足掻いて渡って 3
「ふふふ、うふふふふっ。さぁ、もっと血を見させてもらうわ。貴方達の異質な血をもっと噴き出させてあげるっ!」
菜乃花は興奮状態にあった。タコ型エイリアンの血が、彼女をそうさせてしまう。ここに彼女以外に人がいれば、彼女とも戦わなければいけなかっただろう。混戦にならないようにするための処置が、結果として彼女からほ他の人も守る結果になっていた。
彼女が興奮していようと、タコ型は関係なく攻撃を続ける。攻撃方法が触手しかないためか、触手を叩きつけたり、パンチのように突き出したりするだけのワンパターンな攻撃方法だ。彼女はその攻撃の全て赤い血の刃で持って斬り裂いていた。しかし、攻撃方法こそワンパターンではあるが、その超回復のせいで、斬った触手も引っ込めるころには元に戻っていた。このままカウンター的な攻撃を続けていても、体力が底を尽きれば、彼女は超能力を使うことが出来なくなる。そうなってしまえば、どれだけ体が渇きを感じていようと、彼女はただの人間に戻ってしまう。そうなれば、タコ型のエイリアンには勝つことなどできないだろう。
「あはははっ! もっと攻撃してきなさいよ。そっちから来ないなら、私の方からやりますよっ」
もはや、普段の落ち着いた彼女の様子はそこにはなかった。彼女の周りには真っ赤な水玉が出現していた。それらは、タコ型に向かって鋭い棘のような形になった。
「まずは、これくらいは耐えてくれるかしら!」
彼女がタコ型を指さすと、赤い棘が相手に向かって飛んでいく。いくつもの針が、エイリアンの体を貫いていく。触手だけではなく、頭の部分にも穴が空いていく。そして、元は彼女の血だったその棘が緑の血を回収していた。血液が緑の血を取り込んで真っ赤に染めた。
「ああ、そうだそうでした。忘れてました。いや、今知ったのかもしれません。貴方の血がどんなものでも私のものになれば、私のと同じ血になるんでした。あははははは! ごちそうさま」
エイリアンの血が自らの渇きを少しだけ潤してくれたことに、更に興奮状態は酷くなる。本当に今の彼女は味方と敵の判断がつかないくらいに興奮していた。今の彼女は血を取り込むことにしか、心が向かない状態だ。
彼女は続けて血で攻撃する。棘だけではなく、血で作った刃を交えて、より出血する方法で相手をいたぶる。タコ型の超再生のせいで、どれだけむごいこ攻撃をされても死ぬことは出来ない。彼女は超再生でも修復できないギリギリまで攻撃をしていた。
「あははは、うふふ、あっはははは!」
深い渇きが潤っていく快楽で彼女は狂っていた。
「校庭か、昼は一般人の活度する場所で、敵を倒す。悪くないね」
「竜花、格好つけてないで、戦いますよ!」
「わかってるよ! 少しくらいいいじゃん!」
蓮花と竜花は校庭にテレポートしてきた。既に校庭は商店街と同じような状態になっている。まだ、夕方であるため、元のこの場所にはまだ人はいるだろう。だが、二人が作った空間があれば、現実には全く影響が出ないようになっている。しかし、あの部室と違い、ずっと残すことが出来るほど強力な物ではない。さすがに三十分や一時間ほどで解除されるほど弱いものではないが、半日も残せるものでもない。それに、早く倒す分には他の人の手助けもできるため、蓮花としてはこの三体をすぐにでも倒したいと考えていた。竜花もそれは理解しているのだが、格好つけたいシーンででは恰好つけないと気が済まないのだ。
竜花が恰好つけている間に、蓮花は前に出る。先に動いた彼女を触手が狙う。触手が到達する前に、彼女はテレポートで移動する。移動先は相手の頭の上だ。しかし、相手にはその位置はテレポートを使用したとしても見え見えの場所だった。タコ型の頭の傘の部分には周囲を見回すために目が円を描くようにしてついているのだ。
「蓮花、接近しすぎ!」
今度は竜花が影を操り、相手の体の動きの制御の一部を奪い取る。相手の影に自身の影を触れさせ、相手の影を操り、相手の動きを操る。
「いわれなくとも、私にはテレポートがありますから!」
彼女は相手の頭上から相手の傘の下に指導した。その位置から傘に向けて思い切り、カッターで斬りつけた。刃の通りが魚をさばいているかのような感触がする。しかし、カッターで斬りつけたところで小さな傷鹿生まれない。四メートルはありそうな巨体に対して、文房具のカッターナイフで傷をつけても全く、無意味だ。その証拠に彼女が傷つけた場所からはほとんど血は出てきていない。彼女は再びテレポートして、竜花の元に移動した。
「ほら、テレポートだけじゃ勝てないよ。ボクと連携して倒そうよ」
「そうね。でも、少し待っててください。竜花の真似ではないですけど、私も必殺技を考えてきましたから」