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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
33 森の中の人の檻
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森の中の人の檻 6

 竜花の影が広がり、大講堂を覆う。床全てとそこに触れる全ての物に真っ黒な影が広がる。そして、大講堂から影が漏れて、廊下を包んでいく。そして、その上を歩いている全ての人が影の中に呑まれていく。飲まれている人々はそれに恐怖を覚えて、もがいているが、その効果は全くなかった。そして、闇の中に取り込まれる前には大抵の人が水の中に入る前のように息を止めていた。そして、第講堂と廊下の床を包んだ闇は更に広がり、壁を覆い天井にも達した。そして、天井も包み込むと、円盤全体を包み始める。円盤すらも包んだ闇は円盤を徐々に影の中に取り込んでいく。


「はぁ、はぁ、ふぅ。何とかできた」


 竜花の影が、円盤を徐々に飲み込み始めるころには既に彼女はある程度は自由に動けるようになっていた。とは言っても、円盤を取り込むまで、円盤の近くから移動することが出来ないのだが、それはあまり問題ではなかった。彼女の影の中には一般人だけでなく、エイリアンも取り込んでいた。彼女たちの対処に動こうとしていたタコ型のエイリアンも影の中にゆっくりと落ちていく。触手を動かして脱出しようとしているが、そもそも地面や壁は既に影の中。掴む場所も踏ん張る場所もないのだ。


「蓮花姉ちゃん。ここを出よう」


 竜花に呼ばれて蓮花ははっとする。目の前のあまりの光景に意識を持ってかれていたのだ。彼女が走り出したところで、蓮花も走り始めた。そして、竜花の腕を掴んで、テレポートを使用し、外に出た。


 二人が外にテレポートすると、円盤の外の様子がすぐに視界に入ってきた。状況はすぐにはわからなかったが、エイリアンの死骸がそこら中に転がっているところを見ると、自分たちの方が優勢だとすぐに気が付いた。その中でも、猩花の小太郎が暴れているのが視界に入ってくる。暴れていると言っても、猩花のことを守るのを最優先で動ているようだった。白希は味方に当たらないようにはしているが、彼を中心にして様々な現象が巻き起こっていた。火が噴き、水が押し、風が斬り、土が降る。その様子はもはや小規模な天変地異にも見える。そして、少し離れたところで、菜乃花が戦っているを見つけた。菜乃花は高らかに笑いながら、相手に攻撃を仕掛けている。彼女の周りには血液が流れていて、それが彼女を守りながら、攻撃にも使用されているのだ。相手は血の刃や棘などを持っている武器でしのいではいるが、前に進むことはほとんどできていない。少し前に勧めたとしてもすぐに押し戻される。


 回避に専念すれば、負けることはないだろうが、攻めなければ相手の負けは確実だ。彼女の攻撃に当たり、出血すれば菜乃花は回復する。血によって吸血が行われ、相手の体力を少しずつ削り取っていく。


「あはは、隙だらけですねッ!」


 彼女のそんな言葉が聞こえてくると同時に、相手の背後の地面にあった赤い点から棘が飛び出した。相手はそれをギリギリ回避したのだが、空中で大きく体勢を変えるのは難しい。彼女がだした棘は相手の腹の辺りをかすめて、更に出血させた。その血はすぐに彼女のものになる。相手の血だったものは赤く色を変えて、その場に留まる。次の瞬間には、その血液の水滴から、細い針が飛び出す。もはや、相手にそれを回避する術はなく、もろに腹の辺りを貫かれた。


「はぁ、はぁ、興奮してきたところですが、もう終わりです」


 語気を緩めて、彼女は渇きを自ら制御する。そして、相手の体を赤い槍が貫いた。一本、二本、三本。もはや、相手に抵抗する力は無くなっていた。菜乃花は最後に血の刃で頭を切り落とした。血は一滴も出て着ない。それもそのはずで、相手の血はほとんど全て彼女に吸血されていたのだ。槍なんて大きなものが体内に入った時点で、相手の負けは確実だ。少し掠っただけでも血を奪われるというのに、体を貫通してしまえば、体内の血まで奪われるのは必然だった。


「ふぅ、あはぁ、久しぶりに楽しめました……。はぁ」


 息切れではなく、単なる興奮で息を荒げている彼女だが、確実に蜥蜴人間に勝利した。あの時のように守られるどころか、終始圧倒していた。彼女が確実に成長していた。


 その場にはほとんどエイリアンはいなくないっていた。蜥蜴人間は菜乃花が倒したので最後で、タコ型と灰色のエイリアンが数体しか残っていない。相手に勝ち目などはなかっただろう。朝野姉妹も白希も自身の勝利を確信していた。


 しかし、そう簡単に全てが解決するわけはなかった。竜花が影の中に取り込んでいたはずの円盤ががたがたと動き出す。まだ影の中に入っていない部分の黒い影が弾けて彼女の超能力の制御から抜け出た。


「オレの邪魔をスルのは貴様ラか。起きてミレバ、何と言うことダ。オレの下僕もコレだけか。……さぁ、オレの為の贄とナレ」


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