夜の女王 4
「プロイア。エアシフト」
彼の周りに風が巻き起こる。彼の足に纏わりつくようにして、体に巻き付く。その魔法は攻撃のための魔法を無理やり自己強化の魔法へと作り変えた魔法である。そもそも、魔気を使った名前の付いた魔法は攻撃するための魔法がほとんどだ。壁を作り出す魔法もそれを生物にぶつければ、それなりのダメージが入る。そして、そういう特性の魔法を無理やり強化にしているということは、使用者にはそれなりの負担がかかるのだ。それでも、彼にはプロイアの超能力がある。彼女に触れてもらって、治癒し続ける。彼女に負担がかかるが、長時間使用するつもりはなかった。
エアシフトのお陰で、空中を自由に移動できるようになった。止まることは出来ないが、それでもすぐに骨の化け物の顔の前に到達した。
「フレイズっ! スキャッターエクスプロージョンッ!」
そう唱えると、彼の前に彼の前に白い球体が出現する。骨の化け物の炎でできた目がそれを注視している。骨はそれをみて、ガシャリと口の辺りを鳴らした。きっと、同じ炎を操る者として小さな炎に何ができるとでも言いたいのだろう。彼は相手の油断を理解すると、口角を上げた。
「はじけ飛べッ!」
小さな白い球は骨の顔に着弾する。それと同時に骨の顔、髑髏の全てに爆発が連鎖する。そこに何もなかったはずなのに、オレンジ色の巨大な光が、髑髏を覆いつくした。凄まじい衝撃。白希は既に髑髏の顔から離れて、囚われているヴァンパイアを助けるために移動していた。骨はがっちり彼女を握っていたが、目が使えないだけの彼女の力はそのままだ。彼が目の代わりになり指示を出すだけで、自力で抜け出すことが出来た。それでも視界が未だ戻らない彼女はうまく空も飛ぶことが出来ず、ふらふらと地面に落ちようとしていた。それを彼は横抱きになる形で受け止めた。
「あぶな。ふぅ」
彼はそのまま地面に降りて、エアシフトを解除した。
「プロイア。ありがとう。無茶に付き合ってくれて」
「問題ありません。シラキさんの為なら、いくらでも」
プロイアは真剣な瞳でそう言っているが、あまり彼女たちには無茶はさせたくはない。彼は無茶をしてしまう性格だと知りながら、付いてきている妖精たちはあまり無茶に付き合うことを、むしろ彼の為になっていると感じているため、苦ではないどころではなく、役に立てることを嬉しいと感じていた。だから、無茶してしまうのだが。
「大丈夫?」
「すみません。目が見えなくて、誰だかわかりませんが、ありがとうございます」
「少し目を瞑っていて。その間に終わらせるよ」
彼女を危険がない場所に移動させて、彼はそんな言葉を残して再び骨に挑む。骨の顔では未だに爆発が続いていた。弾ける度に爆発の衝撃は小さくなるが、その持続時間がかなり長い魔法だ。人一人を助け出す程度の時間では、全てが終わることはないだろうと予想していたが、その通りだった。
「ファス。少し強い魔法を使いたい。手伝ってくれるか」
「当たり前じゃない!」
ファスはくねくねと戦った疲れがあるはずだが、それでもここまで付き合ってくれている。それどころか、ようやく彼に頼られて、自分の出番だと張り切っているようだった。
「なにするの? なんでもやるわよっ!」
「引力の魔法を使おうと思う。ファス、アトラクトプリズン」
その魔法を唱えても最初は何の変化もなかった。骨は未だに顔面で爆発するそれをどうにかしようとしているが、爆発は飛び散り、腕や胴体でも爆発が起こってしまっている。魔法が止まるためには、イメージした魔法の最後の結果まで発動するか、そこに込められた全ての魔気が消滅するかのどちらかだ。魔法の結果が現実にならずとも魔気が無くなれば、それで終わりだが、その魔法に魔気を込めたのは魔気を従える能力を持つ妖精たちだ。魔法の結果が来るまでの魔気を込めることは難し琴ではない。そして、彼の使った魔法は結果までの家庭がかなり長いため、少し待った程度では終わらない。人サイズのものに使えば終わりはすぐ来るだろうが、大きければそれだけ発動時間が長くなるような魔法だ。
そして、爆発の届いていない骨の足に変化が現れた。骨の足がみしみしときしみ始めたのだ。それはシラキとファスで発動した魔法のせいだった。土の魔気を一か所に集めて濃度を高くすると辺りを引き込むという力を持つようになる。それを利用して、魔法を使った位置の周囲をその場所に吸い込むという魔法だ。その引力に耐えられず、骨がみしみしと鳴り始めている。化け物は足に構っている余裕などはない。




