表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
31 かみかくし
148/200

かみかくし 6

 夕来の足元が、斧の衝撃で形が変わる。彼女の足元にはひびが入り、地面に浅い穴が空く。彼女はその崩れ去る地面に対応しようと足を動かして、逃げようとするが

連戦のせいでうまく体を動かすことが出来なかった。それでも、彼女は何とか崩れた足場から脱することが出来た。


 だが、そこから逃げられただけで未だに鎧はそこにいる。そして、彼女は逃げ出した位置の少し上には鎧が既にスタンバイしていた。剣を持ち上げて、今振り下ろそうしていた。夕来はそれに気がついてはいるが、それを回避か防御かすることが出来ない。


 魔法に慣れていない彼女は魔法で身を守るという方法がすぐに思いつくことはなかった。鎧の剣が振り下ろされ、彼女に彼女にその刃が襲い掛かろうとしていた。とっさに、彼女は改造スタンガンを構えて、剣を受け止めようとしていた。彼女自身もそれで防ぐことが出来るとは思っていない。しかし、何もしないなんてことは出来ないのだ。


 彼女は剣がぶつかる瞬間まで目を閉じることはなかった。だからこそ、目の前にいきなり水が貼られたのを見た。その水は振り下ろされた剣を受け止めていた。それが魔法だと気が付くまでに多少時間がかかった。彼女を守った水の膜は剣を抑えきると、膜が弾けて鎧を濡らす。夕来は改造スタンガンを鎧に押し付けて、トリガーを押した。その瞬間、バチバチと電気が弾けて走る音がして、鎧に電気が流れた。その電気から逃げるためか、鎧は彼女から離れる。


 鎧は離れた位置で、剣を横に構えていた。夕来たちがそれを認識するときには剣が横に振るわれていた。その剣の軌跡を描くように三日月肩の緑色の魔法が飛んでくる。その速度は速かったが、彼女は先ほどのことで、魔法で自らを守るという手段を選択肢として、思い浮かべることが出来ていた。しかし、彼女は魔法は使うことはなく、相手の斬撃を回避するように前に飛んだ。そして、地面に触れることなく、一回転して地面に降りた。そこから彼女は水の衝撃の魔法を使う。再び、鎧に向かって、衝撃を与える雨が鎧に降り注ぐ。鎧の表面は既にぼこぼこで、彼女のその魔法でさらにボロボロになっていく。鎧の動きがふらふらしながら空を飛んでいた。次で止めにしようと彼女は再び同じ魔法を展開しようとしていた。


「ミスト――」


「避けてっ!」


 夕来が魔法を使おうと彼女の名前を呼んだ瞬間、ミストが叫ぶ。彼女は、その声にその場からさらに前に飛ぶ。何が来てるのかも彼女は知らない。しかし、その場にいてはいけないと相方がそう言ったのだ。彼女はその言葉に反射的に行動していたのだ。前に飛んでから、彼女は何が来ていたのかと後ろを振り返る。そこには先ほどの狼の魔獣がいた。彼女の場所に爪を振り下ろし終わっていて、ミストの声に反応して回避していなければ、爪に引き裂かれていただろう。


「ミスト、ありがとう」


(だけど、これじゃきりがない。おそらく、この魔獣を倒しても次を連れてくる。だとすれば、本体を叩くしかない)


 彼女の予想は的中していて、彼女がいくら召喚された魔獣を倒そうと、次の魔獣が出てくるだけであった。お面の男子自身は戦闘には干渉してこない。それを考えると、あの男子そのものには高い戦闘能力はないのだろう。彼女はそう考えてターゲットを変える。鎧と狼は彼女を狙い続けるが、彼女はお面の男子に狙いを変えた。


「ミスト、水の槍!」


 彼女が作り出した水の槍は、男子に向かって一直線に跳んでいく。男子は回避するつもりがないのか、全く動かない。しかし、その魔法は彼にぶつからず、違う何かにぶつかった。それは先ほどまで、彼女を狙っていた狼の魔獣だった。彼の前に連れ去られて、彼の盾にさせられたのだ。


 グルアァァァアアアッ!


 攻撃を食らった魔獣は咆哮を上げた。その声は辺りに響き渡るほどの大きさで、彼女がとっさに耳を塞ぐほどだ。彼女が怯んだのを感じたからか、魔獣は彼女に飛び掛かる。夕来にとってはその行動は予想していたことの一つだった。冷静に相手が飛び掛かってくるのを見て、魔法を唱える。


「ミスト、水の刃を五つ!」


 彼女は先ほどの相手の風の刃の魔法を思い出した。それを水の魔法でも再現できるだろうと考えたのだ。そして、彼女の持つイメージはそのまま現実になる。彼女の周りに小さな水の球が出現して、それらは平たくなり、三日月のような形になった。その刃は魔獣の体に深い切り傷を付けた。既に水の槍を食らっている狼の魔獣にはその刃を耐えられるほどの体力は残っていなかったようで、狼はその場に倒れる。魔獣が倒れるのと同時に、彼女は再び水の刃を使用した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ