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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
3 終わる夏休み
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終わる夏休み 3

 暗闇の中、何かがいた。それは黒い塊だ。それは真っ黒な髪に見えるが、それが本当に髪の毛なのかはわからない。とにかく、見た目は不気味なやつだ。異世界でもそんな魔獣は見たことはない。そもそも、魔獣は何らかの動物に似ていることが多い。全身髪の毛みたいな動物がいないため、それに似た魔獣もいないのだ。


「チョウノウリョウシャ……コロス。オマエは、チョウノウリョクシャ?」


 髪の塊からそんな言葉が聞こえてくる。どこから声が出ているのか、その声はどこから聞こえているのかわからない。だが、相手の声は確実に彼らに聞こえていた。さらに同じ声ではあるのだが、それが二重、三重になって聞こえてくる。


「そう言うあなたは何者なのかな」


 白希は髪の塊を挑発するように訊いたのだが、相手にはそれに応えるそぶりは一つも見せない。彼が答えないと見ると、彼らに攻撃し始めた。彼に向けて、黒い髪の塊から髪が伸びていく。それだけではなく、相手の作り出したであろう暗闇から、彼らに向かって、髪の毛が伸びていく。だが、彼にはその攻撃は届かない。華麗な身のこなしと言うわけではなく、彼が自分に向かってくる髪の毛に触れると、髪の毛が塵になり、崩れていくのだ。それはフレイズの超能力だ。彼女の超能力は触れた固形物を粒子状、つまりは塵にするという力だ。触れるだけで崩壊させることは出来るが、いつでもその状態というわけでもない。使用者が、壊したいと思う物だけを壊すことが出来るのだ。それほど強力な力であるため、フレイズも盗賊に捕まっていた。それを助け出したのが彼女との関係の始まりだった。


「キサマ、は、コロス。コロス、ワタシの、テキ、テキ、テキ」


 超能力者と言うことがばれ、相手の髪の動きが激しくなる。先ほどより多くの髪の毛が彼を狙う。崩壊の超能力は手で触れなくてはいけない。例えば、背中側から這い寄られて、攻撃されればそれに対応して崩壊の超能力を使うことは出来ない。だが、相手の動きは単調だった。人のように知能や戦術のあるような戦い方ではなくのだ。物量と言う力押しだけで、彼を倒そうとしている。彼にはその戦法は効果がないだろう。なぜなら、彼もその戦法を幾度となく使ってきているのだから。


「髪の毛だっているなら。フレイズ。フレイムウォールガイザーっ!」


 彼の周りに炎の壁が沸きあがる。それは彼の身長の苦い以上の火の壁となる。髪の毛が火の壁を超えることは出来ずに、触れるだけで燃え上がる。髪の毛は帆の壁を避けて、空から壁の中に侵入してくる。だが、それこそ、彼には無意味だろう。一方校からの物量だけの攻撃に対処できなければ、異世界での戦闘で生き残れるはずがないのだ。魔獣は群れで行動する種類もいる。その数を相手にするならば、腕に覚えがある問うだけでは全く歯が立たないだろう。


「フレイズ。レッドドラゴンブレス!」


 彼は両の掌を正面に向けた。そこに小さな火の球が出現する。そして、その火球からは彼の前方広範囲に火炎放射をまき散らす。全ての髪がその火に触れて燃えていく。彼の周りにある全ての火が消失されると共に、燃焼した髪の毛が辺りに落ちている。火をくすぶらせて、煙を上げていた。髪の毛の塊は、次の攻撃を仕掛けようとはしていなかった。反撃する気がないなら、と彼は掌を相手に向けた。その行動に相手は全く反応しない。


「フレイズ。ヒートレイ・シックッ」


 彼の掌ではなく、彼の周りに白く光る光球が現れた。そして、そこから、オレンジ色の太い線が相手に向かって真っすぐ伸びる。それの進路上にある、煙がその衝撃を受けて、霧散する。音こそしないものの、それがかなりの勢いを持っているのはそれだけでわかっただろう。だが、その熱光線は相手には当たらなかった。それは回避されたわけではなく、相手がいきなり目の前からいなくなったのだ。暗闇を既に消えている。


「ジャマが、ハイ、ハイッた。ツギは、ココ、コロコロス」


 その音だけが彼の耳に伝えられた。それの正体が何なのかわからないが、妖精たちの危機が去ったのなら、それでいいと彼は考えていた。だが、彼はすぐに近くに気配を感じていた。彼が再び辺りを警戒したのだが、彼の警戒を潜り抜けているのか、テレポートなのか、それは彼の目の前に出現した。


 黒い髪をツインテールに結び、大きな目は多少釣り目気味。その瞳の色は赤色で、病院で使うような白い眼帯を左目を隠すように着けている。その眼帯の奥にある目も赤色なのかはわからない。顔は小さく、その顔のパーツも小さく、バランスが良い。スレンダーなスタイルで、服装はどこかで見たことがあるような制服を着ている。紺のブレザーにひざ丈くらいの濃紺のスカート。そして、彼女のブレザーの袖からは真っ白な包帯が伸びていた。

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