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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
20 抑えられない衝動
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抑えられない衝動 5

「火よ。ファイアバレット!」


 彼は妖精たちの魔法は効果が高すぎると思ったが、自らの魔法は未だに土の壁しか使っていない。それ以外の魔法は効果がある可能性があると考えたのだ。彼自身には大した魔法を使うことは出来ない。せいぜい、習えば誰でも使用できる最初歩の魔法くらいが精いっぱいだ。妖精の力を借りなければ、その程度のことしかできないのだ。


 彼の作り出した掌程度の大きさの火球が菜乃花に向かって飛んでいく。それも近くにいる彼女はその攻撃を回避出来ない。彼女の胴体にもろに攻撃がヒットして、彼女は後ろに仰け反る。空中でその姿勢を維持できなかったのか、彼女は地面に落ちた。背中から落ちないように、くるりと回転して地面にしゃがむようにして地面へ。彼女はその状態から地面を蹴って、彼に飛び掛かる。その移動の仮定で彼女が人型ではなくなっていく。黒い毛を持つ四足歩行の獣に変化した。マントはまだつけていて、それが彼女の動きに合わせてはためいている。


 四足の獣に、何の対策も道具もなく勝てる道理はない。彼はまさかそんな変身をするとは思わず、彼女の飛びつきを防御もなしで受けてしまう。だが、彼は焦ることなく、すぐにテレポートを使用して、五メートルほど上に移動して、そこからファイアバレットを打ち込んだ。最弱の魔法ではあるが、それを使い続けると彼の体の魔気が消費されて、それが無くなる前に気絶することはわかっている。そして、この世界には魔法の源になる魔気の量が異世界に比べてかなり少ない。つまりは、最弱の魔法でも彼は連発できないということである。上から打ち込んだ火球を彼女は簡単に避けた。その場所から少しだけ動いて、その先から彼の位置を確認した。彼女はその状態で地面を蹴り、空にいる彼女に牙を向け飛んだ。彼女の跳躍力は脅威的なもので、一回のジャンプだけで、彼に届く。だが、さすがにそれに驚くことはなく、彼は再びテレポートして、更に上へ。それを地面に落ちながら、視認していた。そして、地面に落ちる前に彼女の体が何かに分裂してそこから消滅した。彼は冷静に未来を手繰りよせるための未来視を使用した。彼が一瞬で見た未来は視界が黒い蠢くものに埋め着くされた視界のみだった。何が起きているのかわからないが、彼はその場にいることに危機感を感じて、テレポートでその位置からかなり離れた位置に移動する。そして、彼がテレポートする前の場所に黒く翼のある何かが集まっていく。その一部を彼の目は確実にとらえた。それはコウモリだった。彼を捕らえていないことに気が付くと、コウモリの群衆は一つになり彼女の体を形成した。菜乃花は多少息が上がっているようで、変身能力を連続で使用すれば体力は消費されるのだろう。超能力を使うなら体力切れを待つというのも一つの手だということが彼の頭に浮かんだ。だが、また変身能力を連続で使うとは限らない。それに狼だろうがコウモリだろうが、動物相手に人間が戦い続けることは難しいだろう。動物相手でも強力な魔法を使えるなら戦い続けられるかもしれないが、相手は菜乃花だ。大怪我をさせるわけにはいかないのだ。


「シラキさん……」


 彼女は地面にいる白希を見下ろしながら、自らの腕の肉に歯を突き立てた。そこから彼女自身の血が流れているのだが、その血は腕に纏わりつくように流れていき、地面に落ちることはない。顔女の腕に這った血液を彼女は腕を振るって、血液を周りに飛ばす。その血液は彼女の周りで水滴になり、停止していた。どうやら自身の血を操ることもできるらしい。改めて、ヴァンパイアの力の幅広さを感じていた。そして、それ以外にも能力があっても不思議ではない。その強力さゆえに、伝承では弱点が沢山あったのだろう。


(弱点か。戦うことに集中しすぎてたか)


 彼は菜乃花が太陽の下で活動していることで、他の吸血鬼の弱点に関して考えていなかった。流水やニンニク、銀製の物。すぐには出来ないが、許可のない家に入ることや大量の同じものを数える欲求には勝てないというものもある。向日葵が近くにあれば、それを渡せばそこにある種を数え出すため無力化できるが、向日葵は近くにはない。と言うか、まだそう言う季節ではない。


(まずは流水、と言うか雨だ)


「ミスト、ドロップフォールス」


 彼がその魔法を唱えると、ここら一帯が暗くなる。空を見れば、雨雲がそこに出現していた。そして、その場にいきなり雨が降り出した。それも時雨などではなく、ゲリラ豪雨のような大量の雨だ。菜乃花は体に雨が当たり、彼女は空を見た。雨が降り始めたせいか、彼女は自身の血を自身の体の中に戻して、その傷を治癒した。だが、その間に彼女は高度を落としていた。そして、地面に足を付いて、そのまま膝を付く。さらに手を地面に付けて、四つん這いになり、肩から崩れ落ちた。肌を伝う大量の雨が彼女から力を奪っていく。

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