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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
14 蓮花の不在
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蓮花の不在 5

 部室の近くにテレポートした彼は竜花と菜乃花が待つ部室に入った。中にはぐったりした様子の二人がいた。菜乃花はベッドの上にうつぶせになっていて、竜花は椅子に座って前のめりになっている体を膝の上に乗せた肘で突っ張って支えている。彼女のその手は額を支えていて、見るからに深刻そうな悩みを持っているような様子だ。だが、この部室に来たのは、彼女たちを連れ出すためではない。彼女がどこに居るかはわかるが、彼女の近くに移動して何か罠がないとも限らない。もし、白希ですら苦戦するような相手がいる場合は猩花を守ることは出来ない。彼女を人質にされては、蓮花を連れ戻すなんて言っている場合ではなくなるだろう。


「猩花、お留守番できるか?」


「え、一緒に連れてってくれないの。一緒に行きたい」


 いきなりの言葉に必死に彼にすがる。そんなことをされては、彼女のわがままを聞き入れたくなってしまうが、そんなことをすれば、彼女に危険が迫ることになってしまう。


「猩花、二人を守ってほしい。菜乃花も竜花もこの様子だ。この状態で、敵が出てきたら、戦えないまま、倒されるかもしれない。今、二人を守れるのは猩花しかいないんだ」


 猩花は彼の言葉に納得はしていないようだったが、説得は出来たらしい。彼女はここに残ることを決意してくれたようだ。だが、彼の言ったことは彼女をここに残らせるための方便ではなかった。蓮花に接触した奴が、この部室のことを突き止めていて、他の姉妹も取り込もうとするなら、この場所に来るかもしれない。仲間にならないなら、危害を加えてくるかもしれない。その時に、それに抵抗できる力が必要だ。菜乃花も竜花も使い物にならず、猩花がいなければすぐに制圧されてしまうだろう。幸いにも、彼女のぬいぐるみが沢山ここにある。彼女が超能力を使えば、白希が帰るまで耐えることが出来るだろう。それに猩花が頑張っている姿を見れば、二人も戦おうという気になるかもしれない。そうなれば、更に勝つ確率はあるだろう。


「白希おにいちゃん。絶対無事に帰ってきてね」


 猩花の言葉に白希は不適に笑って頷いた。手を振って、部室から出ていき、その場で部室を出たその瞬間にテレポートした。行先は蓮花のいるであろう場所だ。




 テレポート先には蓮花がいた。フレイズの熱感知は外だと正確には使えない。しかし、ファスとプロイアが、蓮花の存在を記憶したため、二人がフレイズの役目を継いでいた。


 町のはずれの森の中。この世界に来た時に最初に宇宙人と戦っていた林に近い場所だろうか。奇しくも、蓮花と初めて会った場所もこの近くと言うわけだ。だが、彼はそのことを頭の片隅にもなく、感動や感慨深さなどは全くないようだ。音と姿を遮断する魔法を最大レベルで使用する。この世界では透明人間と変わらないだろう。近づかなければ、耳にも目にも移らない。少しだけ移動すると、そこに蓮花がいると、ファスが教えてくれた。魔法のお陰でしゃがんで隠れるなんてことをする必要はなく、彼女の方へと少しだけ近づく。近づきすぎるとさすがに気が付かれるだろうと、距離は開けている。彼女が視認できる程度の距離であるため、凄く離れているというわけではない。そして、近づくと木の影になっていた場所に一人の男性がいるのに気が付いた。見た目からはあまり彼女が積極的に関わろうとするような人種には見えない。やせ形で、顔には気色の悪い笑みを浮かべている。蓮花は彼と会話しているが、彼女も彼のことを嫌っているのは見てすぐに分かった。どうやら、あの男が、彼女が家出の原因と言うわけだ。


 異世界の体験を思い出して、彼の中に怒りが沸きあがる。この体験は一度や二度ではない。人を利用して、自分の手は汚さない。最後には、悪事を働いたのは自分ではなく、その人だと言って断罪する。何度もその光景を見てしまったし、それを救えなかったこともある。だが、すぐには攻撃できない。怒りに任せて攻撃しても、おそらく白希なら勝利するのは難しくないだろう。だが、それでは蓮花を完全に助け出したことにならないかもしれない。蓮花と会っているというだけで、あの男が黒幕とは決めつけられない。彼の上にボスがいるとすれば、蓮花が言うことを聞いてしまう原因を完全に取り除くことにはならないだろう。


「朝野蓮花。少し手伝ってくれればいい。それにオカルトとも戦ってるんだろ? それなら手がかりを沢山持ってるかもしれない」


「オカルト? 何の話をしているのですか。私が戦っているのはそんな曖昧なものではありません。町を脅かす敵です。あれは確実に存在しているのですから、オカルトなんてものではありません」


「……へぇ。そんな反抗的な態度でいいのかな」


「……ッ。すみませんでした」


「んー、んー、それでいい。それで、だ。これは君にも恩恵があると思うんだが、実はこの町のオカルトには発生源があるみたいなんだ。そして、主がそれを持ちかえるようにとの命令を受けてな。その回収の手伝いを頼みたいだけだ」


 人を脅した奴の言葉を誰が信じるだろう。彼女はその言葉を胡散臭く感じているし、実際には信じていない。だが、もしそれが本当であるならと、信じてしまう心がないとは言えない。もし敵がいなくなるなら、姉妹仲良く平和に暮らせるだろう。彼女にとっては、それは願ってもないことだ。


「とりあえず、今日はその依頼の内容だけを伝える。そうだな、毎日夕方六時にここに来て情報交換することにしよう。今日は解散だ」


 そう言うと男はどこかに去っていった。森の中に住居でも構えているのだろうか。蓮花は悲しそうで、不安そうな顔をしながら、テレポートでその場所から消えた。

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