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夜の女王 2

 アンデットには火の魔法が他の魔法よりも効果が高いことがあった。この相手も一応、体に肉がついているため、効果があるかもしれない。


「フレイズ。レッドドラゴンブレスっ」


 彼の正面に赤く光る球体が出現して、そこから化け物に向かって、炎が広範囲にわたり、放射された。炎のせいで相手の体がどうなっているかは見えないが、それでも相手からの攻撃が来ないということは、それだけダメージを与えられているのかもしれない。


 火炎が収まり、化け物の姿が見えるようになった。紫の体表面のほとんどが赤く光っている。肉の大部分が溶けていて、そこからは骨が見えていた。そこで気が付いたのだが、肉の中の骨は体を丸めるようにして肉の中に入っているだけだった。つまりは、その肉は骨の鎧ということだろう。肉をどうにかして剥がさないと本体の骨にダメージを与えることもできないということになる。その鎧は炎で溶かすことが出来るとわかっているため、そこはあまり問題では無いだろう。気が付いたのは、化け物の顔は既に本体であるはずなのに、そこには一切のダメージを与えられている様子ではないということだ。異世界では一度だけアンデッド軍団と戦ったことがある。大量のゾンビとスケルトンだった。その相手をするときは、ゾンビを炎の魔法で焼き尽くして、骨はハンマーなどで砕いて討伐した。この化け物もまんべんなく衝撃を与えられるような攻撃をしなければいけない。


 彼が思考している間に、相手の腕が彼に迫る。その手は彼を掴もうとしているようで、掌が彼に迫る。だが、彼は掴まれる前にテレポートで移動する。空中に移動してそこから落下しながら再びレッドドラゴンブレスを使用して、相手の体を焼いた。正面から見れば、肉を剥がれ堕とすことに成功しているように見えたが、彼からは見えない全体像からすれば、大した量の肉を落とせているわけではない。そして、金属製の鎧と違うのは、傷がついていない部分の肉が他の傷ついた個所を治癒してしまうことだ。


「シラキ、このまま戦っても、負けちゃうよ」


 ミストが彼の耳元でそう囁く。彼女が見た未来と共有すると、相手の肉の鎧がいつまで経っても削り切ることが出来ずに、しょうもし続けてこちらの負けになっている映像が見えた。そこでようやく、鎧の自己再生能力に気が付いた。


「なるほど。だから、防御しないってこと? この程度での炎じゃ無駄ってことかな」


 彼の使っているレッドドラゴンブレスは強力ではあるが、それよりも強い魔法はいくらでもある。そして、広範囲に広がるという点からよくその魔法を使っているだけだ。使おうと思えば、更に強い魔法も妖精たちのお陰で難なく使える。


「フレイズ。ちょっと強い魔法を使おう。バーンスプラッシュ!」


 彼の周りに火の球が出現して、すぐにそれらははじけ飛んだ。そして、火の玉の欠片が相手にむかって移動する。大量の火の玉が破裂して出来た破片は一つや二つではなく、化け物を囲むことが出来るほど大量の破片が生まれていた。そして、その破片が化け物の肉に触れると同時に、目にわかるほど輝いて、一瞬だけ火の柱が上がった。そして、次々に炎の柱が伸びていく。最初こそ、肉は全く削れなかったが、徐々に紫の体表面から焼け朽ちていき、中の肉も焼けていく。やがて、肉の中の骨が彼らの視界の中で露わになっていく。そして、露わになる体の面積が大きくなっていく。そして、相手の体を包む肉の鎧が無くなると、相手は中で丸めていた体を伸ばした。ガシャガシャと言う音がして、化け物の骨がなっているのか、カラカラと言うような音もしている。そして、それはゆっくりとあ立ち上がる。二階建ての商店よりも明らかに大きい。それもそのはずで、小さくなっている状態で二階建ての建物と同じくらいだったのだ。立ち上がれば、それよりは大きくなるのは当然だろう。立ち上がったと言っても、真っ直ぐ立っているわけではなく、白希たちを攻撃するターゲットとして見ているのか、中腰で、彼らを上から覗くような体勢を取っている。肉の鎧の時には四本あった腕は骨だけで構成された腕が二本。二本の足はしっかりと地面に足裏を着けて立っている。


 ガシャ、カラカラ、ガシャ


 骨の化け物は彼らを見下ろして、頭を動かしてそんな音を彼らに聞かせている。笑っているようにも怒っているようにも聞こえるその音は商店街にだけ響いている。


「お、大きい。ギガントゴーレムよりも大きいよっ!」


 フレイズが興奮した様子で、化け物を指さしていた。全身骨でできていて、建物よりも大きい化け物。その見た目はがしゃどくろと言う妖怪に似ていた。しかし、大きさで言えば、その妖怪よりも遥かに小さいだろう。


「山よりは大きくないし、倒せない相手じゃないよね」

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