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朝野姉妹 3

「よく来てくれた。ようこそ、ボクたちの根城へ!」


 竜花は白希に近づいてきて、彼の前で仁王立ちして、胸を張ってそう言った。袖から、包帯の先がふらふらしているのが見える。


「改めて、自己紹介をしよう。これで三度目だけど」


 彼女がそう前置きをして、軽く息を吸った。


「ボクは、朝野あさの竜花りんか。中学二年。もちろん、この学校の中等部だよ」


 彼女はそう言って、左に視線を送る。その先にいるのは蓮花だ。彼女は優雅に立ちあがり、彼に近づいてくる。ティーカップを持ったまま。その状態で彼女は、彼の真横で止まる。


「私は、高等部二年の朝野蓮花(はすは)です。以後、宜しくお願いします」


 彼女が頭を下げようとしたところで、ようやく自分がカップを持ったままだということに気が付いたようだ。しかし、それを置きに戻るのは恥ずかしいようで、そのカップに口を付けた。そして、喉を少し鳴らして、左奥にいた猩花を呼んだ。


「猩花、ご挨拶してください」


 猩花は彼女の声には反応しているのだが、彼の方に来るつもりはないようだ。蓮花がそんな彼女の様子を見て、更に言葉を続ける。


「猩花、蓮花姉さんを助けてくれた人ですよ。竜花が攻撃されたのは、きっと竜花が何かしたのでしょう。変な言動のせいで、いつの間にか人を不快にさせることもるのは知っているでしょう。そう言うことですよ」


 蓮花は、竜花を横目に見ながら、そういった。竜花は文句を言いたそうにしているが、猩花がここに来るならと何も言わない。それに蓮花の言ったことは彼女が自覚している部分でもある。難しい言葉を使いたいのだが、その意味を知らないことも多い。それでも使いたいという一心で使ってしまい、相手を不快にしてしまっている自覚はあるのだ。と言うか、その被害者代表は蓮花なのだ。文句の一つも二つも言いたくなるだろう。


 そう言われて、猩花はしぶしぶ、彼の前に来た。彼女は睨むというか、上目遣いで彼を見上げた。


「初等部5年、朝野猩花(しょうか)です。よろしくしなくてもいいです」


 口を尖らせながら、最後には顔を横にプイッと向けていた。彼女の中ではどうにも折り合いがつかないらしい。白希は特に彼女の様子を気にした様子はない。挨拶は聞いていたが、子供に嫌われた回数は数知れずと言ったところか。特に、囚われていたり、日取り扱いを受けていたり、すると簡単に他人を信用できなくなり、全てが敵に見えるのだろう。猩花はまだ魔法や石をぶつけてこないだけ可愛いいじけ方だなと思ったほどだ。


「あらあら、ごめんなさいね。本当なら、ちゃんと挨拶してもらうと思ったんだけど。そうそう、私は、そうねぇ、大学一年生の朝野菜乃花(なのか)といいます。よろしくね」


 彼女の挨拶はゆったりとしていて、他の姉妹とはリズムと言うか、時間経過というか、そう言うものが遅い感じがした。ヴァンパイア状態のときはそう言った差は感じなかったため、戦うときにはしっかりとその態勢になるのだろう。彼も似たようなものだ。戦うときには思考の速度が切り替わるような感覚がある。


「今日は、みんなは何もないんだっけ」


 菜乃花が全員に訊いた。全員がコクリと頷いて、それぞれの場所に戻っていく。彼はここに何しに来たのか全く分からない。


「ごめんね。私のスペースに来てください」


 彼女が自分のスペースに移動して、丸いテーブルの横にもう一脚折り畳みの椅子を出した。彼女はそこに白希を座らせると、部屋全体の中央に、背中合わせである冷蔵庫の中から、二リットルのお茶が入ったペットボトルを出してきた。そして、彼女のスペースの中にある棚から、サクランボが描かれたガラスのコップを二つ用意して、そこにお茶を注ぐ。片方を彼の前に置いて、手でどうぞと示した。彼は一口だけ飲んだ。そして、彼女ははっとした様子で、ストロー四本とサクラの花びらの付いた小さなコップを出して、そこにもお茶を注いで、彼の前へ置いた。


「妖精さんたちもどうぞ~」


 どうやら、幻の魔法も意味がないようだ。彼はそれらの魔法を全て解除した。意味のない物をずっと使用していても意味がないし、自分たちにとっても負担になるだけだ。妖精たちは、自分たちのコップが出されたのを見て、それぞれテーブルに降りる。ミストだけは警戒して、彼の肩に乗ったままだ。


「ミスト、大丈夫かどうか、ミストならわかるかな」


 彼女は頷いて、水の魔気を小さなコップの中のお茶に通した。水の魔気を自在に操ることが出来る彼女はそれである程度、危険物が入っていないか判断することが出来るのだ。


「……大丈夫、みたい」


 ミストは白希の顔を見て、そう呟いた。彼の肩に乗っていなければ、彼には聞こえない程小さな声。テーブルにいる妖精たちにも聞こえないだろう。


「みんな、飲んでも大丈夫みたい。ミストが検査してくれたよ」


 そう言うと、三人はコップから直接お茶を少しずつ飲む。ストローは彼女たちには長すぎるのだ。


「あ、ああ、ごめんなさい。長いのね、そのストローは。今度は短いの買ってきますね」


 菜乃花は特に何も言わなくとも、妖精たちの行動である程度は察することが出来るらしい。どうやら、そこまで悪い人ではないようだ。だが、全部を信頼することは出来ない。

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