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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
31 かみかくし
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かみかくし 5

 夕来は聖水の入ったペットボトルの蓋を開けて、鎧に向かって、それをぶちまけた。鎧の表面から白い煙のような物がでていて、それは鎧にダメージを与えているように見えた。しかし、ペットボトル一本分の聖水を使っても、鎧から煙が出ているだけで、相手の動きから見てもあまりダメージを与えているようには見えなかった。即席で作ったが悪霊には効果があった聖水だ。彼女はもっとダメージを讃えられると思っていた。それどころか、彼女はペットボトル一本分もかければ、鎧を倒すことが出来るとすら思っていたのだ。


「そううまくはいかないか。やっぱり戦うしかないってことかな」


 彼女はそう呟いて、空のペットボトルをスクールバッグの中にしまい、改造スタンガンを取り出した。幽霊相手に、電撃がどれだけ通用するかわからないが、試してみるのは間違いではないだろう。彼女はそう考えている。さらに、水の魔法で電撃が良く通るようになれば、鎧の亡霊にもダメージが通るかもしれない。


 鎧は彼女に近づいていく。聖水を掛けた後、夕来は相手から離れるように移動していた。鎧の動きは速くはない。彼女の身体能力があれば、すぐに距離を空けることは出来るだろう。前の彼女であれば、相手との距離を空けるということは攻撃が届かなくなることがほとんどだったが、今の彼女は距離を空けても攻撃を届けることが出来た。


「ミストッ、水の槍をっ!」


 日本の水の槍が作り出されて、それが鎧の方へと飛んでいく。魔獣を貫いた魔法だ弱いわけではないというのは彼女だけでなく、ミストも理解していることだった。しかし、彼女の放った槍は鎧を貫通することはなかった。水の槍の一本は鎧に確実に到達していた。もう一方は相手の斧により斬り裂かれていたが、確実にぶつかっていた。しかし、鎧にはダメージが無いようにみえた。動きは相変わらず鈍い。しかし、水の槍を防ぎきったことを考えれば、相手には魔法はあまり効果がないのかもしれない。鎧に効果がありそうな武器は衝撃を与えるような物だろうか。カッターなどでは刃を通すことはまず不可能だろう。ハンマーや棒があれば、それで戦えそうだが、そう言ったものは彼女の手元にはない。


(いや、ミストがいる今、現代の物に頼る必要はないか)


 彼女の思考や体も落ち着いてきた。先ほどまで走り回っていたせいで、思考が乱れていため、口から思考が漏れていたが、それもなくなっている。彼女は相手の鈍い動きを見ながら考える。彼女は衝撃を与えるような魔法を考えた。


「ミスト、水の衝撃を!」


 彼女がミストにそう言うと、夕来のイメージを現実にする。彼女の頭上に大きな水の球が出現する。彼女に影を落とすほどの大きさ。澄んだ水が太陽の光を屈折させて、キラキラと表面が揺れいていた。彼女はその水の球を相手の頭上に移動させる。ゆっくりと動いているが、その大きさからすれば、ゆっくり移動していても、あまり速度は関係なかった。水の球は、相手に向かってゆっくりと落ちていく。堕ちていくと同時に、相手の当たるであろう水の表面が平らになっていった。そして、最後にはハンマーのような形になり、大量の水が鎧を押しつぶす。大量の水が地面について、平原に大きな円をスタンプした。その中央にいるのは鎧だ。兜が地面に落ちているが、鎧はそこにまだ立っている。しかし、そこからすぐに動くことはなかった。


 夕来とミストからは見えていなかったが、鎧が小刻みに震えていた。近くにいれば、鎧同士がぶつかる音が聞こえていたはずだろう。鎧はカタカタと体を動かしながら、地面から足が離れる。鎧は宙に浮いていく。宙に浮くと、夕来とミストにはよすがおかしいと言うのがわかっただろう。そして、鎧は宙に浮いて彼女たちに近づいてくる。その速度は先ほどの鎧とは比べ物にならない程速い。先ほどまで、なぜその速度で移動しなかったのか思えるほどだ。だが、それでも目で追うのが大変問うほどではない。


「ミスト、小さい水の衝撃!」


 夕来の周りに大量の水滴が現れる。それらが雨のように鎧に向かって飛んでいく。鎧に水の球がぶつかり、その衝撃にバンバンとまるで大量の雨が地面にぶつかるような音がしていた。鎧はその勢いにその場から動くことが出来ないようだった。しかし、彼女は魔法を使うのは初心者だ。その雨のような魔法を出し続ける手段は知らない。やがて、雨はやみ、鎧が彼女に近づいていく。そして、彼女の上に移動して、斧を振り下ろす。宙にいた鎧は振り下ろす斧と同時に、地面に勢いよく落ちて、斧が地面に叩きつけられる。彼女は斧を回避するために横に身を躱した。しかし、斧が放つ衝撃が強いため、彼女の足場を崩した。

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