死神様、わたしの願いを聞いてください
「そこのあなた、殺したい人がいますね」突然そう声を掛けられた祐美恵は、咄嗟に「いいえ」と答えられなかった。声を掛けてきた痩せ男は自分の事を死神だと言い張るが、どこからどう見ても怪しい。持っている鎌も、小さな草刈り鎌だった。それでも死神は死を司る神。すべての人の死を彼は自由に操れると言い出し、祐美恵をそそのかす。祐美恵が死神と契約し殺そうと考えたのは、認知症が進行する実の母であった。自分の人生を認知症の母に捧げなくてはいけないと考えた祐美恵は遂に死神と契約を果たそうとするのだが……。祐美恵に幸せな日々は訪れるのか。そもそも幸せとは何なのか。リアルと非現実が融合する問題作です。