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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
37 朝野姉妹と夕来
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朝野姉妹と夕来 2

 朝食を終えて、夕来が全員の食器を下げようとしたところを白希に止められた。彼は彼女が片付ける前に、全ての皿を下げて洗っていた。彼にそうされると、夕来は特にやることが無くなってしまった。


「夕来。先に支度しておいていいよ」


 彼女は彼にそう言われて、リビングから出て学校へ行くために支度を始めた。料理をするのに、エプロンはしているが、汚れるのが嫌で制服では料理はしていなかった。少しラフな私服から制服へと着替えた。それから、スクールバッグの中身を確認する。彼女のバッグは森の放置されてしまったものを回収はして、土などを洗い流したが、多少汚れは残ってしまっていた。しかし、目立つ者でもなく、彼女はその汚れはそのままにすることにしたのだ。それに、その汚れは彼女にとっては記念のような物でもある。バッグを飛ばされなかったら、メリーさんに対抗するための武器を持っていたことになる。となれば、魔法は使わなかっただろうし、そうなるとミストに再会することもなかっただろう。そう思えば、バッグの汚れも悪くないなと思う彼女であった。


 バッグの中身は授業の道具だけではなく、相変わらず、改造スタンガンなどはバッグの中に忍ばせている。それを白希には教えていないが、ミストは一度それを見ているため白希が知っていてもおかしくはないだろう。しかし、彼女は武器を持つなと言っても彼女はそれだけは従わないだろう。自衛するためでもあるし、今はミストたちを守るための道具でもある。白希と肩を並べて戦えずとも、その力でサポートするくらいはできるはずだ。


 彼女はバッグの中身を確認すると、リビングに降りた。リビングに行くと既に、白希の準備は終わっているようで、妖精たちと話していた。


「……じゃあ、行こうか」


 皆が夕来に気が付くと、学校に行くために外に出る。同じ家から一緒に出るというのは、恋人のようだと考えてしまうが、彼にそう言うつもりはないと、夕来は自分に言い聞かせる。好きな人の近くにいるだけで、彼女の思考はいつものように冷静さを保つことが出来なかった。投降するときは、二人並んで登校するわけではなく、白希の後ろに夕来が付いて行く。ミストが夕来の制服の胸ポケットにいる。彼女の斬られた制服は家に置いてあり、念の為と買った予備の制服が役に立っていた。


 白希は後ろにいる夕来に多少、意識をやりながらも妖精たちと話しながら道を行く。その時に、このまま朝野姉妹のいるであろう部室棟に向かおうと思った。


「あ、そうだ。僕と一緒に戦ってる人を紹介したいんだけど、いいかな」


「あ、はい。朝野姉妹ですか?」


「あれ、知ってる?」


「いえ、最近よく一緒にいるのを見かけていましたから」


 そう言われると確かにその通りだと思った。そして、彼女が嫉妬しているのかと思ったが、その表情にはそう言った様子は見られない。笑顔と言うわけでも、悲しんでいるわけでも、まして怒っているわけでもないようだ。事実を話しているだけと言った様子。


「そっか。えっと、会ったことは?」


「一度だけ、次女には会いました。確か、朝野蓮花さんでしたっけ」


 彼女はとぼけているが、朝野姉妹全員の名前やある程度の人柄を知っている。いや、知ってしまっているというのが正しいだろう。王子様を観察していれば、必ず近くにいたのだから、当然知ってしまうわけだ。しかし、それを彼に知られるわけにはいかないので、彼女はそれを隠すことしかできない。


「うん、そう。会ってほしいんだけど、いいかな?」


「はい。もちろん、大丈夫ですよ。し、しらきさんの、友達なら知っておいた方が良いでしょうし……」


 彼の名前を呼ぶときにどうしても、喉が詰まって言葉が出なくなるが、何とか彼の名前を呼んでいた。彼女の頬が赤くなっているのを見てしまったが、白希はそれを見ていないことにして、彼女の言葉に返事を返す。


 朝野姉妹の部室棟の部屋に行く時間はある。学校の敷地に入ると、校舎を通り過ぎて、朝野姉妹のいるであろう部室棟に移動する。夕来は特に多少、寂れた部室棟を見ても驚くこともなく、彼に付いて行く。白希は特にそのことに疑問も抱かず、彼女を連れていく。何度も何度も見ている部室棟だ。彼女は一人でもその場所に来ることが出来るだろう。


「少し待ってて」


 白希は二階の奥の扉の前で、彼女に待つように言って中に入っていった。彼はすぐに出てきて、彼女に手招きして入るように言った。


 夕来は部室棟の外からしか、彼女たちの部室を見たことはない。そのため、扉を潜り中に入り、中を見て、さすがの彼女も驚いた。見た目とは裏腹に扉の中の部屋が大きかったからだ。


「ようこそ、って貴女は、畑夕来さんでしたよね?」


 彼女を最初に出迎えたのは、蓮花だった。

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