もどる絆 3
蓮花が戻ってきて、皆が元の様子に戻ったころ、蓮花が口を開いた。
「みんな、それぞれのあった出来事を話し合いましょう。私もそうだけど、蓮花ちゃんのことも訊きたいわ」
菜乃花の提案に蓮花も賛同して、すぐに話し始めた。ある超能力者に脅されていたこと。それに協力させられて何かの情報を集めるのを手伝わされたこと。そして、その何かは、この町に多くのオカルトを呼び込んでいる原因だということ。最後の情報は彼女たちにすれば、大発見と言えるだろう。彼女たちが進んでオカルトと戦いたいと思っているわけではないのだ。この町が平和になるというのならその方が良いに決まっている。
「その原因はわかってる?」
竜花がいつもの口調で彼女に訊いた。彼女は既にいつもの様子を取り戻していた。
「それは、わかりません。残念ながらこちらの情報を聞くだけ聞いて、あの男が集めた情報はほとんどこちらには教えてくれませんでした。そもそも、脅しているとはいえ、私のことを信じてはいなかったのでしょう」
竜花はその返事に対して、いつものように突っかかるようなことはせずに、落ち着いて頷いていた。蓮花が何を相手にしていたか知らないが、彼女はそう言うというということはそうなんだろうと勝手に納得する。それにこれ以上何かを訊いても情報は出てこないと感じているのも確かなのだ。
「でも、回収が目的と言っていたから、持ち運びできるようなサイズのものだと思います。それにあの男が一人で調査していたってことは、見つけられれば、あの男一人の力で回収できる物だと考えるのが妥当でしょう」
白希も彼女の話を聞く限りで言えば、同じ考えである。それに彼は他の超能力者と戦っている。予想の範疇を出ないが、あの超能力者たちの仲間かもしれない。他の超能力者と戦った時に他の超能力者は助けには来なかった。おそらく、陰で動くために最小人数で動いているのだろう。
「私がしていたことはそれだけです。菜乃花姉さんたちは何を?」
今まで会ったことを話す。超能力者と戦ったこと。怪力の超能力者に竜花が死に際まで追い込まれて猩花が誘拐されたこと。それも全て、白希が解決したこと。そして、その時に何もできなかった菜乃花が、落ち込んで一人で行動しているときに琥珀に出会ったこと。家で料理を振舞った後に、蜥蜴の宇宙人たちと戦ったこと。菜乃花はその時に琥珀の力のことを琥珀に許可を取ってから話した。そして、自身の超能力が暴走して、人の血を吸おうとしていたことを話した。そこからは蓮花が話し、それを補足するように白希が口を出した。そこでようやく、菜乃花が本当に自身の超能力の暴走でおかしくなっていたことを信じることになった。本人の口からそうきいて、嘘だと疑うことはない。しかし、白希は琥珀を根本から信じることは出来なかった。何せ、妖精たちのことも考えずに攻撃してきたのだ。すぐに許せるものではなかった。
「そ、そんなことになってたなんで……竜花、大丈夫なんですか?」
「ああ、ほら、もうなんともないよ。体も自在に動くし、超能力だって絶好調」
彼女は自身の腕を振りまして、その腕から包帯を伸ばして様々な方向に向けて躍らせる。蓮花もそれを見て、元気なことを確認できて安堵していた。
「それにしても、超能力者ですか。私たちを狙うってどういうことなのでしょうね」
蓮花が首を傾げて、超能力者について考える。
「あれは、組織と言うか、一人一人が暴走してるだけって感じだった。組織だとすれば、あまり統率は取れてないね。目的もわからないし。……トカゲの宇宙人はおそらくレプティリアンってやつだと思う」
珍しく白希が舌を回して話しているため、四人の視線が集まる。彼はその視線を先を話してと言う意味に捕らえてさらに続けた。
「レプティリアンは、普段は人に擬態してるんだ。そして、生物や物、文化の調査をしているって言われてる。おそらく、今回襲われているのは、その調査の邪魔をしてるからだと思うよ」
「調査の邪魔。つまりはその蜥蜴以外のあのへんなグレイ色の奴やタコの奴らを攻撃して追い払っているからってことかな」
「そうだね。ただ、その調査の後に何をするのかはわからない。倒しておいても問題ないと思う」
「そして、琥珀、と言うか九尾ですか。こっくりさんと言うのは有名ですが、それでこんな強力な妖怪を呼び寄せるとは思えませんが……」
「それはわしも同じだ。もはや、わしを現代に呼ぶのはほぼ不可能だ。一般人であれば、絶対に不可能と言っていいだろう。しかし、現にわしはここにいる。それが事実だな」
琥珀は片目をだけを開けて、視線を皆の方へを向けていた。彼自身もこの世界に来ることが出来たことは不思議に思っていたことであった。だが、蓮花の話を聞いて予想は出来るようになった。
「おそらく、オカルトを呼ぶ原因のせい、だろうな。偽物の儀式でもそれが本物と同等の力を得てしまった。そういうことだろう」