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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
30 人を攫う空間
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人を攫う空間 2

 商店街での人が消える現象が起こる少し前、夕来は商店街に朝野姉妹たちと移動している姿を見つけた。彼女は白希の跡をつけるために、校舎からでた。彼らの跡をつけていれば、彼らが商店街に行こうとしていることはすぐにわかった。彼女も商店街は利用する。ほとんどネットで商品を買っているが、食べ物や日用品はこの商店街で買いそろえている。


 夕来は商店街に入る白希たちを見つけた。そこで彼女の前で驚くべきことがおきた。それは姉妹の内の一人が商店街に入った瞬間に消えたのだ。彼女たちの超能力は把握してしまっている。白希の近くで戦闘をしていると、彼女たちも目に付くのだ。そして、その超能力の全てを理解しているわけではないが、どういう系統のものかくらいは想像がつく。一番、知りたい相手である白希の超能力の全てを把握しきれていないのだが。


 朝野姉妹の末っ子が消失したのを受けて、他の姉妹たちも焦っている。白希も焦っているように見えた。それはいつものような様子ではなく、切羽詰まっていると言った様子だ。彼がそこまで焦る理由は一つだけだ。今は何らかの影響で確認することは出来ないが、彼の周りには妖精たちがいる。そして、彼女たちが危険な目に遭うようなことがあれば、身を挺してか彼女たちを守っているのだ。妖精たちが傷つくような状況が起これば、彼はそれだけで冷静さを失う。


(末っ子と一緒に、妖精の誰かもいなくなったってことかな)


 夕来は彼の大切な人であることは理解しているので、いなくなった妖精を助けたいと思っているが、彼女は超能力者ではない。何らかの超能力で消えた妖精の位置を辿るなんてことは出来ないだろう。


(いや、可能性はかなり低いけど、私も消失現象に遭えば助けられるかもしれないけど。その時はこの世界に戻ってくる方法がない)


 彼女は彼を助けるための手段を考えていると、白希たちが動き出したのを確認した。今のいままでいなかったはずの、和装の男性が近くにいた。彼女の勘が、彼は危険だと言っている。戦うべき相手ではないということだ。そして、彼女の勘は当たっている。超能力者でも太刀打ちするのが困難な相手である琥珀を一般人の彼女が対処できるはずがなかった。


 その男性と朝野姉妹の長女が話していると、商店街から外れて、細い路地の方へと移動する。その先には和装の男性しかいなかった。先ほどまでいた白希たちはどこにもいない。しかし、和装の断背の隣には、そこだけが虚空のようになっている真っ黒な楕円形の輪っかが宙に浮いていた。彼女はそれが妖精と末っ子が移動した先の場所だと勘付いた。その輪を潜れば、助けに行ける可能性があるが、あの男性の目を盗んで入ることはおそらくできないだろう。彼を押しのけて入ることは出来ない。彼と戦うべきではないのだから、どうすることもできない。


(仕方ない。商店街で王子様が戻ってくるのを待つことにしよう。もしかしたら、消失現象に巻き込まれるかもしれないし)


 彼女は商店街での消失現象に巻き込まれることを期待しながら、商店街で待つことにした。




 どれくらい経っただろうか、空は既に夕暮れを過ぎようとしている。橙色の空の半分は藍色に侵蝕されていた。彼女はずっと待っていても今日は会えないかもしれないとそう思った時、視界が真っ白になった。いきなり明るくなったような錯覚を得て、片手で目を覆った。白い景色が無くなると、そこに広がるのは、白い景色とは打って変わっての緑一面と言った様子の場所だ。夜に差し掛かっていた空は青一色になっている。彼女は周囲を見回すが、草原以外には何もない。他の人も近くには見えない。


(消失現象……。転移先がここってこと?)


 彼女はポケットを探り、戦える道具をどれだけ持ち合わせているかを確かめる。学校の帰りと言うだけあって、スクールバッグも持っていた。中には悪霊と戦った時に使った聖水の予備が三本入っている。それ以外は体操着に教科書と筆記用具。後は財布。それ以外にはハンカチやティッシュなどの日用品が入ったポーチくらいだ。そこに入っているものは戦闘には使えない。ポケットには折り畳みナイフと改造スタンガン。今回は改造スタンガンの通電部分が焼き切れたときの付け替えも持っている。その数は十本ほどだ。改造スタンガンを最大出力で十一回だけ使うことが出来るわけだが、彼女は自分が戦ってきた相手はそれで足りるとは思っていない。他には、文房具の糊やカッター、ホッチキス、ハサミくらいだろう。どれも一般人相手にしか効果がないものばかりだった。

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