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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
37 朝野姉妹と夕来
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朝野姉妹と夕来 5

 学校で過ごしている間は、授業の時間の方が多いため、特に変わったことはなかった。注目されていたのは、白希が一緒だったからで、彼が近くにいなければ、彼女に注目する人はほとんどいない。しかし、彼と一緒に行動する前よりは確実に、自分に向けられている視線は多いと彼女は感じていた。自意識過剰だと思うかもしれないが、彼女が感じている視線は間違いなく多くなっていた。


 いつもよりも明らかに多い視線を感じながら、昼休みになった。白希が立ち上がり、夕来の方を見た。彼が食堂に行くのは知っているので、彼に付いて行くことにした。教室を出ると、蓮花と廊下で会ったため、一緒に食堂に行くことに。さらに視線に晒されることになり、彼女は更に縮こまる。目立つのは好きではないため、自分が注目を引いているわけではないとわかっていても、大量の視線を受けるのは、あまり気持ちの良いものではなかった。


「そう言えば、放課後は夕来さんも部室に来てくれるのですよね?」


 昼食を取りながら、蓮花がそんなことを言った。今朝の様子だと、彼女を朝野姉妹に紹介するために連れてきたような風だったため、これ以降は用事がないと顔を出さないのかもしれないと、蓮花は考えた。だが、彼女としては夕来とは仲良くなりたいし、おそらく猩花も彼女に会いたいだろう。猩花を引き合いに出して彼女を連れていこうなんてことは思っていないが、蓮花はどうにかして夕来を部室に連れていこうと思っていた。


「私がいても迷惑じゃないですか?」


「迷惑なはずがありません。他の者も貴方が迷惑だという人はおりませんから、もし来てくれるというでしたら、私は嬉しいですよ」


「そ、そうですか。なら、行きたいです」


「わかりました。白希さん、今日は私も一緒に行きますから、待っていてくださいね」


 白希は妖精たちと話していたのだが、彼女にそう言われて彼女の方を向いてコクリと頷いた。夕来は、放課後も視線に晒されるのだと思うと、少し心が重かった。


 昼食も終えて、放課後。白希は夕来の席の近くまで来て、彼女の支度を待っていた。ミストはずっと、彼女の胸ポケットの中にいて、白希の元には一度も移動していない。白希は少しだけ寂しいものの、それ以上にミストが楽しそうなのが、彼にとっては幸せだった。夕来の支度を待っていると、蓮花が教室の外にいた。扉の所から二人を呼んでいる。二人はそれに気が付いて、夕来は支度を急いで終わらせて、彼女の下まで向かう。


「それじゃ、行きましょう


 蓮花のテンションがいつもより多少高いのが、白希は気になっていたが、どう考えても夕来がいるからだった。今朝は夕来も蓮花のことを好きではないと感じていたはずなのだが、明らかに自分のことを好ましいと思ってくれているのが、分かってしまうと、彼女のことを好ましく思ってしまう。それが悪いことではないと、分かりながらも彼女からの好意が無ければ、彼女のことを好きにならなかったであろう自分の心が少しだけ醜く感じてしまう。それを誰かに話そうとも思うわないが、二人に話したとしても、気にすることではないということだろう。彼女はそれを気にしないようにするのは難しいが、考えすぎないようにすることにした。


 そして、視線に晒されていた校舎から出て、三人は人気のない方へと歩いていく。生徒たちの視線もなくなり、夕来の猫背も治っていく。リラックスして、二人と話すことが出来ていた。そうして話してる間に部室に着いた。部室の中には竜花だけがいた。竜花は入ってきた三人をちらとみて、おかえりと言うだけで、すぐに手元にある漫画に目を落としていた。


「竜花、猩花はまだ来てないのですか?」


「猩花は友達と遊びに商店街に行くってさ」


 竜花は漫画に集中しているせいか、いつもの格好つけた話し方ではなかった。蓮花はそうですか、とだけ返事をして、荷物を自分のスペースの定位置に置いた。白希も適当に荷物を床に置いて、竜花のスペースにあるテーブルの近くに腰を下ろした。竜花はそれでも、彼に気を向けることもなく漫画に没頭している。白希は彼女が読んでいる漫画の表紙をちらと見るだけで、特に何も言わなかった。それから、白希は妖精たちと話し始めた。


 夕来は特にすることもなかったが、蓮花に手招きをされて、彼女のスペースにあるテーブルとそこにある椅子に座らされた。


「このスペースのテーブルはいつでも好きなように使って下さい」


 そう言われても、何をすればいいのか、彼女は特にわからず、手持ち無沙汰で、椅子に腰かけている。蓮花が彼女の隣に椅子を置いて、そこに座った。それからノートと教科書を広げて勉強を始めた。夕来はそれを見て、彼女に習ってノートを教科書を広げて、勉強を始めた。

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