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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
29 広大な草原
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広大な草原 2

 猩花たちは未だに草原を歩いていた。風景は変わらない。そのせいで気が緩んできていた。周囲への警戒も薄れ、フレイズとのお喋りに気を取られていた。


「……っ!」


 フレイズは何かに気が付いて、火の魔法を周囲に展開する。単純な日の輪が地面を走る。そこらにあった草木が焼け焦げる。だが、猩花がいきなり足元が焼けてことに驚いていたが、すぐに周囲を見渡し警戒する。すると、彼女たちのまわりから蔦が地面から延びてくる。


「失敗したってことだよね。ショウカ、また魔獣だよっ!」


「わかった! さっきみたいにやっつけよう!」


 猩花はやる気満々と言った様子だが、フレイズにはそう言った様子がなかった。彼女はこの魔獣について知っているような気がしていた。それも相当厄介な相手だったはずだ。蔦は天を目指して伸びていたが、その途中で止まる。猩花たちは次に何が来るのかと警戒しながらその蔦を見上げる。二回の建物ほどの大きさに見えるが、その蔦は今は真っ直ぐ伸びていない。その蔦の体は蛇行するように伸びている。その蔦の先端には黄、青、ピンクの花びらの付いた花がついている。蔦はいくつかに別れ、その先端には丸い何かがついている蔦もあった。うねうねと体を動かしながら、蔓の天辺についている花が彼女に近づいた。彼女は相手から離れるために、足を動かそうとしたのだが、少し足を上にあげたところで、何かに足を引っ張られ、それ以上、足を動かすことが出来なくなった。


「え」


 不意を突かれた彼女の思考は硬直する。その隙に彼女に蔓の鞭が迫っていた。下を向いて、自身の足に意識が囚われている彼女にはその蔦にすぐには気が付けない。


「ショウカッ!」


 動くことが出来るのは、フレイズのみ。彼女は蔦に対して火の玉をぶつけて、その威力を相殺しようとした。火の玉がいくつか当たるが、蔦の勢いの全てを殺すことは出来ず、蔦が彼女の胴を捕らえて、小さな彼女の体を吹っ飛ばした。彼女の足の拘束が解けたものの、いくら威力が落ちているとはいえど、大きな蔓が体に叩きつけられたのだ。無傷と言うわけにはいかない。


「あ、う、うう、いたい、よぉ」


 猩花は涙目になりながらも、立ち上がる。横腹の辺りを抑えながらふらふらとしていた。そんな彼女にフレイズが急いで駆けつけていた。


「ショ、ショウカッ! 大丈夫? 一旦、逃げよう!」


 フレイズの腕力では彼女を支えることは出来ない。そもそも妖精が人を支えることなどできるはずがないのだ。猩花が泣きそうなのを堪えている近くで、猩花も涙目になっていた。友達が傷つけられているのに、何もできない。守ることも出来なかったのだ。そして、彼女が痛がり、泣きそうになっているのを見ると、自分もなぜだか泣きそうになってくる。


「だ、大丈夫、戦うよ、お姉ちゃんたちならそうするから。……みんな、お願い! 力を貸して!」


 ぬいぐるみたちが大きくなり、彼女の前に立つ。ぬいぐるみに表情など無いはずだが、ぬいぐるみたちは怒っているように見えた。特に熊の小太郎の表情に怒りがありありと浮かんでいるように見えたのだ。


 蔦の魔獣は彼女が召喚したぬいぐるみたちに対してすぐに蔦を振り回して攻撃する。だが、小太郎は蔦を受け止め、ハチとにゃむは軽く跳んで避ける。イナバはその蔦を回避した後に栂に齧りついていた。その蔦を齧り、蔦を千切った。


 蔦を回避したハチとにゃむが前に出て、蔦に噛み付く。蔦に歯は入るものの引きちぎるまでには至らない。何度も同じところに噛み付き、口を動かせばいつかは噛み切ることもできるだろうが、そうするには時間がかかりすぎるだろう。最後に熊の小太郎が、蔦に対して思い切り、パンチをかますが、それもダメージにはなっていないようだ。すると小太郎は、パンチしたとの手から爪を出し、蔦の胴体を爪で斬り裂こうとしたが、蔦はうねうねと揺れて、正確に爪で捉えることは出来ない。爪が掠り、多少の傷をつけることは出来るが、相手にとってその程度の傷はダメージには入らないようだ。


「みんな、どいて! フレイズ! れっどどらごんぶれす!」


 猩花がそう叫ぶと、彼女の目の前に小さな火球が出現する。火球は徐々に大きくなり、そこから、火炎が放射される。ぬいぐるみたちは既に退避していて、彼らのその攻撃が当たることはなかった。魔法を放った彼女から見れば、もろに魔法を当てたように見えた。だが、次の瞬間には彼女の足が再び拘束されていることに気が付いた。魔法が終わると、地面から再び蔦が伸びてくる。猩花は相手が地面に潜り、魔法を回避したことを理解する。魔獣の蔦が再び彼女にむかって伸びていく。先ほどのように足が拘束されていて回避できないが、先ほどとは違い小太郎たちがいる。彼女は小太郎にその蔦を受け止めてもらい、攻撃を防いだ。


 だが、彼女の目の前に蔦の一部についていた丸い何かが向けられていた。

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