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月の手毬 (月星雪✻②✻) 上巻  作者: YUQARI
第二章 澄真と狐丸
9/32

後悔

(……しまった)

 ふと、我にかえって澄真(すみざね)は青くなる。

(勢いで……言ってしまった……)

 この状況を、どうしてくれよう……。澄真(すみざね)は青くなる。

 腕の中では、狐丸が必死になって澄真(すみざね)から、逃れようと身を(よじ)っている。


 何故、言ってしまったのか……。

 澄真(すみざね)は、頭を抱える。


 自分は陰陽師で、相手は妖怪なのである。

 まさに、天敵。

 しかも、狐丸は澄真(すみざね)のことを嫌っていて、事あるごとに、威嚇されるか、逃げられるかしているのだ。

 『好きだ』と言ったところで、到底受け入れられて貰えるはずもない。

(バカなことをした……)


 このままいっそ、自分のモノにしてしまおうか……。

 どす黒い感情が、澄真(すみざね)を支配しようとする。

 しかし、相手は子どもだ。

 『好き』と言われても、その意味すら、理解できていないかも知れない。

「……」

 

「あぁ……っ! もうっ。苦しいってばっ……!」

 不意に、腕の中にいた狐丸の体が離れる。

(……! 逃げられる……っ)

 焦って澄真(すみざね)は、ひしっと狐丸の腕をつかみ直す。

「!」

 狐丸の姿を直視して、ひうっと澄真(すみざね)の喉が鳴った。



 ──白い……っ。



 思わず息をのむ。

 黒く染め上げていた髪の毛と目の色が、元に戻っている。それどころか、頭にはちょこんと狐耳。後ろにはふわふわの大きな尻尾が二本揺れていた。

(いつの間に……っ)

 胸が締め付けられる。

「……っ」

 澄真(すみざね)は、苦し気に、胸元の着物を握りしめる。


 その様子に気付き、狐丸は耳を伏せ目を潤ませた。

(やっぱり、この『色』は嫌いなんだ……)

「す……澄真(すみざね)ごめん。……僕、苦しくて、色が抜けちゃったんだ……」

 今にも泣き出しそうに、狐丸は震える。


「狐……丸……?」

 謝る狐丸の髪に、そっと触れる。

(嫌がられるだろうか……?)

 しかし狐丸は、嫌がる素振りを見せず、少し目を伏せ、されるがままになっている。

「……なんで……あやまる、の……?」

 嫌がらないのをいいことに、そのまま触り続ける澄真(すみざね)

 妖孤の時と同じ、細く柔らかい白銀の髪。


(あぁ……、やっぱり綺麗だ)

 狐丸を手に入れることが出来たら、どんなに幸せだろう……。

 敦康(あつやす)は、無理強いするなと言ったが、本来は無理やり式鬼(しき)にするのが普通なのである。

 (あやかし)の世界では、強いモノが正義。

 弱きモノは強きモノに従う……それが、自然の摂理である。


(今なら私の方が、強い……)

 二尾くらいならば、まだこちらが上。

 いっそねじ伏せて、自分の式鬼(モノ)に……。


「だって、嫌いだよね?」

「え……?」

 不意に、現実に戻され、澄真(すみざね)は、目を丸くする。

(あぁ、会話の続きか……)

「……」

 先ほど自分は、あんなにもはっきり、何回も『好きだ』と告白したはずだ。

 なのに何故、未だに狐丸は自分の事が嫌いだろ、などと言うのか……。やはり、『好き』の意味が分かっていないのだろうか?


 澄真(すみざね)は、狐丸を見下ろした。

 耳を伏せながら見上げてくるその姿に、澄真(すみざね)の理性は簡単に、折れてしまいそうだった。

 ごくりと唾を飲み込む。


「寺で言ってたよね? 黒くしろって。僕のことが嫌いだから……」

 言いながら、金色の目に涙をためた。

「……っ」

 涙を見て、澄真(すみざね)は、ハッと正気に戻り、慌てる。

(私はなにを考えているんだ……)


 そっと、親指で瞼をなぞり、優しく涙を拭い取る。

「なにを、言って……。私はさっき言っただろ……?」

 言いかけて、黙る。

 正気に戻った今は、もう言えない。

「……」

 顔が熱くなる。


澄真(すみざね)……?」

 狐丸が、そんな澄真(すみざね)を覗き込む。

「……っ!」

 直視出来ない……。見てしまったら、きっと終わる。

 澄真(すみざね)は、そっぽを向いた。


「……」

 澄真(すみざね)に伸ばしかけた、狐丸の手が、パタリと落ちる。

「ごめん。ごめんね、……さっき、何か言ったんだよね? 僕聞こえなかったんだ……。人の耳って顔の横にあるだろ? 澄真(すみざね)の腕に塞がれていたし、苦しくてそれどころじゃなくて……」

 狐丸の申し訳なさそうな声が、辺りに響く。

 しかし、澄真(すみざね)の目には、希望の光りが(とも)る。

(……え?)


 狐丸は今、なんと言った? 澄真(すみざね)は、先ほど狐丸が言った言葉を、頭の中で反芻(はんすう)する。

(聞こえなかった……?)

 確かに狐丸は、そう言っていた。

 澄真(すみざね)は、ばっと狐丸の方を向くと、聞き返す。


「え? 今、なんと? 聞こえなかった……っと、言ったか?」

 両方の二の腕をつかまれ、狐丸は驚く。

「え、う、……うん」

 頷く狐丸。

(……聞こえて、いなかった)

 その事実に、ほっとする澄真(すみざね)


「良かった……」

 言いながら、狐丸を胸に抱く。

(良かった……もう一度、仕切り直せる……)

 ホッとため息をつくと、目の前にある狐丸の耳が、くすぐったいのか、パタパタと揺れた。


 それを見て、澄真(すみざね)は、ふふふと笑う。

(ゆっくり、確実に、手に入れる……)

 そっと、耳に触れる。腕の中の狐丸が、ぴくんっと跳ねた。


「す……澄真(すみざね)……っ、くすぐったいっ」

 そんな狐丸を見て、くすりと笑う。

(……絶対、私の式鬼(しき)に、してみせる……!)

 澄真(すみざね)は決心すると、もう一度狐丸を、その腕にかき抱いた。

 ふふ。

 私も後悔しました。

 やっば……告白させてもうた。。。とw


 ふふふ。

 でも復活しました。

 澄真と共に……(こんなヤツと一緒とか……っ)

 この調子なら、こいつら18禁にぶち込められそうです。

 良かった。良かった。(なにがいいのか……)


 次回は澄真のおうちです。

 お持ち帰りしちゃいましたね。

 どうしよう。

 持ち帰る予定なかったんだけど。

 あいつ、当分返さないとか言ってたし。

 どうしよう。どうしよう。。。( ;∀;)


 ……どうにか、なるど。きっと。

 では、次回(*゜ー゜)ノシ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 9/9 ・くっそw 完全に妖怪と化してやがるwww  でもいいな、さぞかし感触よかったんでしょうね [気になる点] んあー、嫌がる狐丸を無理やり… すごいですねこれ [一言] 鉄鼠さん…
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