ひきこさん 4
白希の周りには指先程度の小さな白く光る火球が出現していた。相手はそれを見ても怯むこともそれについて考えることもせずに、ただ突っ込んできた。彼が手を前にに出すと同時に、その火球からいくつもの小さく細かなレーザーが打ち出された。男は回避するように体を動かしていたが、人の体でその弾幕を回避することは出来るはずもなく、ボロボロの服が更にボロボロになっていく。肌が露出してしまっているところには、光線が当たり焼け焦げていた。かなりの痛みを伴っているはずなのに、男は足を緩めることなく進んでくる。すぐに彼の眼前に迫り、思い切り腕を振るう。だが、その攻撃は空を切る。そもそも、彼自身に認識されてしまっている攻撃が当たるはずがないのだ。テレポートを使えるのだから、不意打ち的な攻撃でなければ、攻撃を当てられない。男はそれもわからないのか、ひたすらに前に出て、彼を殴りつけようとしたり、蹴りを入れようとしたりしていた。
「逃げんなっ」
彼が思わずそう叫んでいたが、白希がそれを真に受けるはずもなく、回避しながら攻撃を続ける。弾幕は尽きることなく男の身を焼き続けた。
「ミスト、ランプオブウォーターッ」
弾幕が相手を襲い続けて、相手の動きも多少鈍ってたところで、白希の前に不定形の水の塊が出現した。それはただ真っ直ぐに相手に向かって飛んでいく。そして、相手もそれを回避するなんてことはせず、水の塊をその身のままで受けた。その瞬間に相手は思い切り後ろに飛ばされた。相手はもろに水の塊を正面から受けたのだ。光線の弾幕を受けるより体にダメージは入るだろう。
「痛ったっ!」
しかし、彼の口から出たのはそれだけで、相手はダメージなど受けていないかのように立ち上がる。不死身と言うわけではないだろうが、かなり頑丈なようだ。超能力を持っているとすれば、体の硬化とかだろうか。しかし、そう推測するなら、もっと戦いやすい方法がありそうだが、それを使わないのは超能力の推測が間違っているからなのか、相手が馬鹿だからなのかはわからない。喋り方からして後者であるような気がするが、そうでない可能性を捨てることは出来ない。
「やったな。今度はこっちの番だっぜ」
男は言葉が言い終わる前に行動を始めていて、跳躍して彼に迫る。だが、先ほどよりも明らかに速い速度で彼に迫る。白希が目の前に男がいることを認識した時には既に相手の拳が前に出ていた。だが、相手が近づいてきたのがわかれば、回避するのも難しくはないだろう。再びテレポートで相手との距離を空けた。
(長く戦わない方が良いタイプの超能力と言うこと?)
明らかに先ほどより、素早くなっている。使い続けると超能力が強化され続けるという効果の超能力もないとは言えない。超能力にはルールのようなものはほとんどない。あるとすれば、どんな超能力も完璧にはならないということだろうか。完璧に見えるとすれば、それは使い手がそう見せているからであり、全ての超能力には弱点があるはずだ。
(だから、攻撃が効いていないということはないはず。どんな攻撃も受け流すなら、攻撃的な効果は全くなくなる)
ここは異世界ではないが、超能力は度の世界でもそういうもののはずだ。どんな生物も完璧ではないのだ。その生物が持つ超能力が完璧であるはずがない。完璧な庁能力と言うのはもはや、超能力とは呼べないだろう。
とにかく、彼は攻撃を続けるしかない。
「フレイズ、ミスト。クリープフリーズ」
彼の呪文が終わると同時に、彼を中心として、地面に霜がつく。辺りの温度が急激に下がっていく。その凍えるような空気が周りに広がっていく。廃墟の床を、壁を、天井を霜が多い尽くしていく。そして、その空気に真っ向から飛んでくる相手の体も凍りついていく。当然、凍った体はうまく動かせせるはずもない。鈍った相手の動きを見切るのは造作もないことだ。
「温めてあげるよ。フレイズ、ミスト。ドライミスト」
今度は超高温の空気の塊が相手の元から噴出する。相手の体表面を覆っていた霜が一気に水蒸気に変化して、更に相手の体と相手の体の周りの空気の温度を急上昇させる。相手の体の水分も蒸発して、徐々に温度が上がり、相手の体が更に乾いていく。
「あ゛あ゛、のど、が……」
相手の体が善宝水分が抜けるのだ。それがどれだけの渇きを感じるのか、白希自身も知ることもない。
「なら、最後に氷獄の中に連れていくとしよう」
今の言葉は竜花のようだなと思ったが、それを撤回しようとは思わない。彼女を傷つけたことも後悔しながら死んでもらおうと決意する。
「フレイズ、ミスト。コキュートス」
彼がその魔法名を言葉にすると同時に、廃墟の全てが氷漬けになった。相手は体の芯まで氷になる。彼のいる場所以外は、氷漬けになり、氷が砕けると同時に、中にある者も砕け散るだろう。




