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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
27 異界に呑まれる
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異界に呑まれる 2

 猩花がどこかに飛ばされている少し前のこと。朝野姉妹と白希たちは学校を出ていた。もう夕方で、彼らを照らす光は橙色だ。その時間になるまで、彼女たちは部室の中でダラダラと過ごしていただけだった。そもそも、何か対処するものがない時には活動する必要もなく、そう言ったときには各々が好きなことをして過ごしているだけだ。菜乃花はベッドの上で途中まで本を読んでいたが、いつの間にか眠っていた。蓮花は翌日の宿題を片付けて、予習をしていた。竜花はライトノベルや漫画を読んだり、携帯ゲーム機を弄ったりしながら過ごしていた。猩花は熊のぬいぐるみの小太郎を膝の上で抱きながら、絵を描いていた。彼女の近くでフレイズが彼女の描くものを見ながら二人で楽しそうに話していたのだ。その日の白希は蓮花のスペースにある椅子に座りながら、彼女の隣で宿題を片付けていた。たまに蓮花の様子を見て、彼女が困っているようなら教えながら、自身の問題を適当に解く。プロイアが彼のノートを見ながら、時折質問して、彼がそれに答えていた。ミストは彼の肩に乗りながら、目を閉じていて、ファスは彼の頭の上で大の字になりながら昼寝をしていた。


 各々適当に過ごしている間に、外は夕方になった。蓮花が帰る時間だと言うとそれぞれ帰る支度をして部室を出てきた。それから、買い物をするために商店街に寄ることにしたのだ。彼女たちは商店街の方へと足を運んだ。周りには特に変わった様子はなく、菜乃花の隣を蓮花が歩き、二人の後ろには白希と竜花が楽しくお喋りをしていた。白希の隣、猩花はフレイズと話しながらみんなから少し遅れて歩いていた。喋りながら歩いていたせいで四人から遅れていたが、彼女も四人もそれには気が付かない。遅れているとは言っても声が聞こえているのだから、そこまで離れていないと感じていた。実際にそれは間違いではなかった。遅れていると言っても、竜花が白希の方を見れば視界に入っていたし、白希も猩花がそこにいると感じられるほどには近かったのだ。


 だが、唐突に彼女の声が聞こえなくなった。フレイズの声と共に猩花の声が消失した。そのことに白希が彼女のいた場所を見る。竜花もほぼ同タイミングで猩花がいた方へと視線を向けた。だが、そこには誰もいない。商店街の手前、まだ商店街の入り口を示すアーチを潜る寸前で、彼女は消えた。蓮花と菜乃花が二人の足が止まったことに気が付いて、二人も振り向いた。だが、そこには白希と竜花しかいないのだ。


「猩花はどこに行ったんでしょうか」


 あまりに一瞬でいなくなったことで、戸惑いと動揺が蓮花の言葉に現れる。あまりのことにその言葉は棒読みで、現状を正しく理解してないことがわかるだろう。だが、それは他の姉妹も同じだ。猩花がいなくなったことについて、冷静に頭を回すことは出来ない。そして、それは白希も同じだ。猩花と共にフレイズも消えている。冷静に現状を考えることが出来なくなる。


「フレイズも、いない。どこ行ったの」


 彼の口からも先ほどの蓮花と同じような言葉が零れる。二人に何があったのか、すぐには理解できなかった。


「シラキさん。フレイズとの契約はどうなっていますか?」


 そう言ったのは、プロイアだ。妖精たちは冷静だった。ミストもファスも騒ぐこともない。ファスとミストはそれぞれ魔気を利用して、フレイズが近くにいないかと探っていた。


「あ、大丈夫。フレイズとの契約は続いてる。存在も弱くなってない」


「それなら、とりあえずは大丈夫ってことね。心配なんかしてないけどねっ」


「でも、未来視には映らない。まだ、足りない」


 ファスが彼の頭の上で腕を組みながら仁王立ちしていた。ミストは自身の超能力も使い、フレイズが帰ってくる未来を引き寄せようとしたが、その未来を引き寄せることが出来なかった。未来を手繰り寄せるには、その未来に行きつくために情報が足りないということだ。


 白希と妖精たちのやり取りを見て、姉妹たちも冷静さを取り戻す。菜乃花がスマートフォンを取り出して、猩花への連絡を試みる。しかし、彼女には繋がらない。何度かかけ直したが、繋がることはなかった。菜乃花の様子を見て、他の姉妹も連絡してみたが、誰も彼女には繋がらない。


「……いきなり、人が消えるなんてオカルト、ボクは一つしか知らない。神隠しだ」


 竜花の言うことは理解できるが、その現象がわかったところで、対処のしようがない。神隠しに遇ったとして、二人はどこに飛ばされたのか。現象の元がわかれば、それを絶てば、彼女は戻ってくるだろうが、この神隠しを起こした原因がわからない以上、すぐにどうこうすることは出来ないだろう。

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