人を攫う空間 1
菜乃花と蓮花は草原を歩いていた。時折、動物に似た化け物と戦闘をこなしていた。菜乃花はタコと戦っていた時のような興奮を見せることなく、淡々と戦って魔獣を倒している。彼女の渇きは歩いて井戸は落ち着いているのだ。あれだけタコをいたぶり、搾取したのだ。渇きも収まっているのだろう。だが、次にいつその渇きのせいで制御できなくなるかは彼女にもわからない。自分が居る草原はほとんど見た彼女たちはスマートフォンを見て、白希たちと決めていた時間を少し過ぎていることに気が付いた。
「蓮花ちゃん。いったん、戻ろう」
蓮花と菜乃花はゲートの近くにテレポートした。
竜花と白希は、草原の中に人影を発見した。遠くからだと、正確な大きさなどはわからないが、明らかに恰好から猩花ではないのがわかった。白い無地のティーシャツを着ているのだ。下はジーンズのように見えた。猩花はあの学園の生徒だ。少なくとも橙のリボンをどこかに着けているはずだ。となると、そのと人は明らかにそこにいるには不自然だ。白希はこの世界に飛ばされたのは、猩花だけではないのかもしれないと思ったが、この平原と森の世界についての常識は全く分からない。あの姿の何かがそこにあることがこの場所では普通のことである可能性もある。
彼が考えている間に、その遠くにいる人型を竜花も見つけた。彼女は短絡的にそれが人だと思っ多様で、すぐにその人型に近づいて行こうとした。白希はその腕を掴んで、勝手な行動を制した。
「ちょっと待って。あれがただの人か、わからないんだ」
「でも、普通の人だったら助けないとダメだ。ボクらは彼を放っておくべきじゃない。それにあれが何かの罠だったとしても、ボクが対処するから大丈夫だよ。ボクの超能力なら何とかなると思うから」
彼女はそう言いながらも、既に駆け出している。結局は彼も、竜花に付いて行くしかないのだ。だが、彼が走り出して、すぐに肩の辺りに違和感があった。いつもなら、すぐにそれに気が付いていただろうが、今は状況が悪かった。猩花を探すこと、竜花を追うこと、目指す先が罠である可能性。彼は注意すべきところが多すぎたのだ。
「あ、シラ――」
微かに聞こえたミストの声。彼の肩が妖精一つ分の重さが無くなる。彼は視線を自身の肩に向けた。そこには誰も乗っていない。肩に手を置いて、ミストを探してもそこに彼女はいなかった。その瞬間に、白希は焦りが一気にピークになってしまう。
「な、ミスト、ミスト! どこに居るんだ。ミスト!」
彼の叫び声に竜花も足を止めて振り返った。彼が取り乱すのは妖精たちに何かあった時だけだ。
「白希、どうしたの!?」
「ミストが、いつの間にか、いなくなってた。肩にいたのに、フレイズがいなくなった時に見たいに、ほとんど音もなく。僕の名前を呼んでいたのに、助けられなかった。早く、見つけないと。ミストは怖がりだから」
「ちょ、ちょっと、落ち着いて!」
「駄目だ。落ち着いてなんていられない。フレイズもいなくなって、ミストまで。もう落ち着淹れられるわけがない。僕はもう一人でも探しに行くよ!」
「待ってってば。ボクももちろん探すよ。でも、まずは菜乃花姉ちゃんたちと合流しよう。そろそろ時間のはずだから、姉ちゃんたちも戻ってきてるはず」
「悠長にしてられないんだ。君をあの場所まで送るよ。僕はこのままフレイズとミストを探すから」
彼は彼女の肩に手を置いた。それがテレポートするために必要な動作だと知っている。
「あ、ちょっとま――」
竜花の言葉も聞かず、彼はゲートの位置まで、竜花を飛ばしてしまった。そして、彼は一人で、草原の中にいるであろうミストとフレイズを探し始めた。
「――って」
白希にテレポートで無理やりゲートの近くまで移動させられた竜花は近くに菜乃花と蓮花がいるのを確認した。ゲートの近くには二人だけではなく、明らかに超能力者ではない人たちゲートをくぐっていた。
「この先は暗闇ですが、ずっと真っ直ぐ歩いて行けば、元の場所に戻れますから。ゆっくり進んでください。ゲートはすぐに閉じたりはしませんから、急がないで」
菜乃花と蓮花がゲートの前に列を作らせて、一人一人を確実にゲートに通すための行動をしていた。竜花もその列に近づいて、蓮花に話しかけていた。
「蓮花、これは?」
「元の世界の人です。いつの間にかこの世界に来ていたらしいのですが、とりあえず、元の世界に戻ってもらっています。――竜花、白希さんは?」
竜花は先ほど会ったことを彼女に話す。最後にミストがいなくなり、そのために一人でミストとフレイズを探していることも話す。
「そうですか、では、彼には一人で行動してもらいましょう。おそらく、一人でも大丈夫でしょうから、私たちで、この一般人を元の世界に返しましょう。数は多くはありませんが、この草原は広いですから、猩花を探すついでに元の世界に返してあげましょうか」