高校生活 1
朝早く学校に到着した。早く出たのだから早く着くのは当然なのだが、校門は既に開いていた。教師は既に来ているのだろう。さらにこの時間に来ているのは彼だけではないようだが、その人たちは部活動をしている人だろう。彼も持っている学生鞄以外にも何か大きな荷物を持っていた。彼は特に部活動などはしていないため、校舎の中に入り、自分の教室に向かう。彼らは自身に既に幻の魔法をかけてるため、皆からは彼は一人にしか見えないし、彼女たちと喋ろうとも誰もそれに気が付くことはない。既に外出するときは彼女たちが自らの判断でその魔法を使ってくれるようになっていた。
「ここがガッコウかぁ。なんか、あっちの世界のホテルみたいだね」
フレイズがそう言うのも無理はないだろう。同じ部屋がいくつもあり、それが廊下にそろって並んでいる。まだ、人は少ない物の人も行きかっている。異世界の大都市にある宿泊施設はこの学校のような構造なのだ。さすがに廊下側には窓はないことの方が多いが、彼女たちと宿泊した場所では廊下側にも廊下側からは見えないように加工してるガラスがはまっていたのだ。彼女たちに言わせれば、異世界のホテルと似ていると言ってもおかしくないだろう。これから人が増えて、各教室に沢山の人が入れば、感想も変わるかもしれないが、人が少ないとそう見えてしまうのかもしれない。
妖精たちは彼から離れないように、彼の体に触れながら移動する。フレイズも彼の肩のところを服をきゅっと握って辺りを興味深そうに見回している。ファスは彼の頭の上で、うつぶせで寝転がりながら肘をついて手の甲に顎を乗せている。ミストは彼の首元に座りながら、彼の髪で自分の体を少し隠しながら正面を見ていた。彼らとすれ違う人は彼のことを一瞬ちらと見ていて、そのあとにひそひそと話しているが、彼は特に気にしていない。妖精たちがいる前から彼は、そう言ったことが日常茶飯事だった。
彼は最初こそそれを気にしていた。自分が嫌われているのだと、変だと噂されていると思っていたのだが、いつしかそれにも慣れてしまい、気にしなくなったのだ。異世界に行く前はそれでも気になるときはあったが、今は一人ぼっちと言うわけでもない。もはや、周りのことが視界に入ることもなかった。
彼自身は知る由もないが、彼の容姿は美少女である。童顔で低身長。そして、その可愛さはすぐに学校に広まることになる。それこそ、彼を始めてみる人は何度も振り返ってみるほどだ。彼が男であることを信じていない人すらいる。そして、その美少女ぶりをみて、彼に話しかけるのは緊張してしまうということで、彼はすれ違う人にひそひそと話されることになってしまったのだ。ひそひそと話している内容は、彼が可愛いとか、頭撫でたいとか、ハグしたいとか、そう言ったものである。何も嫌われているわけではないのだ。だが、彼から見れば、嫌われていると考えていても仕方のないことかもしれない。
何人かとすれ違い、彼は自分の教室に入った。窓側の一番後ろの席。その席は、席替えで譲ってもらった席だ。崇められすぎて、友達のいない彼は特にどこの咳が良いという物はないのだが、その席にいてほしいと言われれば、それを拒否することもないなと思い、その席に座っている。特に教師も何か言うこともないので、彼も気にしていない。
自分の机に鞄を置いて、窓の外を見る。校庭や他の建物が見える。この学校は私立の学校で、小学校、中学校、高校、大学が同じ敷地にあり、保育園まである。そして、小学校から大学までエスカレータ式で進級できるが、学校の変わり目、つまりは小学高から中学校、中学校から高校、高校から大学に進級するときはテストを受けて、それなりの成績を取らなくてはいけない。敷地自体は中々、広く学校四棟以外にも公園のようなスポットや、食堂が二つ、それ以外にも研究棟や運動場などもあるかなり大きい学校だろう。
彼は窓の外を見ながら、高校の校庭を見下ろしていた。そこでは部活の終わりなのか、校庭を均していた。そして、彼がそこで窓の外を見ていると、教室に彼以外のせいとも入ってくる。
「おはようございます。今江さん」
「おはようございます!」
「ああ、朝からこんな光景をみられるなんて……」
「さすがに、大げさ……」
教室に入ってくる人の反応は様々だが、一様に彼に目を奪われているようだ。中には指を組んで天に祈っているような人もいる。彼にとってはそれは既に慣れた物だった。しかし、彼らが見ているのは魔法でできている幻だ。窓の外を見ているだけの幻影。ただ、おはようと挨拶されれば、それに返すくらいはしていた。
そうして、妖精たちも交えた高校生活が始まろうとしていた。