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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
12 無声の警告
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無声の警告 4

「フレイズ、少し落ち着いて。猩花も驚いてるからさ」


「あ、うん」


「まずは自己紹介をしようか。君たちの名前も名乗ってなかったからさ」


 妖精たちは、彼の周りに移動する。フレイズは彼の正面に、ミストは彼の肩の上から動かない。プロイアは、彼の肩の横にプロイアがいて、彼の頭の上にはファスが立っている。


「あたしはフレイズ。一応。シラキのお嫁さん」


「ボクはミスト。ボ、ボクもシラキの、お嫁さん」


「私はプロイアと言います。私もシラキさんの嫁と言うことになりますね」


「ファスはファスって言うの。ファスもお嫁さんよっ」


 それぞれが順番に自己紹介した。だが、朝野姉妹は驚きを隠せない。最初の二人は自分でそう言っているだけだと思っていたのだが、落ち着いた印象のプロイアが言うとその言葉が真実味を帯びてくる。彼もその言葉を否定することもない。


「えと、その、白希兄ちゃんは四人と結婚してるってこと?」


 あまりの衝撃に中二病状態も解除していて、巣の状態で竜花がそう呟いた。彼女たちが何に驚いているのか一瞬だけわからなかったが、すぐに思い当たる。異世界では重婚が当たり前のように認められている。だが、この世界では重婚は認められておらず、そのせいで、いくら妖精とは言え、四人が妻になっている状況を信じられないのだろう。まぁ、実際に国に結婚したという書類を提出したわけではない。異世界においても、結婚を証明する書類はない。あくまで、各々がそういう関係だと主張するだけだ。そして、異世界で彼は妖精たちと最上位の契約をしたのだ。妖精たちにとって、その契約は結婚よりも重く、本当に一蓮托生になった。それを彼らは結婚したと解釈しているのだった。


 それを彼は特に経緯を説明せずに、今言った四人と結婚しているのが、事実だと認めるだけだった。そのせいでさらに混乱する朝野姉妹。


「は、破廉恥ですっ」


 最初に動いたのは、蓮花だ。彼女は叫びながらドアから出ていった。彼女が一番動揺していたとわかると、それ以外の人たちは落ち着くことが出来たようだった。


「……異世界のことですもんね。重婚することもありますよね」


 菜乃花は静かに自分にそう言い聞かせる。竜花は額を指で押さえて、唸っている。そんな中猩花は、彼の袖を掴んで左右に揺らして、彼を呼ぶ。彼は猩花の方へと向いて、話を聞こうとしていた。


「四人と結婚してるってことは、まだ増えても大丈夫?」


「なっ」「ちょつ」


 竜花と菜乃花が一瞬で彼女の言葉に反応する。だが、言葉は既に外に出てしまっている。さすがの白希もその言葉には動揺が隠せない。猩花がそんなことを言うなんて思わなかったのだ。だが、彼女の言ったことを考えると、その可能性はあるとは思う。この世界で、妖精たち以上に魅力的な人はいないとは思うが、絶対そうとは言えない。それに妖精だから彼女たちと結婚したわけではない。


「まぁ、それは相手がいればね」


 彼にはそう答える以外の回答はなく、それは誰かに気を遣っいるわけでもない。彼にとってはそれが事実と言うだけだ。


 そこで結婚の話題は終わり、猩花はフレイズと話をし始めた。彼に渡したキーホルダーの作り方を一生懸命に話している。フレイズもそれを真剣に聞いている。猩花は言葉だけでなく、その後には裁縫セットを持ってきて、実際に布を使ってキーホルダーについていたような動物のマスコット的なものを作っていた。その隣で、フレイズが同じものを制作しようとしているが、あまり上手くは言っていないようだ。だが、それでもフレイズはそれを投げ出そうとはしないし、猩花も優しく根気よく教えている。異世界でも彼が作った街ではそう言った光景に溢れていた。その町に入ることができるのは、自分を不幸だと心の底から思っている人だ。だからこそ、彼の作った街はパラダイスなんて呼ばれていた。その光景の一部をこの世界で見ることが出来るとは思わなかった。


 この世界に置いて異質なのは妖精の方だろう。そんなことを言えば白希が怒り狂うかもしれないが、この世界の性質には妖精は合わない。それでも、彼女たちがこの世界の住人と肩を並べて裁縫を楽しんでいる。その光景は彼の理想だ。彼は少なくとも猩花のことは信用しようと思ったのだった。


「シラキ、見て!」


 それから一時間ほどしたころだろうか。竜花がお勧めしてきた漫画を読んで暇を潰していると、フレイズが彼のところに飛んできた。その後ろには猩花もついてきていた。そして、フレイズが手に持っているのは、猩花が彼に渡したキーホルダーと色違いのものだった。猩花のものよりも手作り感が強く、それはそれで味があると言えるだろう。


「シラキにあげる!」


 フレイズからそれを彼に押し付けるように渡した。彼がそれを受け取ったかどうかも確認せずに、彼女は猩花の元に戻っていく。そして、彼女は猩花の肩に座ってニコニコしていた。


「ショウカ、ありがと。教えてくれて」


「うん。その、もっと作る?」


「うん! そうしよう! シラキの家の中を埋め尽くすくらい作ろう!」


 猩花は案外フレイズと相性がいいようだ。フレイズがここまでテンションを上げるのは珍しい。やはり、この世界に来て、彼以外の人とも話したかったのかもしれない。

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