表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
18 長女の役目
81/200

長女の役目 4

 菜乃花の目の前にいるこげ茶色の体毛を持つ多数の尻尾を持つ狐。彼女はそれを前にして動けなくなっていた。


「そこの人間。何か食物を持ってはいないだろうか。われは多少、腹が減った」


 言語を扱うということはもはや、そこらの動物では説明がつかない。彼女の想像している者である可能性が高くなっていく。この者を怒らせてはいけない。それだけを考えて、彼女は鞄を漁る。食べ物と言えば、お菓子がいくつか残っていたはずだ。猩花や竜花、蓮花のために持ち歩いているものだ。彼女はスナック菓子を取り出す。数人で食べるような袋ではなく、一人で食べるようなサイズの小さく梱包して、それがいくつか連なって売っているものだ。姉妹が追いため、それの方が平等に渡すことが出来ると昔から買っているものだった。彼女はそこから一つ取り出し、袋を開けて、狐の前に出した。狐は袋の中身を確認して、臭いを嗅いだ。狐は人間のスナック菓子を知るわけもなく、肉でも野菜でも魚でもないものは知らないものだ。それも人間が料理したものは食べたことはない。狐は菜乃花の顔を見る。


「人間、これはどういった食べ物なのだ? われは人間の食べ物は知らなくてな。人間にとっては害でなくとも、われにとっては害になるかもしれぬ。よもや、会ったばかりのわれを毒殺しようとは思ってはおるまい? そもそも、われの怖さを知っているようだしな」


「こ、これは、お菓子です。今はこういった者しか持ち合わせがありません」


「ふむ。そうか。では、まずは少し頂こう」


 狐はそう言って、袋の中に鼻先を突っ込んで、中のものを食べていた。狐の口からぱりぱりと音がしていた。彼女はその間、そこから逃げるわけにもいかない。もし、この食べ物が気に食わないと言われてしまい、狐の機嫌を悪くしようものなら、呪いをかけられたり、最悪この場で消滅させられる可能性すらある。


「人間。今の人間はこれを主食にしているのか? 栄養はほとんどないようだが。それとあまりに塩辛い。水を持っていれば、差しだしてもらいたい」


 彼女は鞄から、飲みかけではあるものの、彼女が買った水を取り出した。それをボトルのキャップの中に水を入れて、狐の前に出す。


「これを主食にしているわけではありませんよ。ただのお菓子です。人間の主食は肉や野菜、魚や穀物です。それは昔から変わっていないと思いますよ」


 狐は目の前に出された水を器用に舌で取り、中の水を口の中に運んでいる。空いたキャップの中にさらに水を入れると、狐はコクリと頷いて同じ方法で水を飲んでいた。


「……そうか。そう言ったものはどこで食すことが出来るのだ?」


「……私で良ければ、お作りしましょうか? 夕食を一緒に取りませんか」


 彼女は狐の機嫌を取らないといけないとそればかりが頭の中にあり、狐が食べたいというのだから、食べさせないといけないとと言う脅迫観念にとらわれていた。だから、そう言った提案をした。今日はどうせ、他の姉妹のために料理を作ることはない。狐の分を作ってもいつもの量より少なくなるだろう。


「そこまで世話になるのは、さすがのわれも図々しいと思うのだが、いいのか」


「はい。大丈夫です。一人分増えたとしても、手間は変わりませんから」


 狐は菜乃花のいうことにさらに気分を良くした。現世に降りてきて、最初に会った人間がここまで親切だったことはあまりない。大抵、怖がって逃げるか、化け物として敵対するかの二択だった。狐は尻尾を揺らしながら、菜乃花の肩に着地する。菜乃花はいきなり近づかれてかなりビビっていた。体に力が入り、緊張する。だが、狐の重さは感じない。温かさは感じるのに、重さは感じないという不可思議さを感じていた。


「すまないな。重くはないだろうが、邪魔かもしれぬな。どれ、少し待て」


 狐は肩の上で器用に身を低くして、尻尾を一本の尻尾のようにくっつけた。そして、手足を体毛の中に隠す世にすると、管狐のような体型になった。そして、その体で彼女の首の近くに移動して、彼女の肩のに引っかかるように彼女の背中側に尻尾を垂らして、頭を彼女の正面の方に垂らしてくっついた。まるでそう言うアクセサリーのような様子だが、その状態だと頭だけが不自然に上がっている。


「これで邪魔にならぬだろう。それにお主以外には、姿は見えぬから、大丈夫だろう」


 狐は明るい声で、菜乃花にそう話す。動物に懐かれているだけのように感じてしまうが、そんな軽い扱いをしていい相手ではないと、肝に銘じる。何度も何度も、機嫌を損ねないようにすると心に言い聞かせて、頭にも覚えさせる。そして、狐がその路地から移動するのを許可したかのように大きな通りが、通りの方から近づいてくる。最後は五歩ほどで通りに戻れるような距離に戻っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ