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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
33 森の中の人の檻
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森の中の人の檻 2

 一人の男性がひどく傷ついていたのは、そこにいた全ての人が見ていた。彼らは残虐な行為を見て、逃げ出そうとする者の、抵抗しようとする者のいなくなっていた。疑問もあり、納得もできないが、死ぬよりはましだと考えてしまっていた。


「ボクはこれ以上、じっとしてられない。ボクは先に行くよ。既に中に入っている人を助けに行く」


 竜花は我慢ならなくなって、円盤の中に入る列の中に紛れ込んだ。彼女の影が薄くなる超能力は彼女が離れていても効果は消えない。しかし、彼女がいなければ、効果のかけ直しは出来ない。影が薄くなる効果は、最長で一時間半。しかし、一時間半きっちりその効果があるわけではなく、一時間半かけて元の影の濃さに戻っていくのだ。つまりは、一時間ほどもすれば、ほとんど元の影の濃さと変わらないだろう。竜花が近くにいれば、常に最大の効果を受け続けられるが、もうここからは彼女たちの影は濃くなっていくばかりだ。時間は待ってくれない。


「竜花一人では、心配です。私も一緒に行ってきます」


 蓮花は、そう言い残して竜花の後を追っていった。菜乃花は二人を止めようとはしない。今の二人であれば、円盤内の人を助けることは難しくはないと思ったのだ。そして、外にいる宇宙人は自分たちで勝てる相手だということもわかっていた。


「じゃあ、私たちは外の敵の相手をしましょう。これを片付けてから中にゆっくり入りましょうか」


 菜乃花はそう言うと、人々を囲む灰色のエイリアンが二人固まっているところに移動した。エイリアンは彼女に気が付かなかった。鈍感なエイリアンの後ろで彼女はヴァンパイアに変身した。その状態で、目の前にいるエイリアン二体を自分の血の中に取り込んだ。エイリアンは声も上げることもできずに一瞬で彼女の血の中に取り込まれたのだ。


 だが、二体もエイリアンを消せば、他のエイリアンが気が付かないはずはなく、誰かに見つけられてしまった以上、彼女には薄い影の効果は消滅してしまった。しかし、彼女はそれを理解しているため、気が付かれたところで問題はなかった。それどころか、自分だけの注目が集まるのは好都合だ。タコ型のエイリアンも彼女に向かって攻撃を開始する。何本もの触手が彼女に向かって叩きつけられているが、彼女に触手がぶつかる前に、彼女は自らの血を操作して刃にし、相手の触手を斬り裂いていていた。全方位に出現する刃は、彼女を守り続ける。彼女が斬り裂いた触手の破片は彼女の血に取り込まれて彼女の超能力を動かすためのエネルギーをなる。その度に、彼女は快感を得ていた。相手の肉や血を得ることで、彼女は快楽を得て、その快楽でさらに強くなる。そして、彼女はそれを正気を失わないギリギリで制御できるようになっていた。彼女は触手の嵐の中で、高らかに笑っている。頬は赤く染まり、その目は大きく開かれていた。見た目には既に勝機を失っているように見えるが、彼女は自らの意志で行動することが出来ていた。


「……はぁ、勝手なことをされると困るなぁ。せっかく、これだけ集めたのに、全く、全く、嫌になるねぇ」


 男は人間とは思えない速度で、菜乃花に接近した。白希がギリギリ目で追える程度の速度で、猩花は彼を目で追うことはできなかった。そして、男性が近づくと同時に、触手の嵐は一瞬で止み、菜乃花に男性が接近していた。その距離は相手の拳が届く範囲だった。男性は菜乃花の近くに着地すると、同時に彼女に向けて拳を思い切り前に出して、殴りつけようとしていた。だが、その拳はバラバラに刻まれていた。彼女の作り出した血の刃が彼の手を斬り裂いたのだ。


「あらぁ、貴方は人間ではないのですねぇ。なら、加減する必要はありませんねぇ」


 男性は一瞬で彼女との距離を取った。そして、彼がいた場所の地面には亀裂が入っていた。その亀裂は、彼女の攻撃だ。その証拠に、微かに血の跡がついている。彼女は血の操作にも慣れ、その速度はヴァンパイアの衝動に操られていたときよりも素早い。今の彼女は白希を相手にしても多少は戦うことが出来るだろう。


「危ない、危ない。いくら外装とは言え、これ事壊されると私にも影響が出ますからね。……そうですね。それが貴女の本気の姿と言うのなら、私もそれに習いましょうか」


 彼がそう言うと、シュウと言う音と共に、彼の肌が溶け始めた。溶けた肌が地面にぼたりと落ちていく。服もそれと同時に落ちていき、塗ったペンキが水で落ちていくような様子だった。しかし、菜乃花は相手が本来の姿になる前に血で攻撃した。戦いに置いて、相手の本気の姿を待つものはおそらく馬鹿だ。しかし、彼女の攻撃はそれには当たらなかったようで、彼女の攻撃をジャンプで躱したそれは、地面に着地した。

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