう。


(次から次へと。問題だらけだ)


 そして、次にファスとプロイアが感知したそれが彼の前に姿を現した。その人物は赤紙で釣り目の男性だった。体は細く、目には光がない。その状態でにやけた面をして彼の方を見ている。


「呼んでも来ないから何をしているのかと思えば、こういうことでしたか。ですが、仕方ないと私は言いませんよ?」


 男の視線は明らかに蓮花の方へと向いていた。白希はすぐに直感した。こういう手合いには異世界で何度も遭っている。人の弱みを握り、裏から人を操り、一番いいところだけを享受する最低な手法を使う奴らだ。蓮花を姉妹から遠ざけたのはこの男なのだろう。


「申し訳ありません。でも、姉さんが心配で……」


「ええ、それはわかりますが、私は言ったはずですよ。貴方を読んだらすぐ来るように、と。そうしなければどうなるか、わかっているはずですよね」


 男は説教するような言い方をしているが、その間も顔はにやけていて、白希は嫌悪感を抱いていた。。だが、彼はすぐには動かない。いや、正確には動けないというのが正しいだろうか。相手に超能力があることは登場の前から理解している。つまりは、相手の超能力が強力なものだった場合、この場で感情に任せて手を出してしまえば、そのせいで蓮花や菜乃花が何かされる可能性があり。さらに竜花と猩花にもすぐに手に掛ける用意があるかもしれない。だが、わざわざ蓮花を脅してまで、人が必要だったことを考えると、仲間がいる可能性は低そうだ。見た目からは彼がそこまで頭の回る人物には見えない。手助けが欲しいなら、脅迫より報酬の方が協力的になるという物だ。そこに考えがいかない時点で、そこら辺はあまり警戒する必要はないかもしれない。とにかく、相手の超能力がわからないことにはどうにも動けない。と思っていたのだが、男はあっさりと白状した。


「私は貴女の大切な人たちを傷つけられるんですよ? 貴女の記憶を読んだのだから当然、それは確かに大切な人たちなんでしょう? さぁ、今回は一人だけ犠牲にしましょうかね。せっかくですから貴女に選ばせてあげましょう」


 男はにやにやとしていたが、その顔はすぐに苦痛に歪む。彼の腹に石がぶつかっていた。それは魔法だった。相手の超能力を知った瞬間に発動した魔法の名前を言う必要がないくらいに初歩の魔法。だが、彼がファスと協力して放ったそれは初歩の魔法の威力ではなくなる。さらに、この世界には魔法がない。超能力で使用できる人はいるかもしれないが、男は使えるわけではない。異世界で初歩のその魔法を使っても誰にも効かない。威力が低いのだから他の魔法で相殺されるのが目に見えていた。だが、この世界で使えば、それはかなりの速度を持った攻撃となる。


「……っ。わ、私に攻撃……したのですか。……殺しましょう、貴女の大切なものを」


 男は攻撃が見えていなかったせいで、テレポートを使った蓮花の攻撃だと勘違いしているようだった。だが、蓮花は自分が攻撃していないことをもちろん、理解している。つまりは、それが白希の攻撃だということだ。


「今の攻撃も見切れないようでは、他の姉妹をどうこうすることは出来ません。全く、私は何を恐れていたのでしょうね」


 蓮花は堂々としていた。その態度は確実に男の注意を彼女が引きつけていた。白希から見れば、男は隙だらけだ。男は男で、蓮花以外から攻撃されたという考えもないらしい。自分と敵対する理由があるのが、彼女だけだと思っているのだろうか。


(こんなやつに、朝野蓮花が踊らされたって、くだらなかったな)


 彼は再び、先ほどの魔法と同じ魔法を使用して男の横っ腹にぶつけた。

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