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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
38 終わるために始まる混沌
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終わるために始まる混沌 4

 猩花の元に駆けつけようとしていた白希たち。フレイズが白希よりも少しだけ前を飛んでいた。彼は蓮花より先に商店街にテレポートしてきたのだ。しかし、その場所に猩花がいないことを確認すると、フレイズが再び火の魔法を使った猩花の位置を感じていた。先ほどよりもより正確に位置を知ることができ、その場所がすぐ近くだとわかると、フレイズは白希より先にその方向に飛んでいく。白希がそれに気が付いて、彼女を追おうとしたのだが、一瞬だけ視界が何かに奪われた。視界を奪われた後、更に浮遊感を感じて、浮遊感が落ち着くと、足に地面を感じた。固い地面だ。土や自然のものではないのがわかる。彼の視界に映ったのは、どこかの部屋だ。辺りを見回せば、それが部屋と言うには広すぎるということを理解する。体育館のような作りで天井には鉄骨が組んであるのが見えた。そこに大きな照明がついている。その全てが付いていて、彼らを明るく照らしていた。


「ここは……?」


 彼がそう呟きながら、妖精たちのことを気にしていた。彼の近くにいるのはファスとプロイアだけだった。フレイズはこの転移に巻き込まれることはなかったと考えたい。彼女だけは自分の体に触れていなかったため、他の場所に飛ばされた可能性もあるが、彼女はピンチだったり、死んでしまったりしているわけではないということはわかるので、取り乱すことはないものの彼女のことは心配だ。転移に巻き込まれずに、猩花の元まで行くことが出来ていれば、それが一番いいとは思うが、現状ではそれを確認する方法はない。


「いきなり、こんな場所に来させてすまないね」


 彼の前にいつの間にか、初老の男が立っていた。黒い髪に白髪が混じった男性。彼がここまで連れてきたのは考えずとも、分かることだ。男性の目は白希を見つめていた。その視線は敵対しているとは思えない程、優しいというか少なくとも警戒していたり、攻撃的であったりと言うことはなかった。


「これは、私たちの幕引きのために必要なことでね。ここで料理しても、敗北しても私たちの運命はそこで終わりなんだ」


 白希には彼の言っていることの大部分はわからないが、これが彼らにとって最後の戦いだということだけは理解できた。勝っても負けてもと言うことは勝敗に関わらず、彼らのやってきたことが終わるというわけだ。その結果が、自分たちにとっていいものか悪いものかなんてことはわからない。しかし、彼に敵対心がないことが、とても不思議だった。黒髪に白髪が混じっているという見た目もあり、自身の死を既に受け入れているかのようにも見える。既に自身の生を諦めているかのような話し方。彼とこれから戦おうとも思えない。


「だが、私の意思とは関係なく、日々は進んでいく。しかし、その終わりもすぐそこだ」


 彼の後ろから一匹の猿が現れた。確かに猿だが、サーカスのピエロを思い出すような衣装を着ている。顔だけは猿だが、カラフルな服を着ている。見た目には間抜けだが、彼はその手に持っているものを見てしまった。それは斧だった。それも木こりをするような斧ではなく、明らかに人を傷つけるための武器だ。


「すまない。勝敗は関係ないが、戦ってもらうよ。この猿たちが相手だ」


 彼は猿が複数いると言っているようだが、彼の目には一匹しか見えてないない。これから増えるのか、一匹倒すともう一匹出てくるのか、それはわからないが、とにかく一匹倒しても油断することは出来ないと言ことだろう。


「それでは、頼むよ。猿たち」


 男性の声掛けと共に、一匹だけの猿が動き出す。キィと鳴きながら、猿が白希に飛び掛かる。



 竜花は結局は部室で、人が戻ってくるのを待つことにして、再び漫画を読み始めていた。しかし、ページを捲る手は全く進まず、目は文字を追っているはずなのに、その内容が頭に入って来ず、そのページの最初から読むというのを繰り返していた。今すぐにでも白希たちに加勢に言った方が良いというのはわかっているが、どうしても腰も上がらず、足も動かない。何が自分にそうさせているのか彼女にもわからない。それでもその場所から動こうと思えないのだ。


 彼女は漫画を閉じて、天井を見た。心配であるはずなのに体が動かないのはどうしてなのかと考えてしまう。そんなときに、彼女がいる部室のドアがノックされた。部室の戸を叩く人なんていない。朝野姉妹のファンの人たちもここまで来ることは全くなく、彼女たちの友人もここまで来ることもない。つまりは、わざわざドアを叩いて中に入ってこようとする人は一人もいない、と言うことだ。

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