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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
38 終わるために始まる混沌
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終わるために始まる混沌 2

 白希が猩花の元に移動しているとき、菜乃花琥珀を連れては森の中にいた。森の中と言っても、まだ彼女のいる位置からは道路が見えるような位置だ。彼女が森に入った理由は、エイリアンとの戦闘をしたところを再度調査するためだった。再び、エイリアンが出ないとは限らない。確かに機械生命体を倒して達成感を感じていたが、あれが本当にエイリアンの頭だったのかどうかもわからない。それも調査するために、彼女はエイリアンと戦った場所に向かっていた。森の中に入っていくと、戦闘の跡が残っている場所に来た。ここには既に人はおらず、あの機械生命体が起こしたことは全て忘れ去られているのか、操られていた一般人の記憶はほとんど残っていなかったようだ。その時のことを思いだそうとすると、何をしていたのか思い出せないという状態らしく、そのことが話題に上がっていた。彼女の友人の数名もその症状の自覚があるようだったが、、友人たちは自身の記憶には無頓着で、気にしていないようだった。それはそれで心配になるが、変に気にしすぎることがないならいいかとも思った。


 そんなことを考えながら森の中に入っていく。戦闘のせいで、木々がお礼たり、敵の踏んだ地面が機械生命体の足跡をかたどっていたり、するがそこまで来ても人は一人もいなかった。そして、最初に円葉があるところまで来た。そこにはないかあった。いや、いた、と言うべきなのかもしれない。そこにいたのは白い人型で、それに浮遊していた。光で体が構成されているような見た目で、その輪郭はゆらゆらと揺れて、体と外の境界線ははっきりしない。そして、それは菜乃花が来たことに気が付いた。その顔と思しき場所には黒い楕円が二つ付いていた。その下には、一本の黒い線が引いてあった。楕円の下についているそれは口に見えた。


 人型のそれは彼女の方へと振り返り、確実にその視界に彼女を納めていた。だが、不思議と目が合っている感覚はない。全体を見ているような様子だ。人型の口の端が上がり、笑っているかのような顔をした。そして、人型は自身の手を彼女の方へと向けた。次の瞬間、その手が彼女の向かって伸びていく。彼女はそれを回避したが、次々と彼女を狙って光の手が伸びる。彼女はそれを回避しているが、徐々に敵の攻撃の激しさが増していき、彼女も回避がきつくなる。超能力を使わなければ、大した身体能力もない彼女は、すぐに超能力を使いヴァンパイアへと変身した。しかし、その隙を光の手は逃さず、彼女に攻撃が集中する。彼女はそれを認識する前に、血を自身の周りに展開した。菜乃花と光の人型の行動はほぼ同時だ。


 光の手が彼女から離れていく。得物の様子を見るために一度手を離したように見える。手の置くにはマントを付けて、血を操る彼女の姿があった。彼女の前には琥珀が刀を持って、立っている。二人で大量の光の手から身を守っていたのだろう。


「ふふ、光の体なんて血を出なさそうだけど、その光ごと、私のモノにしちゃいましょう……!」


 ヴァンパイアになり、機械生命体との戦闘で消耗した血も補給していないため、彼女は渇きを感じていた。前のように暴走することはないだろうが、渇きが強いほど、彼女の超能力は強化される。今の彼女は機械生命体と戦った時よりもその力が増していた。




 白希たちが猩花の元に向かう、少し前。猩花は遊んでいた友達と別れて、部室に戻ろうとしていた。猩花は商店街から出て、学校の方へと移動しようとしていた。しかし、猩花は周りをみると、人がいないことに気が付いた。まだ夕方のはずの時間帯。人と一人もすれ違わないなんてことはまずない時間帯だ。ましてや、学校に行き来するための道で、下校する学生とすれ違わないはずがないのだ。しかし、今は猩花以外に人がいない。


 猩花は、その感覚を知っていた。彼女はオカルトと戦ってきた一人だ。この人気が無くなり、人に不安を植え付けるような状況になるというのは、オカルトの常套手段だ。


 彼女の正面に一人の女性がいた。ワンピースを着ていて、帽子はつばが一周している帽子だ。そのつばに隠れて、顔は見えない。微かに何か言っているようだが、それを猩花は聞き取れない。そして、彼女はワンピースの女性がオカルトかもしれないと思い、警戒する。小太郎をすぐにでも大きくできるように準備する。ワンピースの女性は、彼女に気が付いたのか、気が付いていたのか。彼女に近づく前に足を止める。しかし、確実に猩花とすれ違う位置で止まっていた。相手が止まったのを見て、猩花も足を止めた。


「わたしに、何か用ですか?」


「……ぽ、……ぽぽ、ぽぽぽぽ」


 ワンピースの女性が発していた言葉は言葉ではなかった。ただの音だ。そして、音を聞いて、猩花は竜花お姉ちゃんの言っていたことを思いだしていた。オカルトの中でもインターネットで広がった怪異。独特な音を発して、目を合わせた子供を連れ去る。今はどこにでも出現する、高身長の女性のオカルトだ。名前は、八尺様。


 八尺様が顔を上げると同時に、猩花は目を合わせてしまった。

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