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征服者 6

 猩花が一人で敵の相手をしている中、蓮葉と竜花は影を送り込み続けていた。猩花が戦っているのを目にしながら、焦りとも戦っていた。彼女一人では長くはもたないことを二人もわかっている。しかし。焦ってここで影の中に取り込もうとしても力が足りないかもしれない。そもそも、どれだけ影を送っても不安はあるのだ。ここまで強大な相手を取り込んだことは一度としてない。すでに背中を覆うほどの大きさにはなっていた。


「姉ちゃん。猩花が!」


 二人の目の前で、猩花なんとか敵と戦っているのが見えている。この短い間でも、何度もピンチに陥っては熊のぬいぐるみとその場を切り抜けているのだ。彼女だって自分一人で勝てる相手だとは思っていないだろう。


「竜花、落ち着いてください。大丈夫、猩花だって私たちと戦ってきました。大丈夫、大丈夫です」


 蓮葉も不安なことは同じだ。、いや、竜花以上に不安なのだろう。だから、彼女の今の言葉は自分にも言い聞かせているものだった。


 しかし、蓮花が猩花のことを信じていても、状況は徐々に悪くなっていく。敵の体力は底無しと行っててだろう。それに比べ、小学生の体力は長くは続かない。この敵との戦いの前にも戦っているのだから、一番、早くバテるのは当然のことといえるだろう。


 そして、ついにそのときが来てしまった。彼女と共に戦っていた熊が元のぬいぐるみのサイズに戻ってしまったのだ。敵もそのチャンスを逃すはずもなく、巨大な拳が彼女を潰そうとしていた。もはや、彼女に抵抗する力は残っていない。


「「猩花!」」


 二人は同時に叫び、竜花は敵に移した影に敵の取り込みをさせて、蓮花は猩花の元にテレポートした。猩花に触れた瞬間に次のテレポートで、猩花を安全な位置へと移動させた。


 猩花を移動させた後、蓮花は敵の近くにテレポートした。敵の視界に入る位置に移動して、攻撃の対象になった。彼女もあまりテレポートを使える体力が残っていない。竜花の影を絶え間なく、テレポートさせ続けていたのだから、それだけ体力は消費されていた。敵の剣が彼女に向かって振るわれる。巨大な剣が振るわれる速度は遅く、テレポートを使えば簡単に避けられる。だが、その剣が地面に叩きつけられれば、近くにいる竜花には確実に被害が出るだろう。猩花も安全な場所とは言っても、そこまで離れた位置に移動させたわけではない。剣が叩きつけられた衝撃が彼女のところまで行く可能性もある。蓮花の頭の中にその可能性があるため、敵の剣を地面に叩きつけられるわけにはいかないのだ。蓮花はすぐに動き出して、敵が握る剣の握りの部分にテレポートして、剣の中心になっている心に触れて、剣自体をテレポートさせた。


 剣の移動先は敵の少し上だ。敵が猩花と戦っていたこともあり、敵は身を屈めていた。敵の手を離れた剣からは半透明の刃が消失していた。ただの棒となったそれだが、蓮花にはそれで十分だった。彼女は棒に振れたまま、棒を再びテレポートする。もう既にテレポート使える回数は十数回と言ったところだろうか。テレポートされた棒は敵の背中を貫いて、地面に突き刺さっていた。蓮花が振り下ろしたわけではなく、その位置にテレポートさせたのだ。


 敵は体を起こそうとしたが、自身が上手く動くことが出来ないことに気が付いた。すぐに自身の武器が腹部を貫いていることに気がついた。棒を引き抜こうにも地面深くに突き刺さっているようで、すぐに歯抜けなかった。


「キサマラァァァァァ!」


 敵の叫び声が辺りの空気を震わせる。ノイズと混じり、不快で頭痛がする。しかし、それは明らかに敵を追いつめている証拠になっていただろう。目に見えて、敵が焦り、何とか棒を引き抜こうとしているが引き抜けない。地面からと言うだけではなく、腹から引き抜くことができないのだ。突き刺さった位置から少しも動かない。その原因は竜花の影にあった。彼女が影を使って棒を抑えているのだ。その代わり、敵の体を影の中に取り込むことは出来ていない。しかし、その状態を長く維持することは出来ない。全員が体力の底が見えてきている状態だ。


 敵は最初こそ、棒をどうにかしようとしていたが、いきなり大人しくなった。敵の掌が地面にくっつけられていた。その掌からと地面の隙間からは光が漏れている。次の瞬間には敵の下で何かが爆発した。その爆発の後には、敵が起き上がっていた。腹部に棒は突き刺さったままだというのに立っているのだ。


「あと、どれだけ戦えば、倒せるかわかりません……」


 敵の様子を見て蓮花が思わずそう呟いた。自分たちの出来るギリギリまでやった。それでも、敵は立っている。

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