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夜の女王 1

 浮遊感と激しい頭痛と気持ち悪さに耐え、彼らは気がつけば元の位置に戻ってきていた。商店街の近くの路地の中。だが、既に辺りは暗くなっていた。既に夜と言うkとなのだろう。くねくねのいた空間は時間の経過が無かったということなのだろう。


「何か変です、シラキさん」


 そう言ったのはプロイアだ。確かにその通りだ。いくら夜でもここまで人の気配がない物なのだろうか。商店街の近くに住んでいる人もいるはずだが、その気配すらもない。


「確かに、おかしいね」


 彼が辺りを見回していると、ファスとプロイアの感知能力が途中で途切れていることに気が付いた。商店街全体と、その周辺を取り囲むように見えない壁と言うか、そもそも空間自体が閉じられているという感触だ。異世界でも一度しか見ていないが、結界と呼ばれる種類の超能力によって、空間ごと仕切り、その結界の中にどんなものでも閉じ込めることが出来るという物だ。もちろん、そんなものを意味なく使うことはないだろう。つまりは、この商店街の中か、外に結界を使うほどの敵がいるということになる。商店街だけを覆っているということは結界の中に何かを封じている可能性の方が高いだろう。


 彼らが辺りを見回していると、商店街の中に何かがいた。二体、と言うか、一人と一体と言うべきだろうか。一体と呼んだ方に今まで気が付かなかったのはその大きさからだ。商店街の横幅いっぱいの体を持っていて、高さも二階建ての建物と同じくらいの高さだ。一人と数えた方は、翼の生えた人型をしているからだ。人型と言ってのには訳があり、その人型には明らかに翼が生えているのだ。それも天使や鳥類のような翼ではなく、蝙蝠のような羽の無い翼だ。さらにマントも着用しているようで、その裾がひらひらと動いているのがシルエットでもわかる。見た目の印象は悪魔の貴族と言ったところだろうか。異世界にも悪魔という種族はいたが、とくに嫌われているわけではなかった。それどころか、白希の助けた人たちの中にも悪魔族の人は少なくはなかった。その悪魔族がこの世界にもいるというのは不思議なことだと思ったが、彼が自身が異世界に召喚されたことを考えると、向こうの世界からこちらの世界に呼び出されていても不自然と言うわけではないだろう。元からこの世界にいたということも考えられなくはない。


 何にしても、その悪魔がこのまま得体のしれない大きな化け物と戦い続けているというのを知っていて、それを放置することはできない。彼は商店街の方へと移動する。商店街の中に入ると、ちょうど化け物の目の目に出る形になった。今まで、他の建物で見えなかった化け物の全貌が見えた。


 一番目立つのは髑髏の顔だ。眼窩の中には赤い炎のような目が付いており、口のある部分には歯はなく、口の奥には青い炎が妖しく光っていた。その顔がついているのは、ブクブクに太った肉の塊だ。体表面は紫色で、歪ではあるが立方体に近い形をしていた。そして、そこから四本の手が正面から見て立方体の角の部分から延びている。その腕には関節などはないようで、相手が少しでも動くと、肉がこすれて、二チャリといつような音が聞こえてくる。


 そして、彼の背後には悪魔族の人が一人。彼が背中越しにちらっと見た。髪は短めで、顔が小さい。遠くから見たときの印象通りマントを着けていて、その背中には蝙蝠のような翼がある。主張の強い豊かな胸は、妖精たちにしか好意を持たない彼でも見てしまうほどの大きさだった。


「な、なんで、こんなところに人が……?」


 彼はその呟きを聞いていた。それはつまり、結界を張ったのは彼女の方であり、この化け物を退治しようとしているということだろう。


「手助けしなくても良かったかな。でも、異世界の人なら知らないふりは出来ないし」


 彼はそう呟いて、目の前の巨大な化け物と対峙する。その場に留まって相手を見ても、明らかに大きい。だが、大きいだけの化け物を異世界では何度も倒してきた。体が大きければ、それだけ動きが遅いというのがセオリーだ。この敵がそうであるかはわからなかったが、すぐに答えは出た。


 化け物はいきなり目の前に出てきた彼をすぐに敵だと認識して、攻撃する。四本の腕の内、二本を彼の方へと伸ばす。腕をありえない方向にねじるが、それでも相手の腕は折れたりはしない。相手の掌が彼に向けて振り下ろされる。まるで、蚊でも潰すときのようなはたき方。だが、彼はそれを簡単に回避した。それどころか、その手に触れて、フレイズの超能力である崩壊を使用する。その瞬間に、相手の指が塵になる。だが、それ以上は崩壊が進むことはなかった。


「見た目からして、アンデットってところ?」


 アンデットには崩壊の超能力の効果が薄いことがあった。それは既に死んでいるせいで、崩壊させると、連鎖する前に本体と触れている部分が剥がれ落ちて、崩壊が連鎖できなくなるからだ。連続して触れ続けていれば、崩壊を胴体まで到達させることは出来るだろうが、それでは時間がかかりすぎる。後ろの彼女に話を聞くためには、あまり時間はかけたくはなかった。

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