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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
39 それぞれの決闘
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それぞれの決闘 1

 菜乃花の目の前には白く光る人型がいる。それは確実に菜乃花の敵だった。彼女は攻撃を向けられたが、回避していた。彼女の近くには琥珀もいて、二対一の状況だ。光の人型は、その手を無制限に伸ばして、彼女に攻撃を続ける。その攻撃は苛烈で、琥珀も攻撃するタイミングがないほどだった。命の力を消費しても、敵の光の手をかき消すことは出来ず、琥珀の力が特別、効果のあるものではないことは確認できていた。


 菜乃花に関しては琥珀以上に攻撃を受けているため、血を使っても攻撃する隙は無く、防戦一方だった。


(琥珀の力が全く効果がないとは思わなかったけど、少なくとも攻撃が分散してるのは間違いなくこちらには有利だよね)


 しかし、琥珀が攻撃する隙もほどんどないとなると、二人は消耗するしかない。彼女は無理やりにでも攻撃する隙を作り出そうと、光の人型に近づきながら、血でも防御を少しだけ攻撃に回すことにした。光の手が彼女の胴体に延びてきて、彼女はそれをくるりと体を回転させて回避する。しかし、その時に彼女の腕が光の手に触れてしまった。触れた部分に熱と痛みを感じた。しかし、それで怯むことはなく、彼女は血を槍のように形成して、先端を敵に向かって飛ばした。光の人型はそれを確実に認識しているはずだったが、回避する素振りはなく、血の槍は敵の体を貫いた。しかし、貫いた槍は敵の体をすり抜けた。敵の体には開いていた穴はすぐに塞がり、その血の槍ではダメージを与えられていないということはすぐに理解できただろう。そして、その光景に彼女の動きが止まる。血は彼女の周りにも残っているが、それを操る彼女の動きは止まってしまっている。そんな彼女に光の手が彼女に向かって伸ばされた。回避も防御も間に合わない。


「ぼうっとするな」


 彼女を突き飛ばして、持っている刀で白い手を切り払う。しかし、彼の振るう刀に沿うようにして刀を回避して、彼の腕を掴んで振り回す。やがて、彼を地面に叩きつけて、その手が離れた。ボロボロの彼の体を白い光が包む。光が無くなると彼女はすっとたちがあり何もなかったかのように戦いに戻る。その間に菜乃花が集中攻撃を受けていたが、回避と防御に戦線して何とか回避していた。


「琥珀、ごめんなさい」


「謝る必要はない。それよりも、この状況を打開する作戦を考えてくれ。わしの攻撃はほとんど効果がないようだからな」


 彼は人は幽霊などの肉体に魂や意思が宿っている相手には力押しで勝つことが出来るが、敵が生物かどうかも怪しく、その体には肉体がないと言えるだろう。彼の知っている存在ではないのだ。彼はそれでも、菜乃花のために戦おうとしている。確かに彼女は琥珀よりは弱いだろう。それは彼女を蜥蜴人間三体から守った時と変わらない。しかし、今の彼女は戦うことを諦めているわけではない。それが、琥珀が菜乃花を信じさせていた。


 だが、彼の期待とは裏腹に、彼女の頭の中には光の人型を突破するための作戦は全く思いついていない。血を使った攻撃も効果がないようで、琥珀の魂を使った攻撃も効果は見た目には認めることが出来ない。お互いに持っている特別な力が全く効果がないというのならば、作戦も何もない。本来なら逃げることくらいしかできないはずなのだ。しかし、二人は逃げるわけには行かなかった。


 彼女が策を考えていると、敵の手の数が少なくなった。琥珀はそれを隙と見て、前に出た。


「琥珀、前に出すぎです!」


 菜乃花の言葉は琥珀の耳に届いていたが、彼は既に前に出てしまっていて、彼は後ろに下がることは出来ない。それに何か危険があるとすれば、それは回復手段を持っている自分を囮にするべきだとも考えていた。


 菜乃花の読み通り、敵は光の手を自らの前に出現させて、合唱するような手の向きにして、その間に光の球体が出現していた。敵の手の間にある光の球体から光の波動のような物が辺りに拡散していた。菜乃花はそれをみてから回避できるだけの距離を取っていたが、前に出ていた琥珀は光を見てからの回避は間に合わなかった。彼は魂の力を使って、その波動を防御した。しかし、波動は絶え間なく放出されいていて、やがて人型の周りに霧のような薄い白に包まれる。琥珀の姿も敵の姿も見えるものの、その輪郭は白い波動によってぼやけている。琥珀が波動に耐えている姿が、彼女からも見えた。しかし、波動の中に入って彼を助けることは出来ない。二人ともがダウンしてしまえば、死んでいなくとも彼女たちの負けだ。彼を助けようとして二人とも気絶しましたなんて笑い話にもならないだろう。


 そして、数十秒続いていた波動はやがて収まった。

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