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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
39 それぞれの決闘
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それぞれの決闘 5

 蓮花は口裂け女の攻撃を回避し続けて、どうにか敵を説得しようとしていた。これ以上戦う必要はないと何度も話したが、相手はその言葉に耳を貸すことはなく、攻撃を続けていた。蓮花もそこまで来ると、どうしても相手が自分の話を聞く気がないと判断するしかなかった。彼女はカッターを取り出して、戦闘態勢をとった。


 彼女が戦闘態勢になっても、口裂け女は態度を変えず、攻撃を続けようとした。しかし、今の彼女は戦闘をすると考えたなら、口裂け女の持っている特殊能力では彼女に届かないだろう。大きく裂けた口を見せて相手に恐怖心を植え付けて、ナイフを振り回す。その攻撃範囲を広くして、対象を殺す。そういう超能力だ。だが、蓮花は大きく裂けた口を見ても恐怖心を抱かなかったし、ナイフにしてみても、彼女はその攻撃範囲を理解してしまっている。口裂け女が勝利するチャンスは最初にナイフを振るったときに蓮花を殺せなかったことだろう。戦闘慣れしている彼女には初見で泣けば、見切られる程度の超能力だ。最初に仕留めきれなかったのだから、口裂け女の敗北はその時点で決まっているといっていいだろう。彼女が話し合いを求めなければ、勝敗などは簡単に決まっているのだ。


 彼女のカッターナイフが振り回される。その攻撃範囲に口裂け女はいない。だが、口裂け女の体に大きな亀裂が入る。そこから出血することはないが、切られた部分は機能しなくなるのは人と同じだった。敵の太もものあたりに地面と平行に一を書くような線が入る。その時点で足は機能しなくなり、素早く動けなくなる。


「……次は、もっといいオカルトになれるといいですね」


 蓮花にしては珍しく、本心でもない言葉を呟きながら、その場でナイフを振るう。彼女はナイフが繰り出す斬撃をテレポートさせた。次の瞬間には、口裂け女の体には無数の切り傷が出現した。そして、口裂け女の体の全ての機能が使用できなくなり、膝をついて前に倒れた。口裂け女は動かなくなり、体が塵になってどこかに消えた。




 竜花は部室を飛び出して、熊のぬいぐるみを外に連れ出す。熊が外に出たのを確認してから、部室の扉を閉める。そうすることで、熊のぬいぐるみは再び部室に入ることはできないだろう。敵は二階にある部室の扉から飛び出していき、部室の前の広場に降りた。持っていた包丁のような刃物の先を彼女に向けて、上下に揺らした。それは彼女を挑発しているかのような行動にも見えるし、殺してやるという宣言にも見えた。どちらにしろ、竜花はあの敵と戦わないという選択肢はない。挑発されずとも、命の危機にさらされずとも、あの敵を放っておけば、他に被害が広がるのは考えるまでもなく、起こることだろう。今、ここで倒さなければならない相手だ。


 彼女は二階の手すりを乗り越えて、地面に落ちる。地面に足が着く前に、彼女の超能力の影が彼女の体を持ち上げて、安全に地面に降りた。熊はその隙をついて攻撃するということはせずに、彼女の準備が整うのを待っていた。刃物の先をプラプラと上下に揺らしていた。


「ふっ。待たせたみたいだね。わざわざ、隙をつかないってことは真剣勝負で勝ちたいってことなのかな?」


 熊は彼女の言葉に反応して、再び刃先を彼女に向けた。そこに言葉はないものの、竜花は自分の言葉を肯定していると解釈して、戦闘態勢をとった。熊もそれを理解しているのか、刃物をその場で一度だけ左右に往復させるように振るった。それから、相手は竜花に突撃してきた。竜花は自身の袖から、包帯を何本か伸ばした。包帯の影を操り、包帯自身の動きを変化させた。熊は進むのに邪魔な包帯を切り裂いて、彼女に接近する。しかし、熊は包丁が届く位置まで進む前に体が動かなくなった。相手の体の動きを止めていたのは、包丁で切ったはずの包帯だ。相手にはなぜそうなっているかを考える思考はないため、何も見ていないが、地面を見れば、それは簡単にわかることだろう。包帯は切られたはずなのに、その影はいまだに包帯と繋がっているのだ。彼女と影がつながっていれば、彼女は操ることができる。意思がないものならそれを操るのは難しいことではなかった。


 熊はその包帯をほどくために、包丁を振るうが、ぬいぐるみの手では包帯までは届かない。竜花が相手の届かない位置に包帯を巻いているのだから、当然だろう。しかし、熊は包丁を手から離した。手放された包丁は当然、地面にひかれて落ちる。しかし、すぐに落下をやめて、その場にどどまったかと思えば、包丁は一人でに宙に浮いて、拘束する包帯を切り裂いた。包帯を切った包丁はぬいぐるみの手に戻っていく。相手は最初から包丁を似て持っていたわけではなく、包丁を手の位置に浮かせて持っているようにしていたのだ。そもそも、熊のデフォルメされたぬいぐるみには五指の指などなく、正面から見れば、円の形をした手なのだ。その手で包丁を握ることなどできないだろう。

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