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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
32 平原からの脱出
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平原からの脱出 1

 夕来の使った水の刃が魔獣を通り越して、お面の男子に届こうとしていた。だが、彼はそれに対して避けようとはしていない。夕来はその様子を見て、水の刃すらもどこかに移動させることが出来るのだと考えた。だからこそ、彼女は次の魔法の準備をしていた。水の刃をさらに増やして、全方位から男子を攻撃しようとしていたのだ。彼女が次の魔法を放った時には、お面の男子はその攻撃を正面から受けていた。体に切り傷が出来る。その体から血が出ることはなく、男子は人間ではなく、人形に感じ始めた。人間でなくとも自身の体に大きなダメージが入ると思えば、攻撃を回避するものだろう。しかし、相手はそんなことは全くなかった。彼女の水の刃を食らったにも関わらず、痛みを感じている様子もなかった。


 そして、夕来が既に準備していた大量の水の刃が相手に襲い掛かる。その攻撃は男子の全身を切り刻んでいた。男子は呻くこともなく、前のめりに倒れた。彼の付けていたお面だけは全くダメージを受けておらず、彼が倒れると同時に、彼の顔から勝手に離れて、地面に落ちた。そして、お面は宙に浮いて、その端から塵へと変わっていく。最後にはその塵も空気に同化していくように消えた。お面をつけていた男子もお面と同時に、体を塵へと変えていく。周りにいたはずの、彼女が倒した魔獣もいなくなっていた。そして、彼女の体も手足の指先から崩れていく。


(こ、これは、何?)


 自身の手を見て、彼女は恐怖する。一瞬にして、自身の存在が消えていく。それから、自分だけがその状態になっているわけではないことをミストを見て知った。ミストの小さな体の方が消える速度は速い。既に彼女の腕は消失していて、彼女の来ている水のようなドレスも一緒に消滅しようとしている。


「み、ミスト! どうすれば、どうすればいいの。ミストだけは、助けないと、王子様のところに連れていかないと」


 恐怖と共に、焦燥感が募る。だが、自身の消滅も、ミストの消滅も止めることは出来ずに、ミストの体が先にその場から消滅した。それを見ていることしかできなかった彼女はその場に崩れ落ちる。王子様にどう説明しようということよりも、一緒に戦った彼女がいなくなることに何もできなかったことが悔しかった。やはり、超能力もない自分は無力だ。嘆きながら、彼女の体もついにその場から消滅した。


 平原の中にいた全ての生物が消滅していく。白希も妖精たちも、フレイズと猩花、ぬいぐるみ。菜乃花も蓮花も竜花も。例外はなく、森と平原以外の全てが消滅していく。




 商店街から少し離れた琥珀は焦っていた。自身が開いたゲートから二、三人一般人が出てきたのだが、それ以降は誰も出てこなくなった。そして、先ほどいきなりゲートが閉じたのだ。彼から朝野姉妹が移動した先に、干渉しようとするも既にその場所がないかのような感覚で、向こう側にゲートを開くことも出来ない。向こうの世界に菜乃花を置き去りにしてしまった。しかし、彼の悩みはすぐに解決することになる。彼の真横から、菜乃花たちが突然、出現したからだ。この場所から平原の中に入ったメンバーがそこにいたのだ。琥珀は菜乃花に状況を聞くことにした。


「菜乃花、大丈夫か? 何があったんだ?」


「……? 戻ってきてる? 私、どこに行ってたの?」


 琥珀もその言葉に混乱する。彼の方が皆の状況を聞きたいところなのだ。しかし、彼女たちも状況を理解していない。白希すらもその状況をわかっていないのだ。彼の周りにはフレイズ以外の妖精たちがいて、彼女たちも今の今まで何をしていたのかを分かっていない。竜花も蓮花も混乱しているようだった。


「お姉ちゃんたち? ここで何しているの?」


「シラキ、探したよ。かくれんぼ、してるの?」


 路地に入るところに猩花とフレイズが、そこにいた。まるで、先ほどから商店街にいたかのような様子で、不安そうな様子はない。


「しょ、猩花! 大丈夫だったの? 体、何ともない? 痛いところは?」


「フレイズ! 大丈夫? 体には痛いところはないか?」


 菜乃花は猩花に、白希はフレイズに詰めよる。二人はなぜ、そこまで心配しているのかが全く分からないようで、目を丸くしているだけだ。


「お姉ちゃん、苦しいです。な、何ともないですよ。痛いところもないです!」


「シラキ? どうしたの? 私は何ともないよ。戦ってもいないのに、何の心配をしてるの?」


 二人の言葉からも、今の今まで戦闘やピンチのなったことなどはなかったという風で、むしろ、心配している二人のことを心配している様子だ。菜乃花が猩花にいきさつを話そうとしたが、彼女が無事であるなら彼女を不安させることはないだろうと考えて、話すのをやめた。白希も同様でその話は彼女たちが無事だということで、結論が付いた。


(ボクの心の中にある契約。ボクはシラキ以外と契約してる?)


 ミストだけはいつのまにか結んだ契約があることに気が付いていた。


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