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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
18 長女の役目
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長女の役目 5

「そう言えば、お主の名を聞いておらなんだな。親切をしてくれるのに、人間なんて無粋な呼び方はしたくない。名前を教えてくれぬか?」


「あ、私は菜乃花、朝野菜乃花と言います」


「菜乃花。菜乃花。そうか、わかった。菜乃花と呼ばせてもらおう。そうだな。どうせならわしのことも覚えてもらおうか。とは言ったものの、わしには名前がないのだ。数が少ないせいで、誰もが九尾と呼ばれていたが、どうせなら、お主と同じようにわしだけの名前が欲しいの。こっくりと呼ばれて、呼び出されたが、それはわしのような狐のこのだけではないしの。どうだ、お主が名前を付けてくれぬか?」


 菜乃花は表情を隠していたが、背筋が凍るような思いだった。ただでさえ、この状況をどうにかしたいのに、もしここで名前を付けてしまえば、おそらく縁が出来てしまうだろう。現代人なら、そういったことを心配する必要はないが、九尾などの服留からあるオカルトである妖怪となれば話は別になる。名前を教えあうということは、かなり強い縁を結ぶことを意味する。さらに名付けとなれば、更に話は重くなるだろう。それだけ意味の強い行動なのだ。九尾の狐もそれを理解していないはずがないし、実際にそれを理解してそう発言している。だが、狐出なくとも優しく親切な人との縁を大切にしたいと思うのは普通のことだ。普通ではなかったのは、その狐の偉大さと、彼女は特殊な人間であるということだろう。


 一般人にはもちろん、ただ超能力者と言うだけで狐が見えるというわけではない。偶然、そう言った異質なものを確認することが出来て、初めてオカルトに登場するような異常な者たちを見ることが出来るようになるのだ。菜乃花の超能力はヴァンパイアになることだ。ヴァンパイアはオカルトに登場する異常な者、そのもの、彼女は自らの超能力のせいで、狐を観測するに至ってしまったのだ。そして、朝野姉妹は全員がその狐を観測できるはずだ。菜乃花のヴァンパイア状態を認識しているのだから、彼女たちもその条件を満たしている。そして、白希も同じだ。朝野姉妹と会う前から、この世界でも妖精を見ているのだ。


「では、琥珀と言うのはどうでしょうか。品のある名前だと思うのですが」


「ほう、宝石の名か。われはそこまでの狐ではないのだが、その名、頂戴しよう。われは今世こんせでは、琥珀と名乗るとしよう。では、宜しくな、菜乃花」


 狐の、琥珀の嬉しそうな声を聞くと、それに胸を撫でおろす。ここでも気に入らないと言われれば、永遠と名前を考えさせられるか、そのまま殺されるかのどちらかだっただろう。動物が妖怪化した者はそれだけで、人間にとっては厄介だ。動物と人間では生きる法則が違いすぎるのだ。人間は弱肉強食ではないし、問題の解決方法は力押しと言うわけではない。気に入らなければ、弱者をぶっ飛ばして言うことを聞かせるなんてことは出来ない。だが、それを琥珀に教え込むというのは難しい話だろう。いきなり生きてきた文化を変えてくださいなんて、言われてもすぐにできるはずもないし、九尾なんて妖怪の中でも力のある種族だ。力があるということは、人間でいえば、絶大な権力を持っていることに他ならない。人間の世界でも権力を持つ者には下手に出て機嫌を伺うものだろう。彼女がしているのはそう言うことだ。さらにおそらく九尾ともなれば、町どころか国を傾かせることも造作ないことだろう。ただただ権力を持つ人間と言うのなら、対処のしようもあるだろうが、そう言うものもすぐにできることでもない。


 その後、彼女は商店街で食材を買いそろえて、自宅へと帰った。朝野姉妹の自宅は商店街の近くにある。二階建ての青い外壁の家だ。彼女は鍵を開けて、中に入る。家の中には誰もいない。当然そうなるだろう。竜花と猩花はおそらくあの部室で今江が護衛をしながら、過ごすことになる。蓮花は未だに戻ってこない。玄関にも靴は一足もない。彼女はただいまと言うこともなく、家の中に入る。リビングの方に移動して、冷蔵庫に食材を入れる。二人分しか作らないのに、必要以上に材料を買ってしまった。だが、すぐに腐るというわけでもないので、彼女は特に気にしていない。


「琥珀さん、申し訳ないのですが、少しの間そちらの大きな椅子に移っていただいてもいいですか。料理するときに汚れがついてしまいますから」


「わかった、そっちの椅子でいいのか。こういう大きな椅子は家主が座る物だと思ったが」


「いえ、そう言うルールはうちにはありません。その大きな椅子が気に入らなければ、他の場所にいてくださっても構いませんよ」


 ここまで、会話してきて理解したのは、琥珀は人間の文化に触れているようで、菜乃花の言うことを聞いたり、一つ一つ許可を貰ったり、質問してから行動しているということだ。それで絆されるわけではないが、話に聞いていた九尾の印象とは違う物だった。

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