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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
16 竜花の友達
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竜花の友達 2

 遅々として進まない掃除を一人続ける竜花。寂しさのせいで、いつもの元気も出てこない。そのことには誰も気が付かない。彼女は朝野姉妹でも唯一の残念美少女なんて不名誉なあだ名がついているくらいだ。彼女はいくら見た目が美少女であっても、彼女に近づこうとする人は少ない。


 彼女が一人掃除を続けていると、廊下が騒がしくなった。彼女も廊下から騒がしい声が聞こえてきたため、廊下の方へと視線を向けた。そこには生徒たちが壁際に並んで、まるで通路の真ん中を有名人が通るかのような雰囲気だ。そして、その廊下の中心を歩く人が、彼女に気が付いたように視線を送っていた。そして、その人は彼女のいる教室に入ってくる。


「竜花、掃除だったか」


「あ、ああ、うん。そうだよ。し、白希はどうしたの?」


「いや、竜花が遅いからな。見に来ただけだ。掃除くらいなら手伝うけど?」


「え、あ、じゃ、じゃあ、お願いしようかな」


 そう言うと、彼はパパっと掃除を始める。竜花よりも効率的に床を掃き、机を並べる。今の今まで全く掃除が進まなかったのが嘘のようなスピードだ。そして、彼は竜花以外は目に入っていないかのように掃除を進めた。教室内で遊んでいた男子を押しのけて、机を並べたのだ。見た目美少女の男子からぶつかられた男子は唖然としながら、教室の隅に追いやられていた。


「掃除は終わりだ。ほら、行こう」


 いつの間にか終わっていた掃除。彼は竜花の手から放棄を取り、掃除用具を入れるロッカーの中に入れた。彼女以外のものは本当に見えていないようで、他の人の掃除用具を元に戻してやろうとしなかった。


「あ、待って、白希。ゴミ、捨てないと」


 最後に教室のゴミ箱の中に入っているポリ袋ごと、ゴミを集める場所に戻さないといけないようだった。白希は一瞬だけ面倒臭そうな顔をしたが、何かを思いついたのか、彼は遊んでいた男子の前に依っていく。


「君ら、ゴミ捨ててきてよ」


「……は? なんで俺たちが」


「最後くらい仕事した方が良いよ。遊んでばかりじゃ、馬鹿になるからね」


 彼はその男子生徒三人を馬鹿にするような口調で話す。中学生がその挑発に乗るなと言うには難しい。男子生徒の一人が彼にいきなり殴りかかる。


「後悔しろよ! 女みたいな顔しやがって!」


 だが、白希にはその拳は届かない。それどころか、彼は相手の腕を掴み、その威力を利用して、くるりと体を浮かして地面に落とした。もちろん、相手に怪我をさせないように、彼自身で風の魔法を使いふわりと地面に降ろしたのだ。彼らは何が起こったのか理解できていない。


「あまり、人を見た目で判断しない方が良いよ。僕が手加減したってわかるでしょ?」


 男子生徒たちは反り嬢は何も言わずに、教室を出ていった。と思ったら、彼らはゴミ袋をまとめて、再び教室から出ていった。今度こそ、戻ってくることはなく、彼らは本当にごみを捨てに行ったようだった。


「今度こそ、行こう。竜花」


「う、うん」


 声を掛けられてようやく彼女は意識を現実に戻していた。声を掛けられる前には彼の鮮やかな技に見惚れていた。いや、あの技だけではない。やり口が彼女の理想とする主人公のようなふるまいだったのだ。憧れてしまうのも仕方ないだろう。だが、それはヒーローへの憧れとは少し違ったようだ。ドキドキはするものの、わくわくするような物ではなく、締め付けられるような泣きそうになるようなものだった。彼女はそれを理解できない。胸に視線を落として、何か違和感があると思ったが、そこには何もない。そのことを不思議には思ったが、彼女は気にしないことにしたのだった。


 白希は通常であれば、竜花をここまで呼びに来ようとは思っていなかった。だが、今は通常とは少し違うと彼は考えていた。彼女は今、怒鳴りあえるような人がいない。彼女にとって、自身の等身大でぶつかることが出来る相手は蓮花だけなのだ。菜乃花が相手をするには、年が上だし、猩花にはそんなものをぶつけられない。蓮花はそう言ったものをぶつけ合う仲で、その程度で嫌うなんてことはない。そう言ったものをぶつけあうというのは、思った以上に大切なことだと彼は考えていた。彼は既にそう言った感情を自分で処理することが出来るが、それは見た目と言うか、年齢以上に、人生経験があるからだ。彼女に同じことを求めることは出来ない。だから、彼女が不安定にならないようにしてやりたいと彼は考えていたのだ。だから、迎えに来たのだが、彼が思っていた以上に、彼女は孤立しているというのがわかってしまった。彼女はそれを知られたところでどうと言うこともないようだが、これは見ていて不快なものではある。だからと言って、すぐに解決できる物でもない。彼自身が力で解決することは容易いだろうが、それでは全く意味がない。根本の解決を望めば、必ず彼女の勇気が必要になるだろう。

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