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征服者 8

 凄まじい魔気が暴れている。しかし、それでも砲台は数機しか落とせていない。しかし、彼らの脅威度に反応して、全ての砲台が彼らを狙っている。何度も射撃しているにも関わらず、彼らには銃弾は届かない。全ての砲台を引きつけているということは、菜乃花には一機も付いて行かなかったということになる。


 菜乃花は彼のその状態を見て、未だに彼の戦闘能力が未知数だと思った。しかし、今は彼の戦闘力よりも敵の本体を倒すことを優先するべきだろう。菜乃花が敵の前に立った。腹に棒が突き刺さったままだが、それでも相手は簡単に体を動かしていた。


「姉さん」


 彼女の隣に蓮花がテレポートして出現した。竜花は敵に移動させた影を操るのに精いっぱいで、彼女たちに近づくことは出来ていない。菜乃花は蓮花の頭を撫でた。


「よくここまで持ちこたえたね。ここからは姉妹の力を見せつけるから。まだ、戦える?」


 菜乃花が蓮花に手を差し出した。蓮花は思考する間もなく、その手を取る。しかし、それでも追い詰められているのは、朝野姉妹の方だ。猩花は既にスタミナ切れで、竜花も蓮花もぎりぎりの体力で戦っている。菜乃花も長時間、戦えるような状態ではない。それでも、彼女の周りの血はほぼ減っていない。赤い液体の球が未だに彼女の周りにちりばめられている。


「蓮花ちゃん。もう少し無茶できる?」


「はい! 残りの全力を駆けます!」


「そう。じゃあ、この血を敵の近くにテレポートさせて」


 彼女の周りにあった真っ赤な水滴は、彼女の掌に集まり、一つになった。蓮花がそれに触れて、テレポートさせる。言われた通り、移動先は敵の近く。その血は、敵の腹に突き刺さっている棒に接触した。そこから棒を飲み込んでいく。棒を伝い、彼女の血は敵の体内へと潜っていく。敵はそれをどうすることもできない。棒を引き抜くことは出来ないのだから、彼女の血の侵入を拒むことはできないのだ。しかし、血の主を先に倒せば、何が体内に入ろうとも問題ない。敵の掌が彼女に向けられた。そこには光が収束しているのが見えた。菜乃花の肌に汗が伝う。その光を食らえば、一瞬で消し飛ぶのは一度放たれた攻撃を見たため、すぐに理解できていた。しかし、それでも回避を選択することはなかった。彼女は敵の体内に送った血を操り、敵の腕を無理やり動かした。かなりの抵抗感はあるものの血を流して徐々に敵の手が空に向けられていく。古びた木製の扉が開くような、ギギギと言う音を鳴らしながら、敵の掌は空に向けられた。その瞬間、光の柱が地上から延びるように放たれた。空気を振るわせて、その威力を周りに知らせる。


「そろそろ、終わりです。いい加減、倒れてください……!」


 彼女の操る血が敵の機械の体の中に流れていく。その血は硬化して、敵の体内で棘になる。血を送られるたびに血の棘は大きくなり、敵の体内を傷つけていく。敵の体内から何かが切れる音や電気の走る音が聞こえてくる。菜乃花の血の感触で、敵の体内の線や機械を壊しているのがわかった。やがて、マシンの関節から血の棘が飛び出てきていた。鮮やかな血の色をした結晶が敵の体の一部を包み始めていた。手も足も腰の辺りからも血の結晶が現れて、相手の体は徐々に動かなくなっていく。敵の体が完全に動かなくなる前に、竜花の影が敵の体から消えた。それと同時に突き刺さっていた棒が腹部から抜けて、地面に落ちた。その後に敵は動かなくなった。手を延ばすことも前に足を運ぶこともできない。しかし、敵の目だけは確実に自分を見ていると菜乃花は思った。


「グ、グググ」


 ほぼノイズで何かを言っていることしかわからない。


「ゴ、ゴグ」


 菜乃花は、いや、菜乃花だけではなく、敵と戦っていた朝野姉妹全員が何かを見落としているような感覚があった。このまま勝利することが出来るとは思えない。何か

、まだ秘策があるような気がしていた。奥の手と言うか、捨て身の攻撃と言うか、そう言ったものがないとは思えないのだ。ここまでしぶとい奴が、すぐに倒れてくれるとは思えなかった。


「菜乃花、やっと倒せたみたいだね」


 白希を狙っていた法大は全て地上に落ちて、機能しなくなっていた。そのため、彼もその場に駆け付けることが出来たのだ。


「でも、何か、あるかもしれない気がしています。この程度で倒せたと言えるのか」


 彼女の血が敵に触れていたからこそ、彼女はいち早くそれに気が付くことができた。


「あれの温度が上がっています。まだ何かするつもり見たいです!」


 そうは言っても、もはや朝野姉妹は満身創痍。それに対処できるとすればたった一人。先ほどまで砲台と戦っていたときのような魔気の嵐を纏う状態は既に解除されている。彼の周りの妖精たちもいつもの見た目に戻っていた。


「何かって、動けないのに……。いや、特攻でもするつもりなのかな」


 彼は既に意識のない敵に近づいて、その体に触れた。触れた部分から敵の体が粒子になって消えていく。それはフレイズの超能力、崩壊だ。彼もフレイズも全てを平等に壊してしまうそれを簡単には使わない。しかし、敵が何をするのかわからない以上、そうするしかなかった。テレポートで空に上げても地上に何か放たれる可能性もある。どれだけ防御に優れた魔法を使っても特攻するような攻撃なら突破されるかもしれない。そうならないように、彼は崩壊の超能力を使った。


 巨大なマシンは粒子へと姿を変えて、空へと溶けて消えた。

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