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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
26 肩は並べられない
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肩は並べられない 3

 蓮花が空を見ると、そこには特に何も見えなかった。だが、その音が気のせいとは思えない。今の音が出るようなものは空にはないだろう。


(今の音……金属っぽい? ……フェンス?)


 空にはフェンスはない。フェンスがあるとすれば、校庭だろうか。しかし、校庭でその音が鳴ったとして、自分が居る場所まで聞こえるとは思えない。もっと近くでなければ、今の音量で聞こえるとは思えない。


(空にフェンス、と言えば、屋上? でも、簡単には入れないはず。いや、だからこそ、かな)


 彼女はその音源が屋上だと予想して、屋上へと向かう。彼女は急ぐために、テレポートを使用した。




 彼女が屋上の方へとテレポートすると、そこには保健室の前にいた悪霊の男子生徒と、保健室の中にいた前髪の長い女子生徒がいた。女子生徒はフェンスと共に、空中に体を放られている。それは明らかに彼女が自ら飛び込んだようには見えない。彼女は女子生徒が落下を始めると同時に彼女の近くにテレポートする。すぐに彼女の体に触れて、テレポートする。人の目に触れるような場所にはテレポートするのは避けたいため、彼女はテレポート先に屋上を選ぶ。彼女を救出してから、フェンスが地面に落ちる前に再びテレポートを使用した。フェンスも屋上へと移動させる。大事には至らなかったが、怨霊は未だに健在だった。


「……助かった。お礼は言っておく。ありがとう」


 多少不機嫌な様子ではあったが、蓮花が助けなければ、彼女はどう考えても死んでいた。彼女もそれを理解しているからこそ、お礼を言わなくてはいけなかったのだ。本当なら自身の力でどうにかしたかったが、さすがに超能力でもなければ、その力に抗うことは出来ないだろう。


「いえ、お礼はいりません。私もこの男の居場所が分かったのですから。お互いの幸運と言うことにしておいてください」


「おいおい、何だよ。台無しだ。そいつが涙を流して落ちていくのが視たかったんだがな」


「そうですか。そういった悪事もそろそろ納め時です。貴方にはここで成仏してもらいますから」


 だが、口ではそう言っている蓮花だが、目の前の悪霊を相手にするだけの力量は彼女にはないことは理解できている。だから、彼女は夕来の方へと振り返った。


「すみませんが、貴女の力をお貸しください。この男を倒すまででいいので」


 夕来は彼女を横目で見ながら、自身の力量だけでは男子生徒を倒すことは出来ないということは理解していた。だから、彼女は一つ頷いて、協力することを肯定した。


「……これ、使って」


 彼女は透明な液体の入った小さなペットボトルを投げて渡された。彼女はそれが何なのかは分からなかったが、そんなことは考えずに、協力すると態度で示したことでそれが何らかの効力を持つことを理解する。彼女はその液体を飲もうとした。


「違う! あれに掛けるの!」


 夕来の大きな声に反応して、彼女は傾けたペットボトルを地面と垂直に傾け直す。そのペットボトルを持ったまま、テレポートして相手の頭上に出現した。その位置からペットボトルを上下逆さまにした。夕来の作った聖水が相手の頭上でぶちまけられる。悪霊からすると恐怖だろう。自身の体を深く傷つける土砂降りの雨。だが、彼はそのテレポートに反応できなかった。そのため、頭から聖水を被ることになる。


「う、くそっ」


 彼は体が削れる感覚がした時点でその場所から離脱する。だが、彼には次の攻撃が舞っていた。既に彼が見えるようになっていた夕来は、彼の動きを見ながら、移動先を先読みして、改造スタンガンを構えていた。


「速――」


 彼が言葉を言い終わる前に、改造スタンガンの最大出力で電撃が放出される。悪霊の彼の体が、画面のノイズのように途切れ途切れになる。しばらくの間、電撃が彼の体全体を攻撃し続けて、やがて改造スタンガンの電気を通す部分が焼き切れると同時に途切れ途切れだった彼の体が元に戻る。だが、その色が薄くなっていた。


 蓮花はその改造スタンガンが電気を通して、バチバチと言う音を発して光るのを見ていた。そのため、電気が流れなくなったのは電気を通す部分が無くなったからだと気が付いた。彼女は壊れたフェンスの網の部分に触れて、その一部をテレポートさせる。その行き先は夕来の持つ改造スタンガンの先端だ。


「もう一度、電撃を流してください!」


 蓮花の声が彼女に聞こえた。だが、夕来は既に改造スタンガンの通電部分が焼き切れているのをわかっていた。だから、彼女の言葉には従えない。そう思った。だが、彼女は再び、スタンガンの先端を男に付きけて、トリガーを引いた。その瞬間、先ほどよりは弱いものの、それで高出力の電気が流れ出る。その威力の電撃を男は二度も耐えられるはずもなかった。


「くそ、くそ、くそっ。ここで終わりかよ。ふざけんな、ふざけんなぁぁあ!」


 男の断末魔の叫びは二人以外には聞こえない。

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