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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
24 不気味な教師
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不気味な教師 4

 夕来は改造スタンガンを持ったまま、女教師と対峙する。彼女の勝ち筋は相手の無知と彼女の知識だ。彼女はとにかく、相手に改造スタンガンが効くことは理解している。だが、近づく手段がない。彼女は攻めあぐねたまま、相手のと睨みあうだけだった。




 彼女が保健室に行く前の、朝野姉妹の部室には白希が来ていた。既にそこには朝野姉妹全員がいて、今からそれぞれの校舎に登校しようとしているところだった。


「あ、お兄ちゃん。朝からどうしたの?」


 彼に最初に気が付いたのは今まさにドアから出ようとしていた猩花だった。ランドセルを背負っている。彼女は不思議そうな顔をして彼を見上げていた。


「蓮花はいる?」


「どうかしましたか?」


 彼女は自分のスペースに作られたカーテンで仕切られている場所から顔を出していた。そのままカーテンをシャッという音を立てながら、レールの端によせた。彼女はピシッと制服に着替えて、鞄を持っている。彼女は登校するための支度をしていたようだ。彼は一言すまないと断ってから、話を始めた。


「今日は高校の校舎の中に入らない方が良いかもしれない。みんなが校舎の中に入る前に嫌な予感がするって言ってるから。妖精の勘は人間の勘に比べて、当たることが多いんだ。だから、今は校舎の中に何か悪いものがいるかもしれないみたい」


 その言葉を聞いて、蓮花少し考える。だが、それは学校に行くか行かないかではなく、出会ったときに自分一人で対処できるかどうかである。今日の自分の調子を考えて、一人でどうにかできるなら、他の人には迷惑を掛けずに済むだろう。だが、そうでなければ、誰かの助けが欲しいところだった。


「ありがとうございます。ですが、学校を急に休めば、他の人に心配をかけてしまいます。何かあるかもしれないというのは頭の中に入れて、注意しておきます。……その、もし、私が助けを求めたら助けに来てくれますか?」


 彼は彼女の言葉に施行する。彼女を助けるということは確実に、妖精たちもその危険に巻き込むことになるだろう。それを避けるためにここに来たというのに、助けに入ってほしいなんてことは無理だろう。もし、彼女たちをここまで助けてこなければそう言ってやれたのだが、今の彼はそう言って彼女たちを突き放すことに抵抗がある。もはや、赤の他人とは思っていないのだ。


「あ、ごめんなさい。無理ならいいのです。私はテレポートで逃げることもできますから、情報を持って帰ってきて、姉さんたちと戦うこともできますから」


彼女はそう言うと、鞄に教科書やノートを詰めて、部屋を出た。彼女の質問に結局は返事することは出来なかったが、彼女が助けを求めるというのなら助けようとは思っていた。


 蓮花にその話をするということは、そこにいる他の姉妹にも同じ話が聞かれるということである。菜乃花は心配そうに彼を見つめていたが、何も言わなかった。また、蓮花が一人で無茶をしないかどうかが心配なのだろう。先に注意を受けても、正義感の強い彼女のことだ。人が襲われていれば、黙ってやり過ごすなんてことはしない。彼女なら確実に助けに入ってしまう。そのせいで彼女が傷つくのは見たくはないのだ。この前の竜花のようなことになったらと思うと、体に力が入らなくなる。だが、彼女にそれを止めてと言っても聞くはずもないし、それを止めてしまえば、おそらく彼女らしさと言うものが失われてしまうだろう。


「白希。ボクも高校に行きたいな。何かあるなら、蓮花だけじゃ戦えないはずだよ。だから、もし何かあったらボクも連れてってよ」


 竜花は彼の背後まで移動して、わくわくした瞳でそう言った。だが、放課後でもなければ、彼女を呼ぶことは出来ないだろう。


「余裕があったらね。そもそも僕だって何が起こるかわからないし、何も起こらない可能性だってある。だから、必ず呼ぶとはいえないね」


 妖精が四人とも嫌な予感がすると言っているのだから、あの校舎の中に要請に対して危害を加えるような環境があることは間違いないとは思うが、それでも絶対にそうだとは言えない。異世界にはなくとも、この世界では当たり前にあるものに対してそういう感覚があったというだけのことかもしれない。


「お兄ちゃん。私も一緒にやる! やりたい!」


「ありがとう。猩花の力が必要になったら呼ぶよ。ほら、小学校に行ってくると良いよ」


 彼は猩花の背を軽くポンポンと叩いて、学校へと行かせようとしていた。猩花は何となく、あしらわれているように感じていたが、そもそも白希お兄ちゃんは自分の力を借りずとも、一人で化け物とも戦っていたのだ。自分は足手まといになるかもしれないと考えると、助けに入ることは出来ないかもしれないと、頭の良い彼女はそう考えた。実際には白希はそんなところまで考えていない。相手もわからない以上、猩花に戦わせるのは不安だというだけだった。


 それから、彼女たちはそれぞれの学校へと登校していく。

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