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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
37 朝野姉妹と夕来
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朝野姉妹と夕来 3

「妖精さんの新しい契約者とたった今聞いたのですが、まさか貴方だとは思いませんでしたね。畑夕来さん」


 夕来を最初に出迎えたのは、蓮花だった。蓮花は悪霊との戦闘の時に共闘したことはあるが、夕来は蓮花のことが気に食わないというような発言をしたのは、彼女も蓮花忘れていない。夕来は、蓮花が自分のことをよく思っていないと考えているが、蓮花は反対に彼女と話してみたいと考えていた。悪霊と戦った時に、彼女は自分を褒めるわけではなく、冷静に自分の弱い部分を注意してくれた。そのお陰だけではないが、彼女の言葉が蓮花の中にあるのは間違いない。


「……実は、ずっと話したいと思っていたのです」


 夕来は彼女の罵倒でなくとも、冷たい対応をされることを覚悟した。その覚悟をすると、どうしても体が緊張して固まってしまう。蓮花がゆっくり近づいてくる。蓮花は夕来の前で立ち止まった。


「あの時の言葉は私は忘れてません。ずっと覚えています。だから、貴方のお陰で、あのときよりは強くなりました。だから、お礼を言わせてください。ありがとうございました」


 蓮花は夕来が考えていたようなことは一つも言わなかった。それどころか、今、彼女は自分に向けて手を出している。握手を求めているのは、普段なら理解できるだろうが、今の彼女は予想外のことが起きていて、彼女の手を握ることが出来ない。蓮花は自ら彼女の手を取り、きゅっと握る。彼女の手は優しかった。


「できれば、私とも友達になってくれると嬉しいです」


 彼女にしては珍しく、照れてはにかんだ笑顔だった。夕来はようやく、意識が戻ってきた。


「あ、はい。その、怒って、ないんですか?」


 意識が戻ってきた彼女は、素直にそんなことを聞いてしまった。蓮花は、首を傾げて、疑問符を頭の上に浮かべていたようだが、すぐに彼女が何について訊いているのか理解した。


「怒っていませんよ。怒るどころか、感謝しているのです。きっと、貴方に怒られなければ、きっと、ずっとあのままで、サポートばかりしていればいいと思っていました。でも、私の超能力は他にも生かすことが出来ると、貴方に気づかされました。おかげで、今は攻撃も防御もサポートもできるようになりました。まぁ、それでも貴女には届かないと思っています。だから、ここで努力を止めるわけではありませんけどね」


 蓮花にとっては同世代であるにも関わらず、あれだけの能力を持って、一般人であるはずの彼女が悪霊と渡り合っていた光景は衝撃だった。自分は超能力があるのにも関わらず、あそこまでできる努力をしていないと思わされたのだ。そして、それは彼女への憧れでもある。彼女がずっと照れたようにしているのは、憧れの人が目の目にいるからだった。夕来にはそこまでを理解する力は無く、握手や感謝をされる理由がわからず、前とは違う理由で彼女のことが苦手になってしまった。


 蓮花が他の姉妹を紹介していく。紹介しようとすると、菜乃花が彼女に近づいてきた。


「長女の、朝野菜乃花です。これから、宜しくお願いしますね」


 彼女は好印象の笑顔を作り、彼女に挨拶した。菜乃花はまだ彼女を信頼したわけではないため、他人行儀な挨拶をして、自分のスペースに戻っていく。


「ボクは竜花。影から人を守る守護者の一人だ」


 竜花は自分と同じ超能力を持つ小説の中の登場人物のセリフを真似て、彼女に手を差し出した。夕来は彼女が中二病だとすぐに理解した。彼女が差し出す手を握り、挨拶をした。夕来が竜花の手を離すと、竜花は彼女はあまり乗って来ない人なのかもしれないと思い、自分のスペースに戻っていった。


「私の妹がごめんなさい。こういうときは普通に挨拶しなさいとは言っているのですけどね」


「あ、いや、大丈夫です」


 蓮花のフォローも夕来は適当に流して、赤の他人のように接していた。そうしている間に、猩花が夕来に近づいてきた。夕来は彼女と視線を合わせるようにして、しゃがんだ。


「猩花です。お姉ちゃんも魔法を使えるんですか?」


「夕来です。私は水の魔法を使えます」


「わたしと同じですね! よろしくおねがいします!」


「よろしくお願いします」


 猩花は夕来の丁寧な対応で、彼女を好ましい人だと感じたようで、彼女の手を引いて、自分のスペースに連れて行った。そして、ぬいぐるみを紹介する。一人一人丁寧に紹介して、夕来は一人一人に挨拶をしていく。それが更に彼女に懐かれることとなる。


「それで、この子が小太郎さん……」


 最後に紹介したぬいぐるみは熊のぬいぐるみで、ぬいぐるみの中でも大きいぬいぐるみだ。だが、小太郎と言うそのぬいぐるみは、ボロボロで見た目で中身も多少抜けているのがわかった。それでも大切にしているもののようで、糸で穴を塞いているのがわかった。


「猩花ちゃん。その、小太郎さんを直せたら、直したい?」


 彼女の言葉に猩花の目が大きく見開いた。

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