無声の警告 1
朝野姉妹の部室から帰ってきたその日の夜、彼はすることもなく、適当にテレビを見ていた。妖精たちはテレビをつけると、それを不思議そうに見ていた。フレイズが画面に齧りつきそうな勢いで前に出たので、フレイズだけではなく、妖精たちにはテレビを見るときは、できる限り離れてみることを約束してもらった。約束をした後は彼の座っている場所の前のテーブルに一列に座ってテレビを見ていた。彼にとっては特に面白い番組と言うわけでもなかった。彼はニュース番組を見ることはあるが、それ以外の番組はほとんど見ることがない。もし、学校に友達が板としても、テレビ番組の話題を出されたところで全く分からないだろう。人気の女優の名前も、若者に人気のあのバンドも、名前を訊いても誰かもわからないのだ。今日はただの気まぐれでテレビをつけただけだった。それを妖精たちが興味津々に見ているのを見て、彼は癒されていた。
「シラキ、これってどうなってるの?」
テレビ番組がコマーシャルになると、フレイズが彼の隣まで飛んできていた。仕組みを聞かれても、完全に理解してるものでもなく、どう説明しようかと思案する。だが、結局は深く仕組みをわからないのだから、軽く説明するしかないと思った。その説明をすると、彼女はそれで満足したのか、先ほどのまで座っていた場所に戻ってきた。それが終わると、ミストが彼の肩に乗り、落ち着いたようにほう、と息を吐いた。彼女は白希の肩の上が一番落ち着くのだろう。プロイアとファスは特にお喋りもせずにテレビの方を見ていた。つまらないというよりは、疲れているのかもしれない。この世界には魔気が満ちているというわけではない。魔気があれば、疲れもすぐに回復するだろうが、この世界は異世界に比べて魔気が少ないため、疲れが回復するのも遅いのだろう。特に魔気の影響を多く受ける妖精はこの世界よりは異世界の方が過ごしやすいのは確かだろう。そう言う、彼も魔気とは関係なく今日は多少疲れたことは事実だ。クロカミサマは思った以上に強かったし、精神的な疲れもあるのだろう。その疲れが彼の瞼を徐々に下に下げていく。
「……ん」
彼は薄目を開けて、周りを確認する。顔の横から寝息が聞こえると思ったら、ミストが彼の耳に寄り掛かり眠っていた。フレイズも机に丸まって眠っている。
「寝ちゃったのか」
プロイアとファスの姿が見えないと思ったが、彼が寄り掛かっていたソファの方で寝転がっていた。彼女たちも眠っている。
「というか、テレビつけっぱなしだった」
彼はミストを起こさないように手だけ伸ばして、テレビのリモコンを手に取る。テレビの方へそれを向けて、消そうとしたのだが、テレビがおかしくなっていた。そこにはエンドロールが流れるかのように、文字が下から上に流れている。よく見れば、それが人の名前っぽいことがわかるだろう。知っている名前は一つもないはずだ。それを見ているとはっと、あることを思いだした。夜中の番組がやっていないはずの時間帯に人の名前が流れることがある。それは翌日の死者のリストだ。そんなオカルトの話を見た記憶が呼び起こされる。
「これが、か?」
すぐに信じられない。それが翌日に死ぬ人の名前だというのは、オカルトの話だと思っていたが、この世界はオカルトも現実にある。くねくねとクロカミサマと戦ったのだから、これも嘘と言うわけではないのだろう。
「NNN臨時放送……」
名前のリストの最後には、法則局の名前のように、楕円の中に番組名が書かれたロゴが出てきた。リストはそれで終わりのようだった。そこからは、番組をやっていことを示すカラフルで目が痛くなるあの画面になる。彼はテレビを改めて消した。彼の頭の中で、リストが再生される。彼が目を覚ましたところからしか見ることが出来なかった。その前に誰かの名前が書かれていないことを祈るばかりだ。それに、まだこのオカルトが現実になったわけではないのだ。
彼は妖精たちを手に乗せて、ベットに移動する。自室の扉を足で開けて、自身も含めてベットの上に寝転がる。彼女たちを自分の隣に寝かせて、ハンカチを使って作った掛け布団を彼女たちに掛ける。それから彼も目を瞑り眠ろうとした。目を瞑ると先ほどのリストが記憶の中で再生される。ここまであれが気になるというのも変な話だ。彼はどちらかと言えば、そう言った環境に影響を受けるような性質を持っていない。だが、それでも気になるということは、あれに何か思い当たる節でもあるのかもしれない。彼は記憶の中を探り、あのリストの中にあった名前を探そうとした。だが、どれだけ記憶を探っても、繋がりを知ることは出来なかった。




