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月の手毬 (月星雪✻②✻) 上巻  作者: YUQARI
第二章 澄真と狐丸
8/32

誘拐

 あ、またやらかした(笑)

 前回のが長かったので、

 後半部分をこっちに持ってきてます。

 (前回の後半消すの忘れてた(^_^;))

 てなわけで、見た人は

 次に行って下さい。。。

 勢いで、狐丸を捕縛し、担いで来たものの、澄真(すみざね)は困っていた。

(あぁ、やらかしてしまった……)

 どうやら狐丸が相手だと、本来の自分が分からなくなり、暴走するようだ。

(これで、徹底的に嫌われたな……)

 澄真(すまざね)は狐丸を見る。

「……」


 『見る』と言っても、視界に入るのは狐丸の腰から下。力なく、だらんとしている。

 不思議なことに、狐丸は暴れもしなければ、嫌がりもしない。

「!」

 ふと、生きているのか心配になった。


「き、狐丸……?」

 不安に陥りながら、背中の方を振り返る。

 対面して担いで来たので、狐丸の頭は後ろにある。


「な、に……?」

 か細い狐丸の声が聞こえ、ひとまずホッとする。

 しかし、苦し気なその声に、澄真(すみざね)(あゆ)みを緩めた。

「……ごめん。きつい?」

「……」

 捕縛された上に担がれて、まさか気遣って貰えると思わなかった。そのまま消されてしまうのだと、狐丸は覚悟していたのだ。

 覚悟をしていたから、優しく気遣う澄真(すみざね)の声に、少し面食らう。


「狐丸……?」

 再び澄真(すみざね)が心配する。

「……」

 少し考えたが、狐丸は、素直に答えることにした。

「苦……しぃ……」

 必要以上に締め上げられていて、話すのにも苦労する。ぐぅっと、喉の奥からうめき声が漏れる。


「き、狐丸……っ!?」

 狐丸のうめき声で、澄真(すみざね)は慌てて狐丸を木の根本に降ろした。

「す、すまない……手荒にしてしまった。大丈夫か?」

「……」

 気遣わしげなその声に、狐丸は怒るタイミングなど、とっくに逃し、目を丸くする。



 ──しゅるしゅるしゅる……。



「……!」

 体に巻き付いた捕縛紐が取り除かれ、再び狐丸の左腕のみに、綺麗に巻き直されている。

 ひとまず自由になって、狐丸は狼狽(うろた)えた。

 まさか、ここまで自由にしてくれるとは、思ってもみなかったのだ。


澄真(すみざね)……?」

 どうして、妖怪相手にここまでしてくれるのか、理解できない。相手は陰陽師のはずだ。


 狐丸は、不安げに澄真(すみざね)に呼び掛けるが、澄真(すみざね)の方は、純粋に狐丸の体調が、心配でならない。

「痛いところはないか? もう、苦しないか……?」

 言いながら、狐丸の腕を確認する。

 かいがいしく、世話を焼く姿に、狐丸は戸惑う。


「……。痛くは、ない……し、苦しくも、ない」

 狐丸はポツリと呟く。


 その言葉に澄真(すみざね)は優しく微笑むと、良かった……と呟いた。

「……!」

 その微笑みに、狐丸はドキッとする。そんな風に微笑まれたことは、あまりない。


 狐丸が赤くなっていると、澄真(すみざね)が呟いた。

「しかし、困った……」

「困った?」

 狐丸の言葉に、澄真(すみざね)は困ったように頷く。

「思わず連れてきたが、正直何も考えていなかった……」

「……」

 

 突然縛られて、連れてこられ、とどめに何も考えてなかったと言われ、本当に困ったのは狐丸だった。

 狐丸の目が泳ぐ。

「……えっと。じゃあ、僕は帰る、から……」

 立ち上がって、パンパンと衣服のホコリを払う。

 少し残念な、悲しげな様子である。


「え!? 狐丸?」

 澄真(すみざね)は驚いて、行こうとする狐丸の袖を、咄嗟に掴む。

「……? だって、困るんでしょ? 僕がいると……」

 どことなく苦し気な、狐丸の言葉を聞いて、澄真(すみざね)は青くなる。


「いなくなると、もっと困る……っ」

 懇願するように言葉を繋ぐ。


(何故……そんなにも、必死なのだろう?)

 狐丸は疑問に思ったが、すぐに、あ、そうか……と狐丸は思う。

(僕がいないと、宴に連れて行けなくなるから……?)

 だから、かいがいしく世話を焼いてくれたのだろう。

(そうか……、だからか……)

 合点がいって、狐丸はにっこり笑うと、言葉を返す。


「大丈夫。宴には行くから。瑠璃姫さまにも、行けと言われてるし」

 心がこもっていない笑顔と、少し震えたその言葉に、澄真(すみざね)の血の気がさっと引いた。


「違う。そうじゃない……」

 言いながら、狐丸の袖を、強く引っ張る。

「う……ぁっ!」

 ぽすっと、澄真(すみざね)の胸におさまる。

「……! 狐丸……っ」

 綺麗に腕の中におさまった狐丸を、澄真(すみざね)が、離すわけがない。逃げられないように、すぐさま抱え込む。

「……っ、なにす……っ!」

 ぎゅっと抱き締められて、狐丸は驚く。


「行かないで。ここにいて欲しい……」

 耳元で囁かれ、くすぐったい。

澄真(すみざね)……?」

「……」

 顔を見上げようとするが、澄真(すみざね)の力が強く、見上げる事が出来ない。

澄真(すみざね)……苦し……っ」

 狐丸の言ってることは分かるが、腕の力を緩めるつもりはない。逃げようとしているのは、百も承知だ。

 緩めたら最後、どこかへいなくなってしまう気がする。


(……離したくない)

 ぎゅっと抱き締めながら、漆黒のその髪に、顔をうずめる。焚きしめた(こう)の薫りではない、春の甘い花の匂いがする。

(狐丸……)

 狐丸の髪に口づけながら、耳元に唇を寄せる。

「……き、だ……」

 ポツリと澄真(すみざね)が呟く。


「……え?」

 聞き取れず、狐丸が聞き返す。

「……」

 澄真(すみざね)は、ごくりと唾を飲み込み、決心したように、ゆっくりため息を吐くように、言葉を繋ぐ。


「狐丸……。好き、だ」

 言ったとたん、血が逆流する。熱い。でも、……。澄真(すみざね)は、軽く目を閉じる。


(答えは、……聞きたくない)

 狐丸が話せないように、自分の胸に顔を押さえつける。

「ふぐっ。……んー……んー!!」

 腕の中で暴れるが、その事で狐丸の存在を感じ、澄真(すみざね)の心が弾む。

 嬉しそうに微笑みながら澄真(すみざね)は、狐丸が何も言えないのをいいことに、口づけと『好き』を連発する。

 一度言ってしまえば、後は何度でも言える。


「好き。狐丸……好き。大好き……」

「んぐ! ……んー! んぐぐー!!」

 しかし、答えが聞きたいわけではない、むしろ聞きたくない。

 澄真(すみざね)の我が儘で、身動きが取れないうえに、息が出来ない狐丸は、ドタバタと腕の中で、もがき苦しんだ。

 ……澄さん、外道です。

 ええ、根っからの外道です。優しいけれど。


 ん? これを、むっつりスケベって言う?

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