白いオカルト 5
とりあえずは、相手を無力化するための作戦を思いついた彼は、それを実行することにした。多少時間はかかるかもしれないが、それで相手を無力化できるならば、その作戦を実行するしかない。他の作戦も思いついていないのだ。
「ファス。少し大変かもしれないけど、力を貸してくれるかい」
「もっちろんよっ。ファスに任せなさい!」
ファス彼の頭の上に立ち、彼と同じ方向を強い意志を持ってみていた。彼女もくねくねに対して恐怖心を持っているはずなのに、それを跳ねのけるかのように彼女はそう言った。彼女は白希を信頼しているのだ。
「他のみんなも魔法を使うときはお願いね」
妖精たちはそれぞれ頷いて、全員がくねくねと対峙する。くねくねは彼に向けていた手足を自分のところに戻していた。足はどこにあるのかわからないが既に手と思われる部分は彼に向いている。正面から見ると、それが棒ではなく、平たい紙のようになっているのがわかった。
「プロイア。フローウィンドカッターっ!」
彼の周りに風の流れが出来て、彼にもわかるほどの風になる。その流れが、白い化け物にむかって飛んでいく。それに気が付いたのか、くねくねの手足が彼に向かって伸びていく。だが、その前に彼の流れが、向かってくるそれを巻き込んで、ボロボロに斬り裂いた。風が巻き付いて、切断したのだ。本体から切り離された欠片を彼は逃すことは出来ない。一部でも逃せば、それのせいで相手が回復してしまう。
「ファス。あの欠片を地面の中に埋めてくれ!」
ファスは返事をする前に、地面から土の柱を伸ばした。
「土よ。アンダーバイトっ!」
ファスがそう唱えると伸ばした柱が中心から口を開くように左右に大きく開く。その量は死には牙など無いが、柱の上にある全ての欠片を柱の中に閉じ込めた。そして、欠片のほとんどをその柱の中に納めると地面へと踊っていく。すると、くねくねが伸ばしてきた手の一部がそれ以上は伸びなくなった。それどころか、その腕は力が無くなったかのようにだらりと地面に落ちて、本体の方へと縮んでいく。もう一方の腕が彼に向かって近づいてきていたのが、引っ込んでいく。攻撃していない方の腕を引っ込めたのはおそらく、今の攻撃を受けないようにしたかったのだろう。
彼が思考している間に、地面から微細な揺れを感じた。ファスは魔法を使った後でそこに注意が向いていない。だが、彼はそれを感じていた。先ほども地面から白い棒を生やして攻撃してきたのを忘れるはずもなく、彼はその場から後ろに飛んで移動する。彼がジャンプするのとほとんど同時に白い棒が地面から生えてくる。それを彼は見越して、風の流れをそこに向けていた。地面から出るのと同時に地面から生えているそれを斬り取った。そして、修復する前に風が巻き付いてボロボロの細切れにした。それをファスは残らず地面へと引き込む。相手のそれは修復することは出来ずに、地面に戻っていく。手と同じであれば、本体に戻っているのだと考えられる。
「フレイズ。フレイムカノンっ」
彼の周りに火の球が出現して、それらは加速しながらくねくねの方へと向かっていく。今度は地面ではなく、相手の体本体を狙って放ったもので、くねくねがその場から移動しないのであれば、それを外すことはないだろう。くねくねは体をくねらせて、火の玉を回避する。それが相手の後ろの畑を抉り、土と作物が宙を舞う。だが、くねくねの胴体はボロボロに細切れになっていく。火の球だけに目が間に目立たない風はくねくねに到達して、既に相手の体に巻き付いていた。そして、その風は、くねくねの胴体を少しずつ細切れにしていく。腕や足より幅があるため、一気に切り刻むことは出来ない。少しずつ出ている体の欠片は少しも漏らすことなく、地面へと埋めていく。くねくねに苦しかったり、弱っている様子はない。抵抗も特にせず、くねくねの全てのパーツが地面の中に閉じ込めた。
「とりあえず、これで終わりかな。みんな、ありがとう」
くねくねは完全に無力化した。しばらく待っても、次のくねくねが出現するとか、地面に埋めたパーツがくっついて、地面の中から再び出てくるとかそう言ったことはなかった。
「う、く」
突然、彼らの視界が白く輝き、激しい頭痛が彼らを襲う。その痛みの中でも妖精たちの手を取り、彼は彼女たちを胸に抱いていた。
「だ、大丈夫。僕は、みんながいれば……」
強制的に意識を途切れさせるような力の働きを感じながら、彼はそれに抵抗していた。薄目に目を開けて、心をその意識の遮断に抵抗するように強く持つ。そして、彼は何とも言えない浮遊感気持ち悪さを感じた。




