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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
3 終わる夏休み
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終わる夏休み 5

「プロイア、ファス。相手の行動に注意してほしい。あの黒い液体が何かわからない以上は一番警戒しなきゃいけない」


 二人は頷いて、魔気の動きに注意する。


「ミスト。フルヘイズ」


 彼の周りに白い煙が大量の出てくる。彼ら以外の人からは白希を視認することが出来ないだろう。だが、その霧を貫いて、黒い液体が彼の元へと届く。その液体が盗った場所から霧が無くなっていた。


「シラキ、魔法が消滅してる」


「なんの液体なんだ。あれは」


 魔法を無効化するというのは、異世界でもなかったわけではない。それは超能力ではなく、魔法だ。魔法を構成する最小単位は魔気だ。それぞれの魔気が固まり、魔法を形作る。だから、その魔気の結合を緩く知れやれば、魔法は形を保てなくなり消失する、と言う仕組みだが、その魔法を使うには自身の魔法も消失させてしまうし、その魔法を使っている間は、もちろん他の行動が出来ない。それだけ繊細な魔法なのだ。だから、初手に使う程度の魔法で、戦闘が本格化し時には使えない。蘇rがこの世界でもあるのかどうか。彼女が使ったのはきっと魔法ではないのだろう。それが彼女の超能力の副作用的なものなのだろうか。今の彼女を見ても、どんな超能力を持っているのかはわからない。


「フレイズ。フレイムランス・ミニ」


 五センチほどの小さな炎でできた槍が相手に向かっていく。相手は黒い液体を自分を中心とした球形にした。そこに火の槍が触れると、槍は消失した。何を操っているのかわからないが、どうやら魔法だけでどうにかしようというのは無理らしい。キレている彼でも、相手を殺そうとは思っていない。彼女たちが見ている前では殺しをすることは許されない。彼女たちの目の前で悲劇的なことを起こしてはいけないのだ。


「あれをやるか。みんな、少し隠れてて」


 そう言って、彼は超能力を使用して、彼女たちをその中に入れる。彼の聴能量は何でも入れることが出来るのだ。ただし、意識があり、その中で動き回ると、それだけその者の時間は進んでしまう。だが、それも妖精ならあまり変わらない。妖精たちには正確な寿命はないのだから。


 妖精たちが全員隠れたことを確認すると、彼は体をふわりと浮かせた。次の瞬間には相手の真上に移動した。だが、彼はそれそこでそれ以上に体を動かすことが出来なくなった。それを理解した瞬間に再びテレポート。元の位置に戻り、彼は、相手の背中側にテレポートする。その位置に移動しても再び彼の体は見えない何かに押さえつけられたように動かなくなる。再びテレポートを使用して逃げるしかない。


「攻めあぐねているのかな。ボクの力にテレポートで叶うはずはないってわかった?」


 相手は態度を大きくして、腕を組んで踏ん反り帰っている。何もしなくても勝てるというそういう超能力なのかと思ったが、そう言う超能力を使う者はこういった挑発をするはずがない。自らの勝利に必要な行動を手放すというのは馬鹿にすることだろう。それが罠だということはあるかもしれないが、そう言うことが出来るような頭を持っているようにも見えない。


「火よ。ファイアバレットっ」


 彼の目の前にひとつだけ火の球が出現する。異世界で使ったときにはもっと多くの火を操ることが出来たのだが、この世界には異世界ほどの魔気はないということなのだろう。彼はそれを鼻って、すぐにテレポートする。


「水よ。ウォーターバレットっ」


 相手にファイアバレットが着弾する前に、水でできた弾丸がそれにぶつかる。その瞬間に、それらは爆発した。異世界の魔法の法則ではその二つがぶつかって起こるのは爆発ではなく、氷が生成される。だが、この世界の法則に則っているのならば、当然爆発するだろう。


「うわっ」


 相手は爆発に驚いて、自ら視界を遮った。それを彼は見逃さない。


「風よ。ウィンドカッターっ」


 彼の前に薄緑色の薄い鎌鼬が出現して、それは相手に向かって飛んでいく。それは相手にぶつかっているのだが、彼女の体が斬れることはなく、ぶつかったと同時に衝撃を与えて、消滅した。威力の低い魔法はこの世界では衝撃に変換されるようだ。異世界では、威力の低い魔法は物体や体を通り抜けて、その部分の魔気を一時的に消失させる。この世界とはルールは違うようだ。


「土よ。クレイピラー」


 相手の足元から細い土の柱が出現して、彼女の体に絡みつく。だが、それは彼女の周りにある黒い液体で消されてしまう。


「まさか、ボクが一撃でも淹れられるとは思わなかった。褒美にボクの力を教えてあげよう。ボクの超能力は、虚を掴み実を操る能力なんだ。意味が分からない? それも当然だ。ボクだけの特別な力なんだからね」


 彼女は気分良さそうにカラカラと舌を回して喋る。もはや、攻撃されたことも気にしていないような風だ。

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