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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
40 望みの結果
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望みの結果 1

 夕来は学校近くの人気のない林に来ていた。メリーさんからの着信を受けて、前は逃がしたが、今度こそ決着をつけようと考えていた。彼女の胸ポケットには、ミストが入っていて、ポケットの淵に手をかけて、彼女と同じ方向を見ていた。ミストも夕来を傷つけた人を許すことはできず、見た目にはクールだが、彼女はメリーさんの討伐に燃えていた。


 あたりには人も一人もおらず、林に生える木々の葉がたまに風に揺れて音を立てているだけだ。そんな静かな場所で彼女のスマートフォンが着信した。着信音が林の中に響いている。彼女はスマートフォンを取り出さずに、勝手に電話が通話状態になるのを待つ。三コール程鳴った後、プツンという音を共に通話が繋がった。


「もしもし、私、メリーさん。今、あなたの学校の敷地にいるの」


 電話はそこで切れて、ツーツーという音が聞こえてきていた。スピーカーにしたつもりもないのに、勝手に二人に聞こえるほどの音量で通話が繋がっていた。そして、まだ通話が切れた音が流れていたところで、強制的に次の電話が通話状態になった。もはやコール音もならないようだ。


「もしもし、私、メリーさん。今、あなたのいる林の中にいるの。……もうすぐ、決着をつけに行くわ」


 その言葉を発したスマートフォンは再び電話が切れた音がした。彼女は次の電話で後ろに出てくると思っていたのだが、メリーさんは夕来の正面から正々堂々と出てきていた。その状態のまま、彼女のスマートフォンが着信した。位置コールもしないうちに勝手に電話が繋がり、メリーさんの声と電話の声で二重に声が聞こえた。


「「もしもし、私、メリーさん。今、あなたの後ろにいる」」


 電話はそこで切れて、夕来は後ろを警戒して、前に移動しながら体を反転させた。そこにはメリーさんがいたが、まだ戦闘をする気はないようで攻撃のそぶりは全く見せなかった。


「私にとっても最後の戦いになるわ。これで、全部終わりなのよ。勝っても負けても、それで終わり。これが私たちの幕引きだわ。だから、どうせ最後ならあなたには勝ちたいのよ。最後にあの人に私の愛を見せたいだけなのよ。わかるでしょ?」


 彼女はメリーさんの言っていることは理解できた。彼女だって好きな人のためならば、命を懸けるだろう。現に今、彼女は命を懸けて、メリーさんというオカルト

と戦おうとしているのだ。たとえ、自分がいなくなろうと、彼の邪魔はさせるわけにはいかない。そういう志なのだろう。だが、今の夕来には自身の命を失ってもという覚悟はなくなっていた。今の自分にはミストもいるし、白希と話すこともできるようになった。ミストと白希のために生きて帰って、そのあともずっと一緒にいたいという未来を願うようになってしまった。そこだけは、今のメリーさんと夕来の覚悟の違いだろう。


「そう。私にもあなたの言っていることはわからなくもないけれど、どうせなら、その愛しの人と一緒に最後まで生きてあがいた方がいいと思うけど。でも、終わりたいというのなら、終わらせよう」


 理解できるからこそ、メリーさんお終わりたいという言葉に対して何を言っても考えなおすことはないだろうと理解していた。だから、メリーさんが言葉を理解できる相手でも、容赦なく相手をすることにしたのだ。白希であれば、おそらくメリーさんを説得する方に動くだろう。言葉を理解できて、心を持っているなら和解できる可能性があると考えるのが彼だ。夕来もそれはわかっているが、それ以上に相手の心の不動さを理解しているのだから、説得する時間は無駄になるだけだ。


 メリーさんは彼女が自分の心を理解してくれたことが嬉しかった。彼女の

心を理解するものはいない。愛している彼も自身と共に死ぬことを快くは思っていない。だから、彼女だけが真の自分の理解者であるとわかっていたのだ。一度しか、あっていないにも関わらず、彼女からは自分と同じ性質の女の気配がしたのだ。


 だからこそ、メリーさんは夕来との決着をつけようと最後に彼女と戦うことにしたのだ。


 夕来はスクールバッグから改造スタンガンと折り畳みナイフを取り出した。さらにポケットの中には包帯や聖水の入った小さいペットボトルが入っている。さらにハサミやカッターナイフもポケットの中に入っている。戦うための武器は全て自身が身につけているため、スクールバッグは既に林の期の影に置いている。彼女は武器を取り出すのを見て、メリーさんも戦闘態勢をとった。手には小さなナイフを持っているが、その手に持っているもの以外にも彼女の身には三本のナイフがくくりつけられていた。

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