誘拐
あ、またやらかした(笑)
前回のが長かったので、
後半部分をこっちに持ってきてます。
(前回の後半消すの忘れてた(^_^;))
てなわけで、見た人は
次に行って下さい。。。
勢いで、狐丸を捕縛し、担いで来たものの、澄真は困っていた。
(あぁ、やらかしてしまった……)
どうやら狐丸が相手だと、本来の自分が分からなくなり、暴走するようだ。
(これで、徹底的に嫌われたな……)
澄真は狐丸を見る。
「……」
『見る』と言っても、視界に入るのは狐丸の腰から下。力なく、だらんとしている。
不思議なことに、狐丸は暴れもしなければ、嫌がりもしない。
「!」
ふと、生きているのか心配になった。
「き、狐丸……?」
不安に陥りながら、背中の方を振り返る。
対面して担いで来たので、狐丸の頭は後ろにある。
「な、に……?」
か細い狐丸の声が聞こえ、ひとまずホッとする。
しかし、苦し気なその声に、澄真は歩みを緩めた。
「……ごめん。きつい?」
「……」
捕縛された上に担がれて、まさか気遣って貰えると思わなかった。そのまま消されてしまうのだと、狐丸は覚悟していたのだ。
覚悟をしていたから、優しく気遣う澄真の声に、少し面食らう。
「狐丸……?」
再び澄真が心配する。
「……」
少し考えたが、狐丸は、素直に答えることにした。
「苦……しぃ……」
必要以上に締め上げられていて、話すのにも苦労する。ぐぅっと、喉の奥からうめき声が漏れる。
「き、狐丸……っ!?」
狐丸のうめき声で、澄真は慌てて狐丸を木の根本に降ろした。
「す、すまない……手荒にしてしまった。大丈夫か?」
「……」
気遣わしげなその声に、狐丸は怒るタイミングなど、とっくに逃し、目を丸くする。
──しゅるしゅるしゅる……。
「……!」
体に巻き付いた捕縛紐が取り除かれ、再び狐丸の左腕のみに、綺麗に巻き直されている。
ひとまず自由になって、狐丸は狼狽えた。
まさか、ここまで自由にしてくれるとは、思ってもみなかったのだ。
「澄真……?」
どうして、妖怪相手にここまでしてくれるのか、理解できない。相手は陰陽師のはずだ。
狐丸は、不安げに澄真に呼び掛けるが、澄真の方は、純粋に狐丸の体調が、心配でならない。
「痛いところはないか? もう、苦しないか……?」
言いながら、狐丸の腕を確認する。
かいがいしく、世話を焼く姿に、狐丸は戸惑う。
「……。痛くは、ない……し、苦しくも、ない」
狐丸はポツリと呟く。
その言葉に澄真は優しく微笑むと、良かった……と呟いた。
「……!」
その微笑みに、狐丸はドキッとする。そんな風に微笑まれたことは、あまりない。
狐丸が赤くなっていると、澄真が呟いた。
「しかし、困った……」
「困った?」
狐丸の言葉に、澄真は困ったように頷く。
「思わず連れてきたが、正直何も考えていなかった……」
「……」
突然縛られて、連れてこられ、とどめに何も考えてなかったと言われ、本当に困ったのは狐丸だった。
狐丸の目が泳ぐ。
「……えっと。じゃあ、僕は帰る、から……」
立ち上がって、パンパンと衣服のホコリを払う。
少し残念な、悲しげな様子である。
「え!? 狐丸?」
澄真は驚いて、行こうとする狐丸の袖を、咄嗟に掴む。
「……? だって、困るんでしょ? 僕がいると……」
どことなく苦し気な、狐丸の言葉を聞いて、澄真は青くなる。
「いなくなると、もっと困る……っ」
懇願するように言葉を繋ぐ。
(何故……そんなにも、必死なのだろう?)
狐丸は疑問に思ったが、すぐに、あ、そうか……と狐丸は思う。
(僕がいないと、宴に連れて行けなくなるから……?)
だから、かいがいしく世話を焼いてくれたのだろう。
(そうか……、だからか……)
合点がいって、狐丸はにっこり笑うと、言葉を返す。
「大丈夫。宴には行くから。瑠璃姫さまにも、行けと言われてるし」
心がこもっていない笑顔と、少し震えたその言葉に、澄真の血の気がさっと引いた。
「違う。そうじゃない……」
言いながら、狐丸の袖を、強く引っ張る。
「う……ぁっ!」
ぽすっと、澄真の胸におさまる。
「……! 狐丸……っ」
綺麗に腕の中におさまった狐丸を、澄真が、離すわけがない。逃げられないように、すぐさま抱え込む。
「……っ、なにす……っ!」
ぎゅっと抱き締められて、狐丸は驚く。
「行かないで。ここにいて欲しい……」
耳元で囁かれ、くすぐったい。
「澄真……?」
「……」
顔を見上げようとするが、澄真の力が強く、見上げる事が出来ない。
「澄真……苦し……っ」
狐丸の言ってることは分かるが、腕の力を緩めるつもりはない。逃げようとしているのは、百も承知だ。
緩めたら最後、どこかへいなくなってしまう気がする。
(……離したくない)
ぎゅっと抱き締めながら、漆黒のその髪に、顔をうずめる。焚きしめた香の薫りではない、春の甘い花の匂いがする。
(狐丸……)
狐丸の髪に口づけながら、耳元に唇を寄せる。
「……き、だ……」
ポツリと澄真が呟く。
「……え?」
聞き取れず、狐丸が聞き返す。
「……」
澄真は、ごくりと唾を飲み込み、決心したように、ゆっくりため息を吐くように、言葉を繋ぐ。
「狐丸……。好き、だ」
言ったとたん、血が逆流する。熱い。でも、……。澄真は、軽く目を閉じる。
(答えは、……聞きたくない)
狐丸が話せないように、自分の胸に顔を押さえつける。
「ふぐっ。……んー……んー!!」
腕の中で暴れるが、その事で狐丸の存在を感じ、澄真の心が弾む。
嬉しそうに微笑みながら澄真は、狐丸が何も言えないのをいいことに、口づけと『好き』を連発する。
一度言ってしまえば、後は何度でも言える。
「好き。狐丸……好き。大好き……」
「んぐ! ……んー! んぐぐー!!」
しかし、答えが聞きたいわけではない、むしろ聞きたくない。
澄真の我が儘で、身動きが取れないうえに、息が出来ない狐丸は、ドタバタと腕の中で、もがき苦しんだ。
……澄さん、外道です。
ええ、根っからの外道です。優しいけれど。
ん? これを、むっつりスケベって言う?