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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
4 二学期前日
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二学期前日 1

 眼帯の少女は自らの超能力を明かす。彼女はどこか楽しそうにしているが、それからも攻撃をする素振りはない。それどころか、ふよふよと浮かせていた包帯も袖の中にしまっていた。


「竜花ねえ。そろそろ帰ろう? もういいよ。こんな人」


「ん? ああ、うん。そうしよっか」


 少女が彼女の服の裾を掴んでそう言うと、彼女はいきなり素に戻って、そういった。どうやら、これで戦闘は終わりのようだ。



「はははっ! 次に会う時まで覚えておくといいっ! ボクの名前は竜花、朝野竜花だ。ではなっ!」


 彼女は高らかに自己紹介をすると、少女と手を繋いで去っていった。去り際はかなり長閑な風景だったが、彼女は警戒するべきだろう。妖精たちを見ていて、彼の攻撃にも結局は反撃してこなかった。それどころか、あの黒い液体の正体もわからなかったのだ。中二病ではあるが、かなり強いとみるべきだろう。異世界でもふざけた奴の中にも強い奴がいた。いや、ふざけて戦うからこそ、行動が読めなくて、かなり苦戦した覚えもある。どの世界戦にもああいう奴はいるものだなと彼は思った。そして、彼女のふざけ具体に自分の怒りもいつの間にか収まっていた。


 それから、妖精たちを超能力空間から外に出して、この公園を歩くときに使った魔法を全て使い、再び公園を歩き出したのだが、思ったより体に疲労が溜まっていた。思い出せば、二連戦。体も疲れるわけだ。


「ごめん、みんな。今日は帰ろう。僕は疲れちゃったよ」


 妖精たちはそれに反対する者はおらず、家に帰ることになった。


 家に帰る前に、食事をコンビニによって買っていく。あまり大量に買うと、食べきれないことはこの数日で学んだことだ。ジュースも控えて置く。この世界での金銭はそこまであるわけではない。まだ、バイトもしてないのだから、当然だ。両親が口座に毎月振り込んでくれていた金銭に手を付けなくては行けなくなったことは悔しが、彼女たちに苦しい思いをさせるくらいなら、その程度のことは何ともない。




 それから数日が経ち、ついに高校の二学期が始まる前日になる。用意は万全で、足りない物もない。


「シラキ、何か変、かも」


 ファスが彼の頭の上でそう言った。いつもの強気な感じがないということは彼女にとってはかなり変なことが起きていると考えた方が良いだろう。そうは言っても、彼の視界や感覚には特に変なものはない。家に不審者でも侵入したかと思ったが、プロイアが反応していないところを見ると、空気に触れている物ではないのだろう。この世界で、空気に触れていないというのは中々おかしなことだが、ファスがそう言っているのだ。彼は無条件でそれを信じることにしている。


「シラキさん。外がおかしいのです。」


 ついにプロイアもそう言いだした。家の中か、外か、とにかくおかしなことが起きているのは間違いない。正体も何もわからない何かが起きている。


 そう思った瞬間に、彼には何かが飛んできた。それは針だろうか。彼に当たる前にファスが土の塊をそこに出現させて、彼を守った。


「ファス、ありがとう」


「大丈夫。それより、近くにいるわね」


 彼女が落ち着いているということは、相当な力を持ったものか、厄介な力を持ったものが近くにいるという証拠だ。


 彼が辺りを見回しながら、警戒していると、再び針が彼に向かって飛んできていた。今度はミストがそれを水で包んで勢いを殺した。だが、水の色がいきなり変色した。紫色と言うか、桃色と言うか、と言ったような変な色だ。おそらく、それは針に塗ってある毒か何かなのだろう。


「どこに居るんだ」


 プロイアとファスでも特定できないということは正確にはこの場所にはいないのだろう。存在だけを感知している。透明で存在がそこにないということなのだろうか。そこで彼は異世界でのことを思いだした。アンデッドであるゴーストやレイスの討伐をしたときも、ファスは同じようなことを言っていた。その時はプロイアはまだいなかったが、きっと彼女も一緒にいれば、同じことを言っただろう。


「正体は幽霊、か? いや、こっちの世界で……? ない話ではないか。ミスト。フルヘイズ」


 彼が彼女にそう言うと、部屋の中が白い煙で満たされる。その霧は誰かが動かないと、移動することがない。その煙の中で、一部だけが動いていた。


「プロイア。インビジブルエッジ」


 彼からその動く者に向けて風が動く、その透明な何かは明らかに風を受けていた。だが、その攻撃に動じた様子は全くない。それどころか、霧の中を動く者は明らかに、彼が自分に気が付いたとわかったのだろう。首と思わしき部分が彼の方へと向いた。

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