竜花の友達 1
夕来が去った後の屋上に一人の人間がいつの間にかそこにいた。
「殺すばかりで、全く無意味な行動ばかり。君は問題児だった。死んで当然とは言わないがね」
黒い太ももほどまでの丈のコートを着た男は赤いドレスのそれを見下ろしていた。それに触ることもなく、タバコを一本加えて、火をつけた。
「ああ、ここは学校だったな。まぁ、これくらいは許してもらおうか」
彼は煙を吐きながら、一人でそんなことを呟く。その間も彼の視線は赤いドレスに向いたままだ。その瞳には悲しみなどは全くない。言葉と行動とは裏腹に、彼にはそれに対しての思い入れは感じられない。せいぜい知り合い程度と言う関係なのかもしれない。彼は三度ほどしか吸っていないタバコを赤いドレスに灰を擦り付けるように押し付けた。すると、赤いドレスの体が燃焼と言う過程を経ずに、体の端から灰色の染まって粉のようになり、空へと舞う。その全てがそこになくなったのを確認すると、彼もそれと同じように粉になって消滅した。その後に残ったのは、まるで何も起きていなかったかのような屋上だけだ。赤いドレスの出血もそこにはなく、屋上の鍵も完璧に閉まっているため、この日、屋上には誰も上がっていないように見えるだろう。
夕来は屋上を出た後、そのまま校舎を出ようとしていた。屋上から廊下に出る前に折り畳みナイフをポリ袋の中に入れる。まだ、赤いドレスの血がついているため、そのままポケットに入れることは出来ない。改造スタンガンもそのポリ袋の中にいれた。そこにも少量ではあるが、相手の血がついているのだ。それに電気を流して燃やしたせいで、微かに焦げ臭いというのもある。彼女はポリ袋に入れたそれをポケットの中にしまった。それから彼女は校舎を出るために玄関に向かい、家へと帰った。
自室で彼女はポリ袋を開けた。血の処理などをしなくてはいけないと思ったのだが、ポリ袋の中にあったのは折り畳みナイフと改造スタンガン。そして、何かが燃えたような灰が入っていた。ナイフと改造スタンガンにそれがついていて、血とは別の汚れたついてしまっていた。彼女はそれが何かを理解できなかった。血液が灰に変わるなんて現象は聞いたことがない。彼女の知る知識の中にはないが、相手は超能力者だったのだ。死んだ後に、超能力者の証拠が残らないような仕組みになっているのかもしれない。一般人は超能力を想像の中にしかないと思っているし、それがこの世界にあるというのは現実的ではないと考ええている。それが普通であり、常識だ。だが、もし、一般人に広く超能力者が知れ渡らないよなシステムが昔からあるというのなら、灰になり、どこかに飛んでいくというのは納得がいく話だ。そして、ネットの中では超能力者の証拠が出ているがそれも全て作り者だと言われている。もしかすると、その全てがフェイクではなく、いくつかは本物なのかもしれない。
彼女はナイフと改造スタンガンを取り出して、灰を払う。血をふき取るよりも処理がしやすくなったのは、よかったことだ。彼女はものに付着している灰を払って、灰だけになったポリ袋をゴミ箱に入れた。それから、ナイフを研いで、改造スタンガンを点検して、金属製の針の部分を取り換えた。それ以外の使っていない道具も一応点検した。それが全て終わると、彼女はスマホを取り出して、息を荒くしながら、隠し撮りした白希の写真を眺めていた。
赤いドレスと戦った翌日。白希は部室へと足を運んでいた。そこにいたのは菜乃花と猩花のみ。竜花はどうやら、まだここには来ていないようだった。
そして、竜花と言えば、今日は教室の掃除当番だった。誰とも話さず、超能力も使わずに、ホウキで教室の掃除をしていた。彼女以外の人は他の人と話しながら、手を動かしている。そのせいか、あまり掃除は進んでいない。今日の当番はいつにもまして、掃除が進まないメンバーのようで、男子は掃除に飽きて、ホウキで遊び始めているし、彼女以外の女子二人は黒板消しを持ちながら、楽しそうに会話をしているだけだ。結局、掃除を進めているのは彼女だけなのだから、掃除が進むはずがない。
そんな状況でも彼女はその人たちには何も言わない。彼女は既に周りに何も期待していない。無駄なことをするくらいなら、遅くても一人で行動した方が良いと考えていた。それに彼女がそうすることを知っているからこそ、誰も掃除をしてないようにも見える。そして、掃除当番ではない人も教室の近くにいるというのに、誰も彼女に手を貸したり、掃除しない人に注意したりはしない。
(ボクは超能力者だから、孤独には慣れてる)
前まではそんなことを心の中でさえ、言うことはなかった。誰も自分を理解してくれないのだから、それを心でさえ言う必要がないと考えていた。だが、今は違う。彼女は今にも掃除をサボって、会いたい人がいるのだ。血のつながりのない初めての友。年は少しだけ離れているが、それでも彼もおそらく友達だと思ってくれているだろう。
(そうじゃなきゃ、嫌だ)
理由など思いつかないが、彼が離れてしまうというのがどうしてもいやだった。彼女自身も気が付いていなかったが、それは蓮花が戻ってこないという寂しさもあった。




