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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
24 不気味な教師
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不気味な教師 3

 保健室の中、夕来の持つきらりと光るナイフがおかしな女教師の首元に向かって振り下ろされようとしていた。相手は防ごうともせずにそのナイフを受けようとしていた。彼女はそれに気が付いたが、ナイフを止めることは出来ない。いくら万能の雪であっても、空中で体勢を変えることは出来ない。彼女は超能力者ではないのだ。彼女の振るうナイフは止まることなく、女教師の喉を確実にとらえたのだが、血が出ることも、切り傷を作ることもなく、それどころか、彼女の振るったナイフが弾かれる。彼女の体がその勢いのせいで、上半身が弾かれた腕に振られて、半周程回転して、地面に降りた。彼女は敵に背を向けた状態になる。だが、相手はそれに何かするわけでもなく、彼女はすぐに体を反転させて相手の方へと向けた。


「生意気いうだけのことはあるのね。実は普通の人間じゃないとか?」


 女教師は未だに余裕を持っていた。彼女がナイフを持っていることにもそれを振るったことにも驚きはなく、ただ単純に彼女の身体能力の高さを評価しているようだった。《《普通》》の人間は彼女の程にも動けない。彼女は動くことに置いては天才的な潜在能力を持っているというだけだ。頭の回転も悪くない。だが、それでも超能力者のような特別な力を持っている人からすれば一般人の域を出ないのだ。ただの身体能力の強化であれば、彼女は機転を利かせて、勝利することが出来るが、魔法のような力を使ったり、認識や記憶を変化させれたり、すれば彼女はそれに対抗するための力を持っていないため、勝つことは不可能であった。そして、それはそういう超能力を持っている人たちからすれば、考えるまでもなく、負ける未来はないと確信できるのだ。だからこそ、女教師は余裕があるのだ。そして、その理由も彼女は理解している。


(やっぱり、手段がないと、勝つことは出来ない。どうにかして逃げて、支度してからじゃないと勝てない。この前みたいに、力押しだけで勝てる相手じゃない)


 だとしても、何を使えばこの相手から逃げることが出来るのかはわからない。幸いなのは、ここが保健室と言うことだろう。さすがに理科室にあるような危険な薬品はないだろうが、薬に使われるようなものは沢山あるだろう。


(アルコール、包帯くらいはあるかな。後は薬の詳しい知識がないと使えない。今の私じゃ駄目)


 彼女は机の上に出ていた包帯を掴む。彼女が行動をしても相手はそれを止めようとはしない。邪魔をする気もないようだ。最初こそ、彼女が生意気な小娘だと思っていたのだが、その言葉を使うだけの実力があることが分かった。ならば、ただの人間が自分にダメージを与えられるのかに興味がでた。そして、もし少しでも自分にダメージを与えらるようなら、どこまで自分と戦えるのかも試したいと思っている。だから、彼女は不気味なほどの楽しそうな暗い笑みを浮かべて、彼女がどんな行動に出るのかを楽しみにしていた。


(包帯を盛ったはいいけど、改造スタンガンも使ってない。これを先に使うべきだね。幸いにも相手は、私のことを舐めてる。それが強者の弱点だ)


 彼女は包帯を適当に伸ばして、ドアの近く、部屋の隅に作られた、おそらく掃除用の水道から水を出した。彼女は包帯をそれに浸した。自分の手に水が着かないように注意しながら、濡れた包帯を相手に向けて投げた。相手はそれを防御するわけではなく軽く移動して避けた。


 彼女は包帯を投げると同時に移動する。彼女はポケットから改造スタンガンを取り出した。一度、動作確認のために軽くトリガーを押し込むとそれだけで、ばちっという音が彼女の耳に聞こえた。彼女はそれを自身の体で隠したまま、相手の目の前に立った。その状態で彼女は改造スタンガンを女教師の腹に差して、トリガーを押した。まだ壊すわけにはいかないので、二秒ほど電撃を食らわせただけで、改造スタンガンを引き抜いて、相手から離れる。一般人なら、二秒でも耐えることは出来ないであろう改造スタンガンを受けて、多少はダメージを与えらえれていることを祈る。


「今のは、電気? 今の攻撃は何なの?」


 女教師は驚いていた。


(電気を知らない? そんなはずは……。いや、可能性としてはあるのか。二重人格が最近出てきて、記憶を共有してないとなれば、電気の仕組みを知らないなんてこともあり得るのかもしれない)


 彼女は手に持った改造スタンガンが勝利の鍵であることが分かった。電気の仕組みを知らないとなれば、他のことも知らない可能性がある。この部屋の中で言えば、アルコールが燃えやすいや、水が電気を通しやすいというところだろうか。


 彼女は自身の逃げるための鍵が見えた気がした。

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