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決定的に何かが違う世界でも  作者: リクルート
23 もどる絆
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もどる絆 4

 情報を交換した結果、蓮花が関わっていたあの男が案外、この町のオカルトの大部分の原因になっている物を知っているということだったが、既に蓮花とあの男の間には繋がりはない。あの男が再び、彼女に声を掛けてくるとは思えない。あれだけ力の差を示しておきながら、未だに上から目線で協力を仰ぐとは思えない。それにあの逃げ方で、下手に出て協力してくれと言うような性格とも思えない。オカルトの手がかりの一片を掴んだだけで、それ以上の情報はなかった。


 情報の交換が終わった後はそれぞれが好きに過ごしていた。


 その中で菜乃花だけは自身の超能力に不信感を抱いていた。自身の超能力ではあるものの、今回は自身の制御を離れるどころか、自身もその渇きに対して抵抗することもせずに、超能力に同調していた。超能力に操れていたと言ってもいいだろう。ヴァンパイアと言うは強力な力を持っているが、まさか自身の心をこえて行動してしまうとは考えていなかったのだ。さらに、彼女は黙っているが、未だに吸血したいという欲は消え切っていない。戦ったことで、体力が消耗されて、超能力を発揮できない状態だからこそ、暴走していないのだと彼女は考えていた。明日になり、体力が回復すれば、再び暴走する可能性がかなり高い。今日の朝のこともあり、自身の暴走が怖くなるが、ずっと逃げ続けるわけにはいかない。蓮花も戻ってきてまた全員揃ったのだ。ここで、この欲をどうにかしなければ、今度は自分がここにいられなくなってしまう。それは、それだけは嫌だった。彼女は一人自身の超能力と向き合う覚悟をしていた。


 それから暗くなるまで部室にいたが、白希だけは自身の家に帰ることにして、部室を出る。その時には、彼もこの部屋に自由に出入りできるようにしてもらった。帰るときは彼自身が扉を開けて、外に出た。外には古びた部室棟の手すりが見えていた。彼はそれで、本当にその部屋の出入りの権限をもらったことを実感した。そして、朝野姉妹に見送られて帰った。




 その白希の姿を後者の中から見ている物がいた。茶色の髪で目が隠れている女生徒だ。彼女はスマホを彼の方に向けて、シャッター音を鳴らさずに彼を撮影していた。彼女のスマホの中には明らかに盗撮しているアングルの写真がいくつもあった。しかし、どれも遠くからで近くで撮影しているものは一つもない。それでも、彼女は満足していた。


(久しぶりに、楽しそうな王子様。私も幸せになっちゃう)


 彼女はスマホに保存されている写真を見ていた。今日撮影した写真の一覧が表示されている。その全て白希を盗撮したものではあるのだが、その中に不思議なものが映っていた。それはこの世界にはいないような化け物だ。巨大な鳥と、古生代に存在してそうな見た目の化け物。空中を泳ぐようにしていたのを彼女は目撃していた。それ以外にも、不審者の男もいたし、悪魔のような翼を持った朝野姉妹の長女もみた。朝野姉妹の次女も瞬間移動をしていたように見える。


(超能力を使えるのは王子様だけじゃないってことだよね。私も何かそう言うのがあれば、王子様に話しかけてもらえるのかな)


 彼女は超能力を使って、あの化け物に対峙して負けそうになる妄想をしていた。そして、自分が膝を付いてもう駄目だと思ったときに颯爽と彼が登場するのだ。そして、首だけ振り向いて、大丈夫かいと訊いてくれる。彼女は首を動かすだけで返事をし、それをみた彼は一つ頷いて、一瞬で魔獣を倒してしまうのだ。


(そして、彼は私の手を取って立ち上がらせてくれる。そして、怪我を治すために家に招待されたりして!)


 彼女は止まらない妄想をしながら、一人ではしゃでいた。周りには他の生徒は既におらず、後者に残っている生徒はほとんどいない時間だ。


「あら、こんなところでどうしたの? 生徒はそろそろ帰る時間よ」


 妄想している夕来はいきなり声を掛けられた。いくら妄想していても、人のいない場所で歩けばそれなりに音がするはずだが、全く音がしなかった。しかし、彼女はそれに驚くことなく、教師の方を見た。


「あ、すみません。帰ります」


「ええ、そうね。そうするべきだわ。さようなら」


 彼女は自身の前髪の隙間からその教師を視認した。黒く低いヒールの靴に黒いパンストを付けている。膝上のほどの丈の灰色のスカーとを付けている。服は白いワイシャツを付けていて、第一ボタンは留められていない。その上から白衣を着用していて、前は開けていた。細く長い首にしゅっとした輪郭。唇は赤く、高い鼻があり、切れ長の目には光の無い黒い瞳があった。ロングの髪には艶がある。見た目は保健室の先生と言った見た目だが、夕来はその教師を保健室では見たことはない。単純に三年を受け持っている教師なのかもしれない。それならば、夕来が彼女を見覚えが無くてもあまりおかしなことにはならない。その教師は光の無い瞳で微笑みながら彼女に挨拶をしていた。

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