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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
13 破廉恥ですっ
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破廉恥ですっ 4

 白希が帰った後、朝野姉妹はそれぞれ好きなことをして過ごしていた。竜花はプラモデルを作っていたし、猩花はぬいぐるみにブラシをかけている。蓮花は勉強をしていて、菜乃花は大きなクッションの上で寝転がりながら、ぼうっとしていた。


 彼女は蓮花に嫌われていないと伝えるべきだと思ったが、それが彼女のためになるのか、全く先のことを予想できなかった。蓮花自身でそれに気が付いた方が、彼女の成長になるかもしれないし、ならないかもしれない。彼の言っていたことをどういても考えてしまう。


(迷っていても、しょうがないですね……。手助けだと思いましょう。きっと、悪い結果にはならないはず……)


 覚悟を決めて、菜乃花は蓮花の隣に立った。蓮花も机に影ができて、誰かが近づいてきたのが、わかったようだ。


「蓮花ちゃん。今江さんのことなんだけど」


 菜乃花がそう声を掛けると、彼女の体が硬直した。菜乃花はそれがわかりながらも、話を続ける。


「今江さんは、貴方のことを嫌ってるわけじゃないみたいよ。理由は教えてくれなかったけど、仲良くなれないとは思ってないみたい。どう、蓮花ちゃん、仲良くなれそう?」


「……それは、本当なのですか? 私のために嘘を言っているのではないかと、どうしても疑ってしまいます。今日も酷いことをしてしまいました。彼は気にしてないと言ってくれましたが、本当に許してくれたのでしょうか。それも私にはわかりません」


 彼女は沈んだ声でそう言った。いつもは気丈にふるまう彼女だが、姉妹の中では一番落ち込みやすい。竜花のために言っていることも、実は自分の憂さ晴らしのためにやってしまったことはないかと、何度も思ったことがある。言いすぎてはいないか、注意するにしてももっと言い方があったのではないか。彼女は心配ごとが多すぎる。竜花には考えすぎだと良く言われる。その通りだと思っても、それを変えることなどできないのだ。どうしても、色んな事が心配になってしまう。今江のことだって、彼を疑っているというよりは、自分がそう言われるほどの人間なのかと言う自身の無さが誰の言葉も信じさせない原因になっていた。


 彼女がその後も小さな声で、菜乃花に言い訳をしていた。菜乃花は弱っている彼女に、追い打ちをかけるようなことは言えない。でも頑張って仲良くしようなんて言葉は無責任だ。言葉だけで救える心と言うのはあるだろう。だが、今の蓮花の心は頑張って克服しようという言葉を拒否するだろう。ともすれば、それは菜乃花が彼女を突き放したと取られるかもしれない。貴方はもっと頑張りなさいと、そう言うことを言いたいわけではないのだ。菜乃花は彼女の話を聞くことしかできない。


「蓮花姉ちゃん。いつまでそうやって、言い訳するの?」


 蓮花の言葉の隙間に、竜花が口出しする。菜乃花も蓮花も彼女の方へと視線を向けた。そこには、膝を立てて、漫画を読んでいる竜花がいた。本をぱたりと閉じて、そっと机に置く。立ち上がり、蓮花へと歩みよった。


「白希兄ちゃんは、ほんとに誰も嫌ってないよ。菜乃花姉ちゃんも猩花のことも嫌ってない。蓮花姉ちゃんのことももちろん、嫌ってない。だけど、白希兄ちゃんは、自分から話しかけるような人じゃないんだ。仲良くしたいなら、こっちから話しかけないと、仲良くなんてなれない人なんだよ。妖精たちはきっと、ずっと一緒にいたからこそ、ああやってお嫁さんになれるほど仲良くなったんだと思う。お嫁さんと言わずとも、仲良くなりたいなら、自分から近づくしかないよ」


「でも、きっと私じゃ」


「うるさい! お姉ちゃんがそこまで、弱虫だなんて思わなかったっ!」


 彼女が責めるように怒鳴っても、彼女は言い返すことはなかった。彼女の言うことが正しいことだと思ってしまう。彼女の言葉に反発できない。


「そう、ですね。私なんか」


 蓮花はそう言うと、席から立ち上がり、部屋から出ていってしまった。いつもの胸を張って凛とした雰囲気を纏う彼女ではなく、猫背で暗い雰囲気を纏って、のそのそと歩く、じめじめした人になっていた。菜乃花は出ていく彼女を引き留めることも出来なかった。竜花を叱ることもできず、彼女は自分のスペースに戻ってしまった。竜花はその場に立ったままで、彼女が出ていった扉を見つめている。猩花は口を出さずにそれをずっと見ていた。




 部室を出てきた蓮花は、学校の敷地内、人通りが極端に少ないベンチに座っていた。空は既に暗く夕方も既に過ぎている。人通りが少ないこの場所は外套もほとんどない。この暗がりのせいで、様々な噂が流れている。幽霊が出るとか、殺人鬼が出るとか、猫が集会をしているとか。今は、彼女の周りには何もない。


「こんなところで一人かい?」


 誰もいなかったはずなのに、彼女は背後から声を掛けられた。

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